むすんでひらいての謎

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『小学唱歌集』初編-「見渡せば」と「むすんでひらいて」

「むすんでひらいて」のメロディーは、明治14年(1881年)11月刊行の文部省音楽取調掛編著『小学唱歌集』初編に収められる形で広く日本に発表されました。当時は『見渡せば』という題名で、歌詞の内容も現在の「むすんでひらいて」とは全く異なるものでした。この歌詞は「古今集」巻第一の素性法師の歌を元にして、国文学者でありかつ音楽取調掛雇であった柴田清照(きよてる)と稲垣千頴(ちかい)が楽譜に即して作り直したもののようです(ちなみに「見渡せば」が「むすんでひらいて」の元歌であることは異論がないようです)。

さて、当時の資料中の記述についてですが、この『小学唱歌集』初編には作詞者・作曲者の名前は一切記載されていないので(「見渡せば」以外の曲もすべて同じ)、ここは「むすんでひらいて」研究の第一人者である海老沢先生の著書「むすんでひらいて考」を参照したいと思います。

『小学唱歌集』初編が刊行された翌年の明治15年に、音楽取調掛はPRのために一大演習(デモンストレーション)を行ったのですが、その解説・案内役を努めた伊沢修二が彼自身のために用意していた解説原稿の中の一文に、この「見渡せば」関する重要な記述があるのです。

「見渡せバ・・・楽譜ハ仏国ノ学士ニシテ音楽ニ著名ナルルーソウ氏カ睡眠中ニ作リタル曲ニシテ・・・」(『むすんでひらいて考/海老沢敏著』p36より引用)

この記述の中の「ルーソウ」というのがまさにJ・J・ルソーのことであるようです。さらに、大演習の英文プログラムには「見渡せば」に対応する英文の曲名として「Rousseau's Dream」との記述もあったようです。

どこにも出てこない「村の占師」

当時の資料から、「ルソー」という名前と「Rousseau's Dream」という曲名が見つかりました。明治14年(1881年)に発表された「見渡せば」は、これらの資料上の記述により「Rousseau's Dream」という曲が元歌であることが分かったのです。

しかし、先ほどから述べている『村の占師』を連想させるキーワードは見つかりませんでした。様々な資料を見てもルソーは「Rousseau's Dream」という曲は作曲していないようなので、この「村の占師」と「Rousseau's Dream」の間に他の何らかのつながりを見つけなければ、ここでルソーと「見渡せば(むすんでひらいて)」の関係は途切れてしまうことになります。本当に「むすんでひらいて」をルソー作曲としても良いのでしょうか?この問いに答えを出すにはまずこの「Rousseau's Dream」について明らかにする必要がありそうです。次へ続きます。

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むすんでひらいての謎 ★試聴ありおなじみの「むすんでひらいて」の起源と変遷をたどったユニークにして興味深いアルバム。分厚い解説書も資料的価値大。

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