キリギリスの鳴き声 別名と習性

夏の昼間の草むらでギーッチョンと鳴くキリギリス

夏の昼間に草むらで鳴くキリギリスの鳴き声について、その意味や表記、別名、習性など、キリギリスに関連する豆知識を簡単にまとめてみた。

かつてキリギリスはコオロギを指す名称として用いられており、近代の日本でも地方によってはコオロギがキリギリスと呼ばれていた地域もあったようだ(詳細は後述)。

このキリギリスとコオロギの混同は、唱歌『虫のこえ』の歌詞にも少なからず影響を及ぼしている。

キリギリス

写真:キリギリス(撮影地:武蔵丘陵森林公園/出典:Wikipedia)

【試聴】 キリギリスの鳴き声

鳴き声の表記・意味

キリギリスの鳴き声は、カタカナでは「チョン・ギーッ」、「チョン・ギース」、「ギーッチョン」などと表現される。

鳴くのはオスで、鳴き声で自分の存在をアピールしてメスを呼び寄せる意味合いがある。

陽当たりの良い土手などで、ススキやヨモギなどのやや背丈の高い草むらでよく鳴いている。

別名:ハタオリ

キリギリスは、その鳴き声から「ギッチョ」、「ギッチョン」、「ギリッチョ」、「ギス」などと呼ばれるほか、糸を織物に織りあげる機織(はたおり)の動作音を思わせることから、「ハタオリ」、「機織虫(はたおりむし)」、「機織女(はたおりめ)」などの別名もある。

写真は機織(はたおり)の様子。前後に張り渡した縦の糸(経糸)と、左右に広げた横の糸(緯糸)を交差させて織物が出来上がる。

【試聴】機織りの実演

夏の昼間に鳴くキリギリス

キリギリスは7月頃から鳴き始め、主に晴れた昼間の明るい時間帯に鳴くことが多い(例外も多い)。

鳴き声の頻度には気温も関係しており、30度を越えると活発に鳴き始めるようだ。

イソップ寓話「アリとキリギリス」では、夏の間にヴァイオリンを弾いて歌って陽気に過ごしているキリギリスが登場するが、夏の昼間に鳴くというキリギリスの習性に基づいていることが分かる。

ありときりぎりす 絵本

写真:絵本「ありときりぎりす」イソップものがたり

江戸の夏の風物詩

江戸時代には、キリギリスは竹製のカゴに入れられて販売される「虫売り」の代表的商品の一つだった。

主に関東地方で販売され、縁側や店先につるされたキリギリスのカゴ「ギスかご」は、江戸の夏の風物詩として庶民の間に定着していた。

キリギリスの竹かご飼育セット

現代の日本でも、プラスチック製のカゴに入れられたキリギリスがデパートや夜店で販売されるのが1980年代初頭までよく見られた。

写真:キリギリスの竹かご飼育セット(出典:鳴く虫研究社)

なぜ初秋の季語?

夏の虫という印象が強いキリギリスだが、俳句の世界ではキリギリスは初秋の季語とされている。

これは、旧暦では7月・8月・9月が秋とされていたころの名残で、旧暦7月は現在の暦でいうと8月上旬から中旬頃の季節感に該当する。立秋(現在の8月7日前後)を過ぎる頃なので、旧暦7月は初秋となる。

夏のイメージが強い「七夕(たなばた)」や「天の川」も、同様の理由で秋の季語となっている。

ちなみに、旧暦8月の満月は、旧暦における秋の真ん中なので「中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)」と呼ばれる。

東日本と西日本で違う?

近年の研究により、キリギリスは大きく分けて東日本と西日本とで別の種類が存在するとされ、それぞれヒガシキリギリスとニシキリギリスと分類されている。

ヒガシキリギリスは、青森県から岡山県、淡路島などに分布する(通常の「西日本」の区分からは少し逸脱する)。

ニシキリギリスは、近畿から中国地方、四国、九州に分布。シコクキリギリスやミナミキリギリスなど、地理的な変異も見られる。

バッタとの違いは?

キリギリスはバッタと見た目が似ているが、次のようないくつかの違いがある。

バッタと比べて、キリギリスは体長が短く体高が高い。バッタよりも長い脚と触角を持つ。

バッタの多くは、メスの方がオスよりも明らかに体が大きい。

バッタは多くの種が草食だが、キリギリスは他の昆虫などを捕えて食べる雑食である。

キリギリスの耳(音を捉える器官)は前脚にあるが、バッタは胸部と腹部の間にある。

コオロギをキリギリスと呼んでいた?

中世の日本では、現代のコオロギはキリギリスと呼ばれていたと考えられている。それを示す資料として、「春はあけぼの」の出だしで有名な清少納言『枕草子』の次の一節をご紹介したい。

115段(終わり)

九月つごもり、十月朔日(ついたち)の程に、唯あるかなきかに聞きつけたる蟋蟀(きりぎりす)の声。

<引用:清少納言『枕草子』115段(終わり)より>

『枕草子』(まくらのそうし)は、平安時代中期に清少納言が執筆した随筆。「つごもり」とは太陰暦における「月ごもり」、つまり新月(月末)のこと。

旧暦における十月初旬は現代だと立冬の頃。上述のとおりキリギリスは夏に鳴く虫なので、この『枕草子』における「蟋蟀(きりぎりす)」は現代のキリギリスではなく、コオロギを指していると考えられている。

このキリギリスとコオロギの混同は、唱歌『虫のこえ』の歌詞にも影響を及ぼしている。

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