
前のページの資料で出てきた「Rousseau's
Dream(以下「ルソーの夢」と呼ぶ)」とは、1812年にヨハン・バプティスト・クラーマーが書いた変奏曲で、19世紀初頭のイギリスで流行したものです。ヨハン・バプティスト・クラーマー(1771-1858)はドイツのマンハイムに生まれ、幼くしてロンドンに移っています。有名な音楽家の師事を受け、ハイドンやベートーヴェンとも親しかった彼は、18世紀から19世紀初頭にかけてロンドンのピアノ教育界になくてはならない人物でした。
彼が作曲した変奏曲「ルソーの夢」は、1812年にイギリスの有名な音楽出版社であるサムエル・チャペルから刊行され、イギリス・フランス・ドイツで非常に人気を博していたそうです。
この「ルソーの夢」の主題の導入部は、「村の占師」パントミムの冒頭部分の旋律以上に、私達が慣れ親しんでいる「むすんでひらいて」の旋律に非常に似通っており、やはりこの曲が「むすんでひらいて」の元になっているのだと実感させられます。
クラーマーが作曲した「ルソーの夢」が「むすんでひらいて」の元歌だとしたら、音楽の本や楽譜などで「ルソー作曲」と記載されているのは何だったのでしょうか?「ルソーの夢」はルソー本人とは直接関係がないようですし、ここで「むすんでひらいて」と「作曲者ルソー」の間の連続性が断絶してしまったかのように見えます。果たして、「むすんでひらいて」と「作曲者ルソー」を結びつける事実はないのでしょうか?
なお余談ですが、このクラーマーの『ルソーの夢』変奏曲は、昭和53年に東京のヤマハ・ホールで開催されたルソー没後200年記念演奏会で日本で初めて演奏されています。