さすらいの唄 北原白秋 中山晋平

行こか戻ろか オーロラの下を ロシアは北国 はて知らず

「行こか戻ろか 北極光(オーロラ)の下を」が歌いだしの『さすらいの唄』は、作詞:北原白秋、作曲:中山晋平により、大正6年(1917)に発表された楽曲。

島村抱月が松井須磨子らと旗揚げした劇団「芸術座」に参加していた中山晋平は、劇中歌として『カチューシャの唄』や『ゴンドラの唄』を大ヒットさせており、『さすらいの唄』もそれらに続く芸術座向けの楽曲として作曲された。

オーロラ

写真:オーロラ(出典:Wikipedia)

『さすらいの唄』は、ロシアの小説家トルストイの作品「生ける屍」に基づく芸術座の公演での劇中歌であり、「オーロラ」や「ロシア」など、歌詞の中で原作の舞台に関するキーワードが用いられている。

【試聴】さすらいの唄 歌:奈良光枝

歌詞

1.
行こか戻ろか
北極光(オーロラ)の下を
露霊(ロシア)は北国 はて知らず
西は夕焼け 東は夜明け
鐘が鳴ります 中空(なかぞら)に

2.
泣くにゃ明るし 急げば暗し
遠いあかりも チラチラと
とまれ幌馬車 やすめよ黒馬(あお)よ
明日の旅路が ないじゃなし

3.
燃ゆる思いを 荒野(あれの)にさらし
馬は氷の 上を踏む
人はつめたし わが身はいとし
町の酒場は まだ遠し

4.
わたしゃ水草 風吹くままに
流れ流れて はて知らず
昼は旅して 夜(よ)は夜で踊り
末はいずくで 果てるやら

ないじゃなし問題がここにも?

『さすらいの唄』2番の歌詞の最後にある「ないじゃなし」については、『お座敷小唄』でも同じ「ないじゃなし」という歌詞が使われている。

富士の高嶺に降る雪も
京都先斗町(ぽんとちょう)に降る雪も
雪に変わりはないじゃなし
とけて流れりゃ皆同じ

<『お座敷小唄』一番の歌詞より>

この『お座敷小唄』の「ないじゃなし」については、日本語の文法的に間違っているのではないかとの指摘があるようだが、『さすらいの唄』における「ないじゃなし」との違いは何だろうか?

『さすらいの唄』では「明日の旅路が ないじゃなし」であり、意味としては「ないわけではないし」、つまり「あるのだから」という肯定的な意味合いで使われている。

これに対し、『お座敷小唄』では「雪に変わりはないじゃなし」であり、「雪に変わりはない」、つまり「変わらない」という否定的な意味合いで使われている。

すなわち、同じ「ないじゃなし」でも、『さすらいの唄』では「ある」、『お座敷小唄』では「ない」の意味で使われており、『さすらいの唄』の用法は日本語的に特に間違いはないといえる。

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