グッドバイ 歌詞の変遷

グッバイに変えたかった作詞者の心変わりとは?

『グッドバイ』は、1937年に河村光陽が作曲した日本の童謡。歌詞は、1934年に佐藤義美が雑誌「コドモノクニ」上で発表した詩「グッド・バイ」をベースとしている。

1934年に佐藤義美が発表した詩は、童謡『グッドバイ』の歌詞とは少し異なっている。詩の一節を次のとおり引用する。

電車で おでかけ 手を あげて パパが いったら グッド・バイ

現在の童謡『グッドバイ』と比べて最大の違いは、冒頭の「グッドバイ グッドバイ グッドバイバイ」がないという点だろう。

この有名な冒頭のフレーズは、1937年に曲がつけられた際に、作曲者の河村光陽が付加したオリジナルの歌詞だったのだ。

このフレーズは、河村光陽が同年に作曲した『早起き時計(チックタック チックタック ボーンボン)』から大きな影響を受けているものと思われる。

これ以外にも、オリジナルの詩をある程度大胆に修正しており、同曲のヒットは、河村光陽のアレンジによるところが大きいといえる。

ところが突然、原詩作者の佐藤義美は童謡『グッドバイ』を思わぬ形で上書きし、にわかに童謡界に動揺が走った。詳細は後述。

【YouTube】童謡『グッドバイ』

歌詞(作詞:佐藤義美)

グッド・バイ グッド・バイ
グッド・バイバイ
とうさん おでかけ 手をあげて
でんしゃに のったら
グッド・バイバイ

グッド・バイ グッド・バイ
グッド・バイバイ
はらっぱで あそんだ ともだちも
おひるに なったら
グッド・バイバイ

グッド・バイ グッド・バイ
グッド・バイバイ
三びき うまれた いぬの子も
よそへ あげたら
グッド・バイバイ

グッド・バイ グッド・バイ
グッド・バイバイ
まちから いらした おばさんも
ごようが すんだら
グッド・バイバイ

グッド・バイ グッド・バイ
グッド・バイバイ
あかい ゆうやけ お日さんも
しずんで いったら
グッド・バイバイ

作詞者が『グッバイ』に路線変更

1960年3月、『グッドバイ』原詩作者の佐藤義美は自身の童謡集「佐藤義美童謡集」(さ・え・ら書房)上にて童謡『グッバイ』を発表。

歌詞では、作曲者の河村光陽が補作詞した童謡『グッドバイ』について、「グッドバイ」が「グッバイ」にそのまま置き換えられている。

英語的な発音に近づければ「グッバイ」の方がそれらしく聞こえるのは間違いないが、楽譜(メロディ)には変更がないため、『グッバイ』を歌おうとすると「グーッバイ、グーッバイ、グーッバイバイ♪」のようにグが引き延ばされて間延びし若干歌いづらい。

童謡『サッちゃん』、『おなかのへるうた』で知られる阪田 寛夫(さかた ひろお)は、佐藤義美による『グッバイ』について、次のように述べている。

それぞれ異なった別れの様相を、「グッド・バイ」という一つの英語でくくる面白さ。昭和九年作の童謡に、それを試みた感覚が、新しかったのだと思う。

もう一つ言えば、いまの小学生なら、グッバイと英語に近い発音をする。ところがこの詩も、曲も、しっかり「グッド」と「ド」の字を発音している。作詞家もその点が気になったのか、昭和三十八年に出版された曲集の中では、歌詞を「グッバイ」と改めた。

しかし、それでは元の音譜に合わせて歌うと間のびして調子が出ない。こうして「グッド・バイ」は新しくて古い、昭和初期モダニズムの楽しい記念碑となった…グッバイにすると、ちょっと調子が狂う。やはりグッド・バイがいい。

引用元:阪田寛夫著「童謡でてこい」(河出書房新社)

英語が普及したから英語的表現に修正するのであれば、例えば「ラジオ」、「スタジアム」、「マクドナルト」といったカタカナ語句もまったく違った表記になってしまいそうだ。

阪田寛夫も述べているとおり、「グッバイにすると、ちょっと調子が狂う。やはりグッド・バイがいい」。

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