I Vow to Thee, My Country
祖国よ、我は汝に誓う

ホルスト「木星」に歌詞をつけたイギリス愛国歌・聖歌

『I Vow to Thee, My Country(祖国よ、我は汝に誓う)』は、20世紀前半に発表されたイギリス愛国歌・イギリス国教会の聖歌。

歌詞は、第一次世界大戦直後の1918年に、イギリスの外交官セシル・スプリング=ライス(Cecil Spring-Rice/1859-1918)により作詞された。

メロディは、イギリスの作曲家ホルストの組曲『惑星』より「木星」の第二部が用いられている。

イギリスのバッキンガム宮殿

写真:イギリスのバッキンガム宮殿(出典:Wikipedia)

ダイアナ妃(Diana, Princess of Wales)の婚礼時及び葬儀にも用いられた。ウェールズ出身の女性歌手シャルロットチャーチのデビューアルバムVoice of an Angel にも収録されている。

ラグビーワールドカップ(Rugby World Cup)のテーマソング『ワールド・イン・ユニオン World in Union』にメロディが転用されている

また、2011年から2012年にかけて、女子フィギュアスケートの浅田真央(あさだ・まお)選手がエキシビション・プログラムで同曲を使用し注目を集めた。

【試聴】I Vow To Thee My Country - Festival of Remembrance

【試聴】I Vow to Thee, My Country

歌詞の意味・和訳

1.
I vow to thee, my country,
all earthly things above,
Entire and whole and perfect,
the service of my love;
The love that asks no question,
the love that stands the test,

祖国よ 我は誓う
比類なき完全なる愛を捧げん
疑いなき愛
試練をも乗り越えん

That lays upon the altar
the dearest and the best;
The love that never falters,
the love that pays the price,
The love that makes
undaunted the final sacrifice.

祭壇に奉られし最高の愛
揺らぐことなき愛
多くの犠牲により贖われん

2.

And there's another country,
I've heard of long ago,
Most dear to them that love her,
most great to them that know;
We may not count her armies,
we may not see her King;

もう一つの祖国がある
古より聞き覚えし祖国が
その国を愛する者にとっては最愛の
その国を知る者にとってはもっとも偉大な
その国には軍隊もなければ王もいない

Her fortress is a faithful heart,
her pride is suffering;
And soul by soul and silently
her shining bounds increase,
And her ways are ways of gentleness,
and all her paths are peace.

忠実なる心こそ砦
受難こそ誇り
一人一人の心に静かに
その輝きは増していく
そして常に穏やかで
平和な国であり続ける

歌詞の内容は?

ライス氏による歌詞は、内容的に対を成す一番と二番から構成されている。一番は現実のイギリスの国土(王国)を指し、二番ではキリスト教における死後の世界である天国について言及している。つまり、キリスト教徒にとっては持つべき祖国が二つあるのだという内容となっている。

一番の歌詞では、第一次世界大戦においてイギリスが被った犠牲者達を強く意識した内容となっている。これは、戦前に既に完成していた歌詞をライス氏が戦中に急遽書き換えたとされている。

第一次世界大戦でイギリス兵300万人が犠牲に

作詞された当時のイギリスは、1914年から1918年にかけて第一次世界大戦が勃発していた時代。ブリテン島対岸のフランドル地方(ベルギーなど)にドイツが侵攻したのを機に、イギリスも泥沼の世界戦争に足を踏み入れていた。

イギリスでは4年間で兵員だけでも300万人近い死傷者を出した。作詞者のライス氏は当時アメリカのワシントンに大使として着任しており、ヨーロッパ戦線へのアメリカ参戦実現に向けて活動していた。

アメリカ参戦後(1917年)はイギリスに帰国したスプリング=ライスだったが、その帰国直前の1918年1月、一番の歌詞を大きく書き変え、戦争で多大な犠牲を被ったイギリス兵らに焦点をあてて再構成した。

休戦記念日セレモニーの曲に

1918年11月11日に休戦協定が締結され、第一次世界大戦は終結した。スプリング=ライスの詩にホルスト『木星』のメロディがつけられた1921年以降、同曲はイギリス愛国歌『I vow to thee, my country』として、特にイギリスにおける11月11日のRemembrance Day(Armistice Day/追悼の日)セレモニーで歌われるようになった。

1926年には讃美歌として出版されると、そのメロディは、ホルストが長年暮らしたエセックス県アトルズフォード市(Uttlesford)にある村の名前から「Thaxted(サクステッド)」と命名され、以後このメロディで様々な歌詞の讃美歌が誕生している。

関連ページ

ホルストの組曲『惑星』より「木星」
『I Vow to Thee, My Country』メロディの原曲
イギリスの行進曲・愛国歌・軍歌
『祖国よ、我は汝に誓う』、『希望と栄光の国』、『エルサレム』、『ルール・ブリタニア』など、有名なイギリスの行進曲・愛国歌・軍歌まとめ。
イギリス国歌『God Save the Queen』
法制化されていないが、事実上のイギリス国歌として位置づけられる。
ワールド・イン・ユニオン World In Union
ラグビーワールドカップ公式テーマ曲はホルスト『木星』のメロディ
有名なイギリス民謡・童謡
『グリーンスリーブス』、『スカボローフェア』など、日本でも有名なイギリス民謡(イングランド民謡)の歌詞と視聴