愛の悲しみ クライスラー

ヴァイオリンとピアノのための小作品 ラフマニノフ版も有名

『愛の悲しみ Liebesleid』は、オーストリア出身の音楽家フリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler/1875-1962)によるヴァイオリンとピアノのための小作品。

同じくクライスラーによる作品『愛の喜び Liebesfreud』と対を成す楽曲であり、さらに『美しきロスマリン』を加えて三部作として扱われることもある。

クライスラーは、ロシアのピアニスト、セルゲイ・ラフマニノフと親交があり、ラフマニノフは『愛の喜び Liebesfreud』とこの『愛の悲しみ Liebesleid』の2曲をピアノ独奏用に編曲している。

【試聴】 演奏:Shlomo Mintz 「愛の悲しみ」 & 「愛の喜び」

【試聴】「愛の悲しみ」ラフマニノフ ピアノ独奏版

映画『四月は君の嘘』挿入曲に

中学生のピアニストとヴァイオリニストが切磋琢磨し互いに成長する姿を描いた漫画作品「四月は君の嘘」では、クライスラー『愛の悲しみ Liebesleid』が挿入曲として使われている(原作・アニメ・実写映画)。

漫画「四月は君の嘘」のようなピアニストとヴァイオリニストの交流といえば、ヴァイオリニストのクライスラーも、ピアニストのラフマニノフと親交と交流を深めていた。

ラフマニノフが『愛の喜び Liebesfreud』と『愛の悲しみ Liebesleid』をピアノ独奏曲としてアレンジしたのは上述のとおり。

他にも、ラフマニノフは『コレルリの主題による変奏曲』をクライスラーに献呈しているほか、クライスラーはラフマニノフの歌曲にヴァイオリンのオブリガードを追加した編曲を残している。

余談:「悲しみ」か「苦しみ」か

クライスラー『愛の悲しみ』のドイツ語タイトル『Liebesleid』は、「愛の悲しみ」とも訳せるが、「愛の苦しみ」とも訳出できる。

「苦しみ」では商業的にイメージが悪く売りにくいので、本作品において「苦しみ」と訳されることはまずないだろうが、クライスラーの本来の意図はどちらに近いのだろうか?

「悲しみ」と「苦しみ」の違いを説明するのは難しく、重なる要素も多いが、まったく同じ状況を表すものではないだろう。

とくに「愛」についてこれらの言葉を用いる場合、「愛の悲しみ」よりも「愛の苦しみ」の方が、想定される状況の範囲が広いような印象を受ける。後者でしか表現できない恋愛中の苦しい胸の内もあるだろう。

ともかく、商業的には『愛の悲しみ』一択なのだが、「愛の苦しみ」とした方がしっくりくる解釈の余地もあるのではないかと筆者は考えている。

この点については、『愛の喜び Liebesfreud』のページでも若干触れているので適宜参照されたい。

最初は偽名で発表された?

ウィキペディア英語版の解説によれば、『愛の喜び』、『愛の悲しみ』、そして『美しきロスマリン』の3作品は初演当時、クライスラー作曲の作品としてではなく、オーストリアの音楽家ヨーゼフ・ランナー(Joseph Lanner/1801-1843)の作品(の編曲)として発表されていた。

ヨーゼフ・ランナーといえば、ヨハン・シュトラウス一家に先立ってウィンナ・ワルツの様式を確立させた「ワルツの始祖」とも言うべき名作曲家。

一体なぜ、クライスラーほどの高い技術を持ったヴァイオリニストがこれほどの「偽作」を行わなければならなかったのか?

その意味・理由・動機については、諸説をこちらのページ「クライスラーの偽作 意味・理由は?」でまとめている。

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