ホフマンの舟歌 オッフェンバック

恋多きホフマンを見守るミューズ 最後までそばにいてくれたのは・・・

『ホフマンの舟歌』は、1881年初演のオペラ「ホフマン物語 Les Contes d'Hoffmann」第4幕で歌われる劇中歌。オッフェンバック作曲。

原曲のフランス語のタイトルは、「Belle nuit, ô nuit d'amour 美しい夜、おお恋の夜」。水の都ヴェネツィアの場面で歌われ、単に「舟歌」を意味する「the Barcarolle(バルカローレ/バルカロール)」の曲名でも知られる。

他の作曲家による有名な舟歌(Barcarolle)についてはこちら

フランス語(原詩)『ホフマンの舟歌』の歌詞と日本語訳はこちら(ページ下部)。

オッフェンバック唯一のオペラにして未完の作品

『ホフマンの舟歌』作曲者のオッフェンバック(Jacques Offenbach/1819-1880)は、ドイツ生まれでフランスで活躍した音楽家。運動会の曲として有名な「地獄のオルフェ(天国と地獄)」をはじめ、数多くのオペレッタ(の原型)を作曲した。

オペラ「ホフマン物語」は、オッフェンバック最晩年の作品(未完)であり、彼が手掛けた唯一のオペラ作品でもある。オッフェンバックの死後、フランスの作曲家エルネスト・ギロー(Ernest Guiraud/1837-1892)の補筆により完成された。火災により初演時の楽譜は焼失してしまったという。

なお、『ホフマンの舟歌』は、オッフェンバック作曲によるドイツ語のオペレッタ「ラインの妖精」劇中歌から転用された曲である。

謎の多い「ホフマン物語」 あらすじ・ストーリー

先にも述べたとおり、オペラ「ホフマン物語」は、完成前に作者が亡くなってしまった「未完の作品」であり、後にエルネスト・ギローが補筆したものの、ストーリーやオチは果たしてオッフェンバックの意図していた展開になっているのか確認のしようがない。

初演時の楽譜も消失したうえ、ギロー補筆版以外にも様々な版が存在し、そのそれぞれで若干ストーリー展開や描かれる場面が異なっている。

ここでは、参考までに、オペラ「ホフマン物語」の一般的なあらすじを簡単にご紹介しておくこととしたい。一言でいうと、「浮ついた男を見守る女神とその顛末」といったところか。

参考:ギリシア神話の女神ミューズ達 左はウラニア 右はカリオペ

ホフマンの悲しい失恋話 女神ミューズは友人に化けて…

ホフマンはかつて3人の女性に恋し、そのすべてに破れてきた。ある日酒場で、ホフマンはその悲しい過去の恋愛話(失恋話)をとうとうと語りだした。

心配した女神ミューズはホフマンの親友ニクラウスの姿に変身。いつもミューズがホフマンを陰で見守っていたのだ。

なお『ホフマンの舟歌』が登場するのは、3人目の女性ジュリエッタが登場するヴェネツィアのシーン(第4幕)。ニクラウスに化けた女神ミューズとのデュエットで歌われる。

一人目:オランピア 人形だった

ホフマンが遠目から一目惚れしたのはなんと「オランピア」という人形だった。「恋は盲目」で気が付かないホフマンをからかおうと、コッペリウス博士は人形が人間に見える魔法のメガネを売りつけた。

最後まで気が付かなかったホフマンはショックで失神。このシーンは、バレエ音楽「コッペリア」との関連性が伺われる。

二人目:アントーニア 変な医者と亡霊に邪魔された

二人目の女性アントーニアはミュンヘンの娘。歌手を志望していたが、死んだ母親の声に似ているという理由で歌うことを禁じられていた。

ホフマンとアントーニアは結婚を誓う仲だったが、悪魔的な医者ミラクル博士に歌うようそそのかされ、亡き母に助けを求めるも、母の亡霊にあおられ、狂ったように歌い叫んで倒れてしまった。

三人目:ジュリエッタ 騙されて影を奪われた

ヴェネツィアの歓楽場の女性ジュリエッタ。冒頭のシーンで彼女とニクラウス(女神ミューズ)が夢見る恋の歌『ホフマンの舟歌』を歌う。

ダイヤに目がくらんだジュリエッタは、他の男にそそのかされてホフマンの影を奪おうと誘惑する。騙されたホフマンは影を差出し失神。口封じにジュリエッタは毒入りのワインを飲まされ、ホフマンの腕の中で息絶えた。

絶望したホフマンは絶命 そこへミューズが現れ…

3つの失恋話を終えたホフマン。ひそかに恋心を寄せていた酒場の歌姫ステラも目の前で他の男に奪われると、繰り返される失恋の惨めさと悲しみからその場に倒れ、そのまま絶命してしまう。

暗転した舞台に、神々しく輝く女神ミューズが現れ、ホフマンを詩人として蘇らせた。最初から最後までホフマンのそばにいてくれたのは、他でもないミューズだったのだ。

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【試聴】Barcarolle from 'Les contes d'Hoffmann' by Offenbach

歌詞・日本語訳(意訳) 『ホフマンの舟歌』

Belle nuit, ò nuit d'amour,
souris à nos ivrèsses.
Nuit plus douce que le jour,
ò belle nuit d'amour!

美しい夜、おお恋の夜
喜びに微笑む
またとない甘き時間
おお美しき恋の夜よ!

Le temps fuit et sans retour.
Emporte nos tendrèsses!
Loin de cet heureux sé jour,
le temps fuit sans retour.

過ぎ行く時は 戻ることなく
慈愛の情も遠く運び去る
時は過ぎ行く 戻ることなし

Zéphyrs embrasés,
versez-nous vos caresses,
Zéphyrs embrasés,
donnez-nous vos baisers,
Vos baisers, vos baisers. Ah!

そよ風が優しく包む
そっと口づけを残して

Belle nuit, ô nuit d'amour,
souris a nos ivrèsses.
Nuit plus douce que le jour,
ô belle nuit d'amour! ô belle nuit d'amour!

美しい夜、おお恋の夜
喜びに微笑む
またとない甘き時間
おお美しき恋の夜よ!

Souris à nos ivrèsses
Nuit d'amour, ô nuit d'amour!

またとない甘き時間
恋の夜よ!恋の夜よ!