梶の葉と七夕の関係は?願い事のルーツ?

天の川の瀬戸を渡る船の梶 梶の葉に思いを込めて

かつて平安時代の日本では、七夕の夜に願い(思い)を梶の葉に書き記したという。この「梶の葉と七夕」の関係を示す和歌や軍記物語について、簡単にまとめてみた。

なお、関連するページとして「五色の短冊に願い事 由来・歴史は?七夕飾り」も是非参照されたい。

ちなみに写真は梶の葉(出典:今日の新宿御苑)。梶の葉は神前の供物を供えるための器としても用いられていた。源平合戦時の神の御宣託により、諏訪神社の神紋として定着した。

平安時代には梶の葉に願い事を書いた?

11世紀末の平安時代に成立した「後拾遺和歌集」(ごしゅういわかしゅう)には、七夕と梶の葉に関する次のような和歌が収められている。

あまのがは とわたるふねの かぢのはに おもふことをも かきつくるかな
<上総乳母(かずさのうば) >

この和歌では、天の川の瀬戸を渡る船の梶と、梶の葉が掛けられている。梶の葉に墨で和歌などを書く習慣は古くからあったようた。

「おもふことをも かきつくる」が指す具体的な内容は不明だが、思いや願い、特に恋に関する思いや願いを和歌にしたためていた可能性がある。

仮にそうだとすれば、七夕に願い事をする習慣の原型はすでに平安時代に存在していたことになる。

なお、七夕の願い事に梶の葉が用いられる理由としては、天の川を渡る船の梶となって星に願いが届くという言葉遊び的な要素もあるように思われる、

平家物語にも七夕と梶の葉が登場

七夕と梶の葉については、『平家物語』に次のような記述も残されている。

秋の初風吹きぬれば、星合の空をながめつつ、天のとわたる梶の葉に、思ふ事書く比なれや。
<『平家物語』巻第一「祇王」>

「星合の空」とは、織女星(織姫星)彦星・牽牛星が再会する七夕の夜空を意味している。「天のと」は「天の川の瀬戸」のこと。

ここでも「思ふ事」の具体的内容が気にかかるが、広い意味での願い事が和歌などにしたためられていた可能性がある。

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