カスタード・ザ・ドラゴン
The Tale of Custard the Dragon

パフの元ネタ? 臆病者のドラゴンが見せた真の強さ

『カスタード・ザ・ドラゴン The Tale of Custard the Dragon』は、アメリカの詩人オグデン・ナッシュ(Frederic Ogden Nash/1902–1971)による1936年の絵本向けポエム。

ポピュラーソング『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』(1963年)に影響を与えた作品(元ネタ)として言及されることがある。

絵本では、小さな白い家に住む女の子ベリンダ、黒い子猫のインク、小さなネズミのブリンク、黄色い小さな犬マスタード、そして小さなペットのドラゴン「カスタード」が登場する。

原文の英語では、2行ごとに脚韻を踏む形式となっており、インクとブリンク(Ink - Blink)、マスタードとカスタード(Mustard - Custard)がそれぞれ対の脚韻になっている。

臆病なドラゴン「カスタード」

ドラゴンのカスタードは、見た目とは異なり臆病で引きこもり気味。気弱な性格でいつも黒猫のインクやネズミのブリンクから弱虫とバカにされていた。

お菓子のカスタードのような、ふにゃっとして弱々しい名前も、からかい半分でつけられたあだ名のようなものだろう。

黒ひげの海賊に襲われて…

ところがある日、カスタードへの酷評を一変させる出来事が起きる。なんと突然、黒ひげの海賊が両手に拳銃をもって襲い掛かってきたのだ。

普段は強気だったベリンダや動物たちも、パニックになってひたすら逃げ惑うばかり。青ざめて「助けて!助けて!」と叫ぶベリンダ。

カスタード覚醒

皆が突然の恐怖に打ち震え、もはや万事休すと絶望に陥ったその時、けたたましいエンジン音のようなうなり声が辺りに響き渡った。皆を救おうと立ち上がった竜の咆哮だ。

黒ひげの海賊はあっけにとられながらも銃で応戦。しかし弾は当たらず、カスタードは海賊をペロリと平らげた。

カスタードを抱きしめるベリンダ。ペロペロとカスタードにじゃれつくマスタード。黒猫のインクやネズミのブリンクは喜びのあまり、カスタードのまわりでクルクルと回りだした。

いつもどおりの日常に

こんなに勇敢な立ち振る舞いを見せたカスタードだったが、その後も普段は相変わらず臆病者で、安全に隠れられる丈夫なオリを欲しがっていた。

今までどおり、ベリンダや動物たちは強気のままだったが、もはや彼女達は本当に強い者を知っていた。それはもちろん、臆病者のカスタード・ザ・ドラゴンさ。

カスタード・ザ・ドラゴン 原詩 冒頭部分

Belinda lived in a little white house,
With a little black kitten and a little gray mouse,
And a little yellow dog and a little red wagon,
And a realio, trulio, little pet dragon.

Now the name of the little black kitten was Ink,
And the little gray mouse, she called her Blink,
And the little yellow dog was sharp as Mustard,
But the dragon was a coward, and she called him Custard.

オズの魔法使いの影響について

ドラゴンのカスタードが見た目と違って臆病者というキャラクター設定は、1900年5月に出版された児童文学「オズの魔法使い」に登場する臆病なライオンを思い起こさせる。

また、「オズの魔法使い」には東西南北4人の魔女が登場するが、そのうちの南の良い魔女グリンダは、『カスタード・ザ・ドラゴン』の女の子ベリンダと名前が少し似ている。

なお、バカにされていたキャラがある日突然活躍してハッピーエンディングとなるストーリーとしては、クリスマスソング『赤鼻のトナカイ』が思い出されるが、こちらは『カスタード・ザ・ドラゴン』より10年以上後の1948年に作曲されている。

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