『リトルドラマーボーイ(Little Drummer Boy)』は、50年代後半のアメリカで大ヒットを記録したクリスマスソング。賛美歌的な厳かさとテンポの良いマーチ・ドラムが絶妙なバランスで組み合わされた名曲。数多くのカバーが存在するが、オリジナルのハリー・サイムワン(Harry Moses Simeone/1911-2005)率いる合唱団(The Harry Simeone Chorale)のバージョンが特に広く知られている。
歌詞の内容は、キリスト生誕を祝うお金のない貧しい少年が、ドラムを叩いて主にその音色を捧げたというもの。これに良く似たストーリーとして、『ノートルダムのジャグラー(The Juggler of Notre Dame/Le jongleur de Notre Dame)』という12世紀頃からフランスに伝わる古い逸話がある。そのストーリーには様々なバリエーションが存在するが、代表的なものは次の通り。
舞台はパリのノートルダム大聖堂。信心深いある修道士が、聖母マリアに何か捧げ物をしたいと考えたが、その貧しさゆえに何も用意することができなかった。彼は思い悩んだ挙句、自分が唯一誇れる得意のジャグリング(日本のお手玉のような曲芸)をマリア像の前で披露した。しかし彼は他の修道士達に神への冒涜だと非難されてしまう。その時、マリア像に本物の聖母マリアが光臨し、にっこりと微笑んで彼を祝福したという(右写真:ノートルダム大聖堂/出典:Wikipedia)。
このストーリーは、1921年ノーベル文学賞を受賞したフランス人作家アナトール・フランス(Anatole France/1844-1924)の作品『Le jongleur de Notre Dame』(1892)によって広く紹介されたもの。彼の代表作は『シルヴェストル・ボナールの罪』『舞姫タイス』『赤い百合』『エピクロスの園』『神々は渇く』など。芥川龍之介が傾倒していたことでも有名。その後この逸話はオペラや他の書籍でも度々取り上げられ、クリスマスソング「リトルドラマーボーイ」も恐らく何らかの影響を受けていると思われる。




