星の世界(星の界) 歌詞の意味

小学校の音楽教科書にも掲載される賛美歌の替え歌

『星の世界』は、賛美歌『いつくしみ深き』のメロディに別の日本語歌詞をつけた日本の楽曲。作詞:川路柳虹。小学校の音楽教科書に掲載され、音楽の授業で歌われることがある。

同様の替え歌は、明治43年(1910年)に文部省唱歌『星の界(よ)』として歌われていた(作詞:杉谷代水)。

天の川と親子

賛美歌『いつくしみふかき』との関係はメロディのみで、賛美歌の歌詞の内容は星や宇宙とは直接関連していないが、キリスト教の世界観は宇宙的な要素もあり、両者は全くの無関係とは言えないだろう。

なお、賛美歌『いつくしみ深き』のメロディを用いた替え歌は『星の世界』にも何曲かある。中学校の音楽教科書に掲載された作品としては、「澄みゆくみ空に 夕日は落ちて」が歌い出しの『秋に寄せて』、「月影さやけき 近江の湖(うみ)に」が歌い出しの『懐古』などが知られている。

【YouTube】星の世界 合唱

【YouTube】文部省唱歌 『星の界(ほしのよ)』

星の世界(作詞:川路柳虹)

かがやく夜空の 星の光よ
まばたく数多(あまた)の 遠い世界よ
ふけゆく秋の夜 すみわたる空
のぞめば不思議な 星の世界よ

きらめく光は 玉か黄金(こがね)か
宇宙の広さを しみじみ思う
やさしい光に まばたく星座
のぞめば不思議な 星の世界よ

歌詞の意味・補足

「かがやく」「まばたく」「ふけゆく」と「く」の音で韻を踏んでいる。リズム感と統一感があり、小学生にも覚えやすく歌いやすい。文の最後が「よ」で終わっているのも同様の配慮か。

「ふけゆく秋の夜」というフレーズは、明治時代の唱歌『旅愁(りょしゅう)』の冒頭に登場する。「ふけゆく」とは、「(秋が)深まっていく」という意味。

「のぞめば」とは、はるか遠くを眺めること。

星の界(作詞:杉谷代水)

月なきみ空に きらめく光
嗚呼その星影 希望のすがた
人智は果てなし 無窮(むきゅう)の遠(おち)に
いざその星影 きわめも行かん

雲なきみ空に 横とう光
嗚呼洋々たる 銀河の流れ
仰ぎて眺むる 万里のあなた
いざ棹(さお)させよや 窮理の船に

歌詞の意味・補足

「月なきみ空」は「月無き御空」、つまり「月が無い空」の意味。

「人智」とは、人間の知恵・知能。

「無窮(むきゅう)」とは、果てしないこと、無限、永遠。

「きわめも行かん」は、深く研究して明らかにしよう、究めよう、といった意味

「横とう」は、横たわる。

「洋々たる」とは、水があふれるばかりに満ちているさま。銀河を大河に見立てている。

「あなた」とは「彼方(かなた)」、つまり離れた場所や方向を表す。

「窮理(きゅうり)」とは、物事の道理・法則を明らかにすること。

秋に寄せて(作詞:山崎紀一郎)

賛美歌『いつくしみ深き』のメロディに、山崎紀一郎が作詞した『秋に寄せて』の歌詞を次のとおり引用する。

澄みゆくみ空に 夕日は落ちて
くれない燃え立つ 雲間に高く
ねぐらを指しゆく 名知らぬ鳥の
鳴きゆく声こそ 秋のおとずれ

冴えゆくみ空に 星はまたたき
山の端(は)近く 月影さして
草の根深く 名知らぬ虫の
その音(ね)もあわれや 秋のおとずれ

<引用:山崎紀一郎『秋に寄せて』歌詞より>

山崎紀一郎『秋に寄せて』は、昭和30年代に中学校の音楽教科書に掲載された。

冒頭の歌詞「夕日は落ちて」については、以前は「落ち行く夕日」だったとする情報もネットで見かけた。

また、歌詞の最後の「秋のおとずれ」の部分は、以前は「おとずる秋か」と歌われていたようだ。

曲名も、『秋に寄せて』ではなく『おとずる秋』のような題名だったとの情報もあり、おそらく改訂前のバージョンが存在している可能性が高そうだ。

懐古(作詞:草月泰子)

賛美歌『いつくしみ深き』のメロディに、草月泰子(そうげつやすこ)が作詞した『懐古』の歌詞を次のとおり引用する。

月影さやけき 近江の湖(うみ)に
栄えし昔の 都をしのぶ
美し人々 裳(も)すそひきて
月見につどいし 姿ぞゆかし

すずかぜたちたる 近江の橋に
夕風におえば 昔をしのぶ
鐘の音静に 思いをこめて
たたずむ遊子の胸にぞひびく

<引用:草月泰子『懐古』歌詞より>

草月泰子『懐古』は、昭和20年代に中学校の音楽教科書に掲載された。

星の夜

壷田花子『星の夜』としても替え歌されている。歌詞は次のとおり。

涼しき夜風は 軒端(のきば)を吹きて
ほのぼの銀河の 流れは白し  
こと座にペガスス 白鳥星座
更けゆく夜空に またたき冴(さ)ゆる

遠くの花火は いつしか果てて
波音ばかりが ひびきを返す
宇宙ははるけし 限りもあらず
仰げばさえゆく 夜ごとの星座

<引用:壷田花子『星の夜』より>

この替え歌についても、かつて小学校の音楽教科書に掲載されていたようだ。

壷田花子『星の夜』について、情報提供のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございました。

関連ページ

いつくしみ深き 歌詞の意味 賛美歌
慈しみ深き友なるイエスは 我らの弱きを知りて憐れむ
星のうた 星に関する民謡・童謡・音楽
星が歌詞や曲名に登場する日本の歌・世界の歌まとめ