菩提樹 シューベルト 歌詞の意味

泉に添いて 茂る菩提樹 したいゆきては うまし夢見つ

『菩提樹(ぼだいじゅ)』(Der Lindenbaum/デア・リンデンバウム)は、オーストリアの作曲家シューベルトによる歌曲集「冬の旅」の第5曲。

日本語歌詞は、明治時代の訳詞家・近藤朔風(こんどう さくふう)による「泉に添いて 茂る菩提樹」が有名。

シューベルト歌曲集「冬の旅」は、1823年に作曲された『美しき水車小屋の娘』と同じく、ドイツの詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集によるもの。二部に分かれた24の歌曲から構成されている。

この歌曲では、失恋した若者が町を捨てて放浪の旅を続けていく姿が描かれており、 全曲を通して疎外感や絶望と悲しみが強く表現されている。

ちなみに、シューベルト『菩提樹』で歌われているのは写真のセイヨウボダイジュ(セイヨウシナノキ)。ナツボダイジュとフユボダイジュとの交雑種といわれ、ヨーロッパの多くの都市で街路樹として用いられている。

【YouTube】シューベルト 菩提樹

【YouTube】日本語 合唱版 シューベルト 菩提樹

訳詞:近藤朔風

泉に添いて 茂る菩提樹
したいゆきては うまし夢見つ
幹(みき)には彫(え)りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに 訪(と)いしその陰

今日も過(よぎ)りぬ 暗き小夜中(さよなか)
まやみに立ちて まなこ閉ずれば
枝はそよぎて 語るごとし
来よいとし友 此処に幸(さち)あり

面(おも)をかすめて 吹く風寒く
笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
はるか離(さか)りて たたずまえば
なおもきこゆる 此処に幸あり
此処に幸あり

訳詞の意味(補足)

したいゆきては

愛着や恋しさを抱きながら近くへ寄って行けば

うまし夢見つ

素敵な(すばらしい)夢を見た

彫(え)りぬ

彫(ほ)られている、刻まれている

ゆかし

気品・情趣などがあり、どことなく心がひかれる/好奇心がそそられる/なつかしく感じられる

訪(と)いしその陰

その木陰を訪れた

小夜中(さよなか)

真夜中の古語表現

ドイツ語 歌詞の意味・和訳(意訳)

Am Brunnen vor dem Tore
Da steht ein Lindenbaum
Ich träumt' in seinem Schatten
So manchen süßen Traum

門の前の泉のそばに
そびえる一本の菩提樹
僕は木陰で夢を見た
たくさんの甘い夢を

Ich schnitt in seine Rinde
So manches liebe Wort
Es zog in Freud' und Leide
Zu ihm mich immer fort

僕は樹の皮に刻み込む
たくさんの愛の言葉を
楽しい時も悲しい時も
僕はその樹に惹かれていた

Ich mußt' auch heute wandern
Vorbei in tiefer Nacht
Da hab' ich noch im Dunkeln
Die Augen zugemacht

僕は今日もまた歩く
真夜中に樹の側を通って
その時 真っ暗だったが
僕は目を閉じた

Und seine Zweige rauschten
Als riefen sie mir zu
Komm her zu mir, Geselle
Hier findst du deine Ruh'

すると枝がざわめいた
まるで僕に呼びかけるように
「ここへおいで 旅人よ
貴方の安らぎはここにあります」

Die kalten Winde bliesen
Mir grad' ins Angesicht
Der Hut flog mir vom Kopfe
Ich wendete mich nicht

冷たい風が吹きつけた
まっすぐ僕の顔に
帽子が飛んで行ったけど
僕は振り返らなかった

Nun bin ich manche Stunde
Entfernt von jenem Ort,
Und immer hör' ich's rauschen
Du fändest Ruhe dort!

あれから多くの時間が過ぎて
遠く離れた場所にいるけど
僕にはずっとあのざわめきが聞こえる
「貴方はここで安らぎを得られたのに!」

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