山中節 やまなかぶし 石川県民謡

忘れしゃんすな 山中道を 東ゃ松山 西ゃ薬師

『山中節(やまなかぶし)』は、石川県加賀市の山中温泉に伝わる古い民謡。『江差追分』や『磯節(いそぶし)』などと並ぶ「日本三大民謡」の一つとして紹介されることがある。

山中温泉街

写真:山中温泉街(出典:金沢日和)

ルーツは地元の盆踊り甚句で、やがて座敷歌となり、芸者の米八によって現在のゆったりとした情緒ある節回しに編曲され、各地に広まった。

様々な歌詞が存在するが、特に「忘れしゃんすな 山中道を 東ゃ松山 西ゃ薬師」の歌詞が有名。

ちなみに、山中温泉では毎年9月、山中節の全国コンクール(全国大会)が開催されるほか、初秋の温泉街をしっとりと踊り流すイベント「山中節道中流し」や、松尾芭蕉にちなんだ芭蕉祭りなど、様々な行事が行われる。山中温泉は9月が賑やかだ。

【YouTube】うめ吉『山中節』

【YouTube】正調山中節  加戸桂子

歌詞の一例

忘れしゃんすな 山中道を 東ゃ松山 西ゃ薬師

送りましょうか 送られましょうか せめて二天の橋までも

おまえ見染めた 去年の五月 五月菖蒲の 湯の中で

山が高こうて 山中見えぬ 山中恋しや 山憎や

谷にゃ水音 峰には嵐 あいの山中 湯の匂い

薬師山から 湯座屋を見れば 獅子が髪結て 身をやつす

夕べ習うた 山中節も 今朝は別れの唄となる

忘れしゃんすな

『山中節』の歌詞にある「忘れしゃんすな」の「しゃんすな」とは、「忘れないでくださいね」の意味。尊敬・丁寧の意を表わす江戸時代の古語「しゃんす」の活用形。

この歌詞は、「草津よいとこ一度はおいで」が歌い出しの『草津節』で、次のような替え歌が歌われている。

忘れしゃんすな 草津の道を
ア ドッコイショ
南浅間に コーリャ
西白根ヨ
チョイナ チョイナ

ちなみに、「野球するなら、こういう具合にしやしゃんせ」の歌い出しで有名な野球拳の「やしゃんせ」も同様の意味を持つ古語「やしゃんす」の活用形。

わらべうた『通りゃんせ(とおりゃんせ)』についても、「どうぞ通りやしゃんせ」などの様に使われていた「やしゃんす」が時代の変化で短縮されていったもの。

山中節の見える丘

山中温泉には、『山中節』にうたわれる景色を一望できる展望広場「山中節の見える丘」が整備されている。

山中節の見える丘 加賀・山中温泉の展望広場

国道364号沿いの展望広場からは、山中温泉の中心街を一望できる。山中温泉を訪れた観光客の写真撮影スポットとしても便利な場所だ。

写真:山中節の見える丘/山中温泉の展望広場(出典:山中温泉観光協会)

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かもめのなく音に ふと目を覚まし あれが蝦夷地の 山かいな
磯節 いそぶし
磯で名所は 大洗様よ 松が見えます ほのぼのと
草津節(草津よいとこ一度はおいで)
忘れしゃんすな 草津の道を 南浅間に 西白根
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