私を野球に連れてって
Take Me Out to the Ball Game

セブンス・イニング・ストレッチで歌われる野球愛唱歌

『私を野球につれてって(Take Me Out to the Ball Game)』(テイク・ミー・アウト・トゥー・ザ・ボールゲーム)は、1908年に発表されたアメリカ野球ファンの愛唱歌。

アメリカMLB(メジャーリーグ)の試合では、7回裏の開始前に設けられる小休止の時間「セブンス・イニング・ストレッチ(seventh inning stretch)」中に、スタンドの観客らが立ち上がってこの曲を歌う。

シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールド

写真:シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールド(出典:Wikipedia)

作詞はジャック・ノーワース(Jack Norworth)、作曲はアルバート・フォン・ティルザー(Albert Von Tilzer)。作曲当時には、作詞者・作曲者ともに実際のメジャーリーグの試合を見たことがなかった。作曲者のティルザーに至っては、当時は野球のルールすら満足に把握していなかったそうだ。

作詞者のノーワースによれば、ニューヨークの地下鉄車内で見かけた野球試合の広告を見てインスピレーションを受け、野球場の最寄り駅に到着するまでの間に即興的に作詞したという。

【試聴】フェンウェイ・パーク レッドソックス Fenway Park Red Sox

【試聴】ドジャースタジアム Dodger Stadium, 10/16/2013

イントロ部分 歌詞の意味

Nelly Kelly loved baseball games,
Knew the players, knew all their names.
You could see her there ev'ry day,
Shout "Hurray"
When they'd play.
Her boyfriend by the name of Joe
Said, "To Coney Isle, dear, let's go",
Then Nelly started to fret and pout,
And to him, I heard her shout:

ネリー・ケリーは野球好き
選手の名前もみんな知ってて
試合のある日は毎日
「フレー!」と叫んでる

彼氏のジョーが遊園地へ誘っても
すぐにいらいら不機嫌になって
彼に向ってこう叫ぶのさ

コーラス部分 歌詞の意味

Take me out to the ball game,
Take me out with the crowd;
Buy me some peanuts and Cracker Jack,
I don't care if I never get back.

私を野球に連れてって
観客席へ連れてって
ピーナッツとクラッカージャックも買ってね
家に帰れなくったってかまわない

Let me root, root, root for the home team,
If they don't win, it's a shame.
For it's one, two, three strikes, you're out,
At the old ball game.

さあ地元のチームを応援しましょう
勝てなかったら許さない
ワン、ツー、スリーストライクでアウト
昔なじみの野球の試合で

歌詞の補足

歌詞には1908年版と1927年版があり、イントロに登場する女性の名前が異なる。前者ではケイティ・ケイシー(Katie Casey)、後者ではネリー・ケリー(Nelly Kelly)。

「root for the home team」の「the home team」には、実際に自分が応援するチーム名に入れ替えて歌う。

クラッカージャック Cracker Jack

「クラッカージャック Cracker Jack」とは、キャラメルでコーティングしたポップコーンとピーナッツが混ざったスナック菓子のこと。

クラッカージャック Cracker Jack

パッケージに描かれたセーラー服の少年「Sailor Jack(セーラージャック)」は、クラッカージャック考案者の孫がモデル。犬の名前はビンゴ(Bingo)

写真:クラッカージャック・オリジナル キャラメルコーティングポップコーン&ピーナッツ

セブンス・イニング・ストレッチとは?

セブンス・イニング・ストレッチ(seventh inning stretch)とは、アメリカMLB(メジャーリーグ)の試合における、7回裏の開始前に設けられる小休止の時間のこと。

「ストレッチ stretch」の文字通り、観客は立ち上がって背伸びをしたり、スナックなどの食べ物や飲み物などを買い求めて一息入れる。試合を行う選手にとっても軽い休憩の時間となる。

もし試合が同点で延長戦となり、14回(7の倍数)でも決着がつかず15回に突入する場合、14回終了時に「fourteenth-inning stretch フォーティーンス・イニング・ストレッチ」が実施される。

いつから歌われるようになった?

セブンス・イニング・ストレッチの間に『私を野球につれてって(Take Me Out to the Ball Game)』を観客らが歌う慣習は、一体いつ頃から始まったのだろうか?

これについて正確な日付は判明していないようだが、同曲を歌う慣習を広めたキーパーソンについてははっきりとしている。

ハリー・ケリー Harry Caray レーガン大統領

その人物とは、シカゴの名物実況アナウンサーとして有名なハリー・ケリー(Harry Caray/1914–1998)氏(写真右/左はレーガン大統領)。

彼がシカゴ・ホワイトソックス(Chicago White Sox)の実況アナウンサーだった頃、セブンス・イニング・ストレッチの休憩時間になると、よく実況ブースで『Take Me Out to the Ball Game』を一人で口ずさんでいたという

実況ブースで口ずさんだ歌が…

ある時、当時のホワイトソックスのオーナーBill Veeck Jr.氏が、ケリー氏が歌を口ずさむ様子を目にし、休憩中も実況ブースのマイクをオンにさせて、球場全体にケリー氏の歌が聞こえるように用意させた。

その後ケリー氏はシカゴ・カブス(カブズ/Chicago Cubs)の実況アナウンサーとなると、今度は彼自身が球場全体を煽るように、セブンス・イニング・ストレッチの間に『Take Me Out to the Ball Game』を先導して歌うようになり、この慣習はシカゴ・カブスの恒例行事となっていった。

【視聴】 実況席で観客を煽るハリー・ケリー氏

1998年に亡くなったケリー氏

ハリー・ケリー氏は1998年2月18日、心臓発作で倒れ帰らぬ人となった(享年83歳)。葬儀では、彼を象徴する曲『Take Me Out to the Ball Game』がオルガンで演奏された。遺体は、イリノイ州シカゴ近郊の町デ・プレインズ(Des Plaines, Illinois)にある諸聖徒墓地(All Saints Cemetery)に埋葬された。

彼が亡くなった1998年のシーズン中、シカゴ・カブスはユニフォームの袖にケリー氏のイラストが描かれたパッチを縫い付け、亡き名物アナウンサーの冥福を祈った。特に、カブスのスラッガーとして活躍したサミー・ソーサ(Sammy Sosa)は、同シーズン中に放った66本のホームランをすべてケリー氏に捧げたという。

カリーケリーの銅像 シカゴ・カブス

シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールド(Wrigley Field)球場の脇には、マイクを持って大きなジェスチャーをするハリー・ケリー氏の銅像(上写真)が建立され、熱意あふれる実況でシカゴ・カブスの試合を大いに盛り上げた長年にわたる彼の偉業を讃えている。

シカゴ・カブスはケリー氏の死後も、マイケル・J・フォックス(Michael J. Fox)、ビル・マーレイ(Bill Murray)、オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)など、7回ストレッチ中の歌をリードする様々な有名人を招待し、ケリー氏が育てたユニークな慣習を盛り上げるイベントを意欲的に行っている。

ケリー氏が愛唱した『Take Me Out to the Ball Game』のメロディは、これからもシカゴ・カブスの球場、そして全米のメジャーリーグの試合の中で、多くの野球ファン達によって歌い継がれていくことだろう。

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