お山の杉の子

日本の童謡・唱歌

『お山の杉の子』は、1944年に発表された唱歌。作詞は吉田テフ子、作曲は佐々木すぐる。戦後にサトウハチローにより歌詞が一部改められた。

むかしむかしのそのむかし(昔々のその昔)という歌い出しからも想像がつくように、『お山の杉の子』の歌詞では、『浦島太郎』のような昔ばなし風にストーリーが展開していく。

椎の木林のとなりにあった小さな小山は、最初は木が一本も生えていない丸丸坊主の禿山(はげやま)だった。そこへ小さな杉の子たちが次々と小さな目を出していったが、椎の木に「こんなチビ助、なんになる」と笑われてしまう。

びっくりした杉の子だったが、「何の負けるか いまにみろ」とすくすくと成長し、やがて椎の木を見下ろすような大きく立派な杉の大木となり、人々の役に立って行ったという。めでたしめでたし。

歌詞を変え時代を超える愛唱歌

戦後に歌詞を変えられた愛唱歌としては、『お山の杉の子』以外にも、「汽車 汽車 シュッポ シュッポ♪」の歌い出して知られる童謡『汽車ポッポ』が有名。

同曲は、元々の曲名は『兵隊さんの汽車』。『お山の杉の子』と同じく、戦時中の日本の空気を色濃く反映した国威発揚ソングだった。

『お山の杉の子』は『汽車ポッポ』ほど有名ではないが、童謡『浦島太郎』のような明るく軽快なメロディと、むかしばなし風の親しみやすいストーリーが面白く、現代の子供たちにも楽しんで歌ってもらえる名曲として、もっと人気が出てもいいように思われる。

なぜ『お山の杉の子』は人気が出ないのか?

なぜいまいち知名度が高まらないのか、あえて理由づけを試みれば、まずは「長い」という点が挙げられるのではないだろうか。具体的には、5番と6番が「現代向けの童謡としては」蛇足的に感じられる。

昔ばなし「うさぎとかめ」では、うさぎはバカにしていたカメに結局負けてしまった。『お山の杉の子』もこれにならい、笑われていた杉の木がやがて樫の木を見下ろす大木になった、というオチで綺麗に終わっていれば、また評価が変わっていたのかもしれない。

人気が出ない2番目の理由としては、時代を感じさせない昔ばなし風のストーリーの中に、突然「ラジオ体操」や「スポーツ」といった現代的な語句が登場し、違和感を与えているという点が考えられる。

今後もう一度『お山の杉の子』の歌詞を改訂する機会があるのならば、5番・6番を大胆にカットし、4番から「ラジオ体操」という時代を感じる語句を取り除いて、「うさぎとかめ」のようなシンプルな昔ばなし風ソングとして生まれ変わらせてほしい、と筆者は密かに願っているが、皆さんはどうお考えだろうか?

【試聴】お山の杉の子