Lucy Locket ルーシーロケット

イングランド民謡/アルプス一万尺やヤンキードゥードゥルの原曲?

『ルーシー・ロケット(Lucy Locket)』は、イングランドの古いナーサリー・ライム(nursery rhyme)。

日本で有名な童謡『アルプス一万尺』やその原曲のアメリカ民謡『ヤンキードゥードゥル(Yankee Doodle)』のルーツと考えられている。

Lucy Locket ルーシーロケット

【試聴】Lucy Locket ルーシーロケット

歌詞・日本語訳(意訳)

Lucy Locket lost her pocket,
Kitty Fisher found it;
Nothing in it, nothing in it,
But the binding round it.

ルーシーロケットがポケットを失くして
キティーフィッシャーがそれを見つけた
中身はカラッポ 中身はカラッポ
周りに縁取りしてあった

ポケットについて

この歌詞における「pocket(ポケット)」とは、洋服に縫い付けられた袋状の部分ではなく、腰の周りに留められていた小さなポーチのこと。17世紀から19世紀頃までこのようなポケットが用いられていた。

人名について

「ルーシー・ロケット(Lucy Locket)」とは実在の人物で、18世紀頃にロンドンのフリートストリートの酒場で働いていた女中とされている。

「キティー・フィッシャー(Kitty Fisher)」とは、18世紀に実在した有名な情婦キャサリン・マリア・フィッシャー(Catherine Maria Fischer/1741–1767)のこと(下挿絵)。

Kitty Fisher

挿絵:ジョシュア・レノルズ作「Kitty Fisher and parrot」(1763)

クロムウェルの時代から歌われていた?

『ルーシー・ロケット(Lucy Locket)』にも原曲の存在が指摘されている。海外の文献によれば、その原曲はイングランドでクロムウェルの時代(17世紀頃)から歌われていたという。該当部分を次のとおり引用する。

It is also quite likely that "Lucy Locket” was based on another English melody “Fisher's Jig.” Legend has it that when Oliver Cromwell rode his horse (circa 1653) he wore an Italian-style hat crowned with a long feather known as a “macaroni. In derision his enemies made up a rhyme ending with "stuck a feather in his cap and called it macaroni" which they sang to the melody of “Fisher's Jig.”

出典: Theodore Raph - The American Song Treasury: 100 Favorites

「Oliver Cromwell」とは、17世紀イングランドの政治家・軍人オリバー・クロムウェルのこと。清教徒革命(イングランド内戦)で鉄騎隊を指揮し勝利に導いた人物。

クロムウェルの肖像画

挿絵:クロムウェルの肖像画(作:ロバート・ウォーカー/1649年)

この文献によれば、『ルーシー・ロケット』は『Fisher's Jig(フィッシャーズ・ジグ)』というメロディに合わせて歌われていた可能性が高いようだ。

チャールズ2世の名前も

また、別の海外文献では、17世紀イングランド王チャールズ2世(Charles II/1630-1685)の頃から『ルーシー・ロケット』のメロディが歌われていたと次のように述べている。

In the reign of Charles II the tune was sung to the words, perpetuated as a nursery rhyme

<歌詞省略>

The air is the same as of the New England jig "Lydia Fisher," which was a favorite in New England long before the American Revolution.

出典:Oscar George Theodore: Report on the Star-Spangled Banner, Hail Columbia, America, Yankee Doodle

この文献によれば、13植民地時代のニューイングランドで人気のあった『Lydia Fisher(リディア・フィッシャー)』というジグのメロディと同じとのことなので、この時点ですでにイギリスからアメリカにメロディが持ち込まれ、『ヤンキードゥードゥル』の誕生につながっていることが分かる。

なお、『ルーシー・ロケット』と『ヤンキードゥードゥル』のどちらの歌詞が先に成立したのかについては、いまだに明確な答えは出ていないようだ。

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