流浪の民 歌詞の意味・和訳

ロベルト・シューマン(Robert Schumann/1810-1856)

『流浪の民(るろうのたみ)』(Zigeunerleben/ツィゴイネルレーベン/ジプシーの生活)は、ドイツのロマン派音楽を代表する作曲家ロベルト・シューマンによる1840年のドイツ歌曲。日本では合唱曲として有名。

ナイル川

写真:ナイル川(出典:Wikipedia)

歌詞は、ドイツ北部リューベック生まれの有名な詩人エマニュエル・ガイベル(Emanuel Geibel/1815-1884) の詩が用いられ、クララ・シューマンをはじめ様々な作曲家により曲が付けられている。

日本語の歌詞は、石倉小三郎氏による訳詩がつけられたもので、原詩を越えたとの声を聞くほどの名訳ぶりで有名。ちなみに、石倉訳での「ニイルの水」とは、原詩ではドイツ語で「der Nil(ニール)」つまりナイル川を意味する。

【試聴】シューマン 流浪の民 Zigeunerleben Op.29-3

【試聴】日本語版 シューマン 流浪の民

訳詞:石倉小三郎

ぶなの森の葉隠れに
宴(うたげ)寿ひ(ほがい)
賑(にぎ)はしや
松明(たいまつ)明く(あかく)
照らしつつ
木の葉敷きてうついする

これぞ流浪の人の群れ
眼(まなこ)光り髪清ら
ニイルの水に浸されて
きららきらら輝けり

燃ゆる火を囲みつつ
強く猛き男やすらふ
女(おみな)立ちて忙がしく
酒を酌みて差しめぐる

歌い騒ぐそが中に
南の邦(くに)恋ふるあり
悩み払う祈言(ねぎごと)を
語り告げる嫗(おうな)あり

愛(めぐ)し乙女舞い出でつ
松明明く照り渡る
管絃の響き賑はしく
連れ立ちて舞ひ遊ぶ

既に歌ひ疲れてや
眠りを誘ふ夜の風
慣れし故郷を放たれて
夢に楽土求めたり

東(ひんがし)空の白みては
夜の姿かき失せぬ
ねぐら離れ鳥鳴けば
いづこ行くか流浪の民

歌詞(ドイツ語)の意味・和訳(意訳)

Im Schatten des Waldes,
im Buchengezweig,
da regt's sich und raschelt
und flüstert zugleich.

ブナの森の木陰
騒がしき動めき
聞こえるささやき声

Es flackern die Flammen,
es gaukelt der Schein
um bunte Gestalten,
um Laub und Gestein.

色とりどりの人の姿に
木の葉や岩 ゆらめく炎の舞

Da ist der Zigeuner
bewegliche Schar,
mit blitzendem Aug'
und mit wallendem Haar,

そこはロマ(ジプシー)の集まる場所
輝く瞳 流麗な長髪

gesäugt an des Niles
geheiligter Flut,
gebräunt von Hispaniens
südlicher Glut.

ナイル川の聖なる水の
ほとりで育てられ
スペインの太陽に焼かれし褐色の肌

Ums lodernde Feuer
in schwellendem Grün,
da lagern die Männer
verwildert und kühn,

瑞々しい緑の中 火を囲み
荒々しく勇敢な男達が横たわる

da kauern die Weiber
und rüsten das Mahl,
und füllen geschäftig
den alten Pokal.

女達はしゃがんで食事の支度
慌ただしく古い酒杯に酌をする

Und Sagen und Lieder
ertönen im Rund,
wie Spaniens Gärten
so blühend und bunt,

輪になって歌い物語を語り 
盛り上がること
スペインの庭の如く華やかに

und magische Sprüche
für Not und Gefahr
verkündet die Alte
der horchenden Schar.

老婆が唱える魔法の呪文
苦難や恐れを打ち払う

Schwarzäugige Mädchen
beginnen den Tanz.
Da sprühen die Fackeln
im rötlichen Glanz.

踊り始める黒い瞳の女達
火の粉を散らす松明(たいまつ)

es lockt die Gitarre,
die Zimbel klingt.
Wie wild und wilder
der Reigen sich schlingt!

ギターとシンバルの音に誘われ
絡み合う野生の輪舞

Dann ruh'n sie ermüdet
vom nächtlichen reih'n.
Es rauschen die Buchen
in Schlummer sie ein.

踊り疲れ 横になり体を休める
ぶなの木が奏でる子守歌

Und die aus der glücklichen
Heimat verbannt,
sie schauen im Traume
das glückliche Land.

幸せに満ちた祖国を追われ
夢の中で愛する故郷に帰る

Doch wie nun im Osten
der Morgen erwacht,
verlöschen die schönen
gebilde der Nacht,

東の空に日は昇り
美しき夜の姿は消え行く

es scharret das Maultier
bei Tagesbeginn,
fort zieh'n die Gestalten,
wer sagt dir wohin?

夜明けにラバが地面を蹴れば
ロマ(ジプシー)の群れが出発の時
何処行くや流浪の民

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