
1962年12月にイギリスに渡り、マーティン・カーシーからスカボローフェアを教わったポールサイモンと同い年のあるアメリカ人アーティストとは、言わずと知れたあのBob
Dylan(ボブ・ディラン)その人です。
しかも、ポールサイモンがイギリスへ渡ったのは、サイモン&ガーファンクの再結成後&デビューアルバム『Wednesday Morning,3AM(水曜の朝、午前3時)』のリリース後、つまり1964年以降のお話ですから、ボブ・ディランとマーティンカーシーの出会い(1963年初旬?)の方が先だったのです。
帰国後の1963年5月27日には、ボブ・ディラン2枚目のアルバムとなる『Freewheelin' Bob Dylan(フリーホイーリン・ボブ・ディラン)』(右図ジャケット)の中には、マーティン・カーシーから伝授されたスカボローフェアのアレンジである『Girl Of The North Country(北国の少女)』が収められています。比較検討のために、歌詞の一部を引用します。
Well, if you're travelin' in the north country fair,
Where the winds hit heavy on the borderline,
Remember me to one who lives there.
She once was a true love of mine.
風が吹き荒れる北国の市を旅するなら、
そこに住んでいるあの人によろしく伝えてほしい。
彼女は僕がかつて本当に愛した人だった。
メロディー自体は、サイモン&ガーファンクルのスカボローフェアとはかなり異なっているようですが、これはおそらく「エルフィンナイト」のバリアントのどれか他の曲に忠実なメロディーを採用したことが原因であると推測されます。これに対して歌詞の内容は非常にスカボローフェアと同じ雰囲気をもっていて、やはりマーティン・カーシーから何らかの手ほどきがあったことは想像にかたくありません。
今までの話を時系列にまとめて表にしてみました。いずれも数年の差で微妙なタイミングでリリースがなされていますが、ルーツを確定させるには前後関係を正確に理解しておくことが重要ですので、ここで再確認してみてください。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1962 | ボブ・ディランがイギリスに渡る(12月)。 |
| 1963 | ボブ・ディラン2枚目のアルバムリリース。『Girl Of The North Country(北国の少女)』が収録されている。 |
| 1964 | ポール・サイモンがイギリスに渡る。 |
| 1965 | マーティン・カーシーが初のソロアルバムをリリース。スカボローフェアが収録されている。 |
| 1966 | サイモン&ガーファンクルによる「スカボローフェア/詠唱」がリリースされる。 |
| 1967 | 1967年のダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」の挿入歌として、サイモン&ガーファンクルによる「スカボローフェア/詠唱」が用いられ、更に有名になる。 |
15世紀頃から生まれたとされるイングランド民謡「エルフィンナイト」は、今日の「スカボローフェア」に至るまで、それぞれの時代に合わせた創作・アレンジが加えられて、多くの人々の間で愛され続けてきたことが分かりました。ドナドナ研究室No.8「スカボローフェア」の最後の締めくくりとして、この曲を今日の我々により印象強く知らしめる契機となったサイモン&ガーファンクルのアレンジについて少しコメントしてみたいと思います。