J. J. ルソーと「村の占師」

『むすんでひらいて』のルーツに迫る/ドナドナ研究室

『むすんでひらいて』について一般的な音楽教材を見ると、作曲者・作詞者として「ルソー作曲・文部省唱歌」と記載されているのをよく見かける。

ルソーというと、「アンリ・ルソー」と「J. J. ルソー」の2人が思い浮かぶが、この「むすんでひらいて」と関連付けられているのは、画家の方ではなく、思想家として有名な「J. J. ルソー」の方だ(上写真:J. J. ルソーの銅像)。

音楽家としても知られるルソー

J. J. ルソー(Jean Jacques Rousseau/1712-1778)は、スイスのジュネーブ生まれ。出生とともに母と死別し、10歳の時には父の失踪に逢っている(以下、文中では単に「ルソー」と呼ぶ)。

フランス・イギリス等ヨーロッパ各地を転々としていく中、「人間不平等起源論」や「社会契約論」を記し、人民主権を主張してフランス革命やアメリカの独立に大きな影響を与えた人物として非常によく知られている。

世界史でもよく耳にするルソーが関係すると聞いて、「音楽の話をしているのに何故思想家であるルソーの名前が出てくるのか?」との疑問もわきそうだが、彼は音楽家としても『優雅な詩の女神たち』(オペラバレエ)などの有名な作品を残しており、ルソーが作曲した楽曲の中に、この『むすんでひらいて』の源流とされている曲が存在しているのだ。

オペラ「村の占師」と「むすんでひらいて」

ルソーが生み出した楽曲の中から、『むすんでひらいて』のルーツと思われるものを探してみると、最終的に『村の占師』というオペラに突き当たることになる。

この『村の占師 Le Devon du vollage』は、1753年3月1日にオペラ座で初演されたもののようで、このオペラの第8場の黙劇による劇中劇、いわゆる幕間劇(パントミム)の冒頭に現れる旋律が、日本における「むすんでひらいて」のメロディーに非常に似通っている(写真:現在のオペラ座 観客席)。

ルソーが作曲したものの中で、この『村の占師』のパントミム以外に「むすんでひらいて」のメロディーに結びつきそうな楽曲はないようだ。

音楽の本や楽譜などで「むすんでひらいて/ルソー作曲」と書いてあるのを合わせて考えると、この『村の占師』のパントミムの冒頭部分の旋律と、日本の「むすんでひらいて」のメロディが直接結び付きそうな雰囲気だ。

明治初期の資料を見ると…?

念のために、当時文部省が「むすんでひらいて」のメロディーを初めて日本で一般的に公表した頃の関連資料を見てみよう。「むすんでひらいて」のメロディーがルソー作曲によるものならば、「村の占師」の一部の旋律が「むすんでひらいて」の元歌である旨の記載があってもおかしくないわけです。

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史料価値の高い研究向けアルバム

むすんでひらいての謎

おなじみの「むすんでひらいて」の起源と変遷をたどったユニークにして興味深いアルバムである。“起源”となったルソーの歌はもとより、さまざまな国に伝承され多彩なヴァリエーションを生んだ経緯が網羅される。分厚い解説書も資料的価値大。

むすんでひらいての謎 目次

  1. 様々な顔を見せる不思議な童謡
  2. ルソーと「村の占師」
  3. 小学校唱歌 「見渡せば」
  4. ルソーの夢
  5. 「ルソーの夢」と「村の占師」を結びつけるもの~まとめ
  6. なぜ「見渡せば」が定着しなかったのか?
  7. 賛美歌としての「むすんでひらいて」

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