めんない千鳥

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鬼ごっこ遊びの一つ「目隠し鬼」を関西・京都では「めんない千鳥」と表現されることがある。この言葉の語源や由来について簡単に調べてみた。

合わせて、「めんない千鳥」が使われる江戸の文学や昭和の映画主題歌についても簡単にまとめておくこととしたい。

写真:ハジロコチドリ(出典:Wikipedia)

語源・由来は「めなしどち」?

「めんない千鳥」の語源としては、江戸時代の浮世草子でも使われている「めなしどち(目無しどち)」が由来ではないかと推測される。

「めなしどち」は「目隠し鬼」や「目隠し」を意味し、内容的に「めんない千鳥」と同じ使われ方をしている。

「どち」とは、「男たち」や「野郎ども」といった複数の人に対する呼称。

この「どち」から「ちどり(千鳥)」へ言葉遊びのように変化していったと思われる。

冥途の飛脚

近松門左衛門による江戸時代の人形浄瑠璃「冥途の飛脚」(めいどのひきゃく)では、物語の一番最後で「めんない千鳥」が登場する。

大阪淡路町の飛脚・忠兵衛は、新町槌屋の遊女・梅川と恋仲になり、店の金を使い込んで梅川と駆け落ちする(実話に基づく)。

腰の手拭引絞り めんない千鳥 百千鳥 鳴くは梅川 川千鳥 水の流れと身の行方 恋に沈みし浮名のみ 難波に残り留まりし

これは二人が捕まった直後の場面で、顔を見られたくないと手ぬぐいで目元を隠す様子が「めんない千鳥」と表現されている。

ちなみに梅川はその後、江州矢橋の十王堂で忠兵衛の菩提を弔いつつ五十有余年の懺悔の日々をおくり、草津市の浄土宗清淨寺に葬られた。

映画「新妻鏡」主題歌

「めんない千鳥」という言葉は、昭和歌謡曲の曲名にも使われている。1940年公開の東宝映画「新妻鏡」(にいづまかがみ)主題歌(挿入歌)『目ン無い千鳥』として人気を博した。

歌いだしの歌詞は「目ン無い千鳥 高島田 見えぬ鏡に いたわしや」。作詞:サトウハチロー、作曲:古賀政男。島倉千代子や美空ひばりがカバーしている。

映画「新妻鏡」の主人公は、結婚直前に両眼を怪我してしまい失明してしまった。歌詞の「高島田」とは花嫁が結う髪型を意味する。日本の抒情歌『花嫁人形』の歌詞でも歌われる。

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