4つの厳粛な歌

ヨハネス・ブラームス(Johanes Brahms/1833-1897)

『4つの厳粛な歌 Vier ernste Gesänge』は、ヨハネス・ブラームスが晩年の1896年に作曲したバスのための歌曲。自らの死を悟ったブラームスによる辞世の作品。

全4曲で構成され、主に歌詞は死に関する聖書の文言が用いられている。第1曲・第2曲は旧約聖書「コヘレトの言葉(伝道の書)」、第3曲は「シラ書(集会の書)」、第4曲は新約聖書「コリント人への第一の手紙」から取られている。

写真はウィーン中央墓地にあるブラームスの墓(右側)。左側は、生前親交のあったヨハン・シュトラウス2世の墓(出典:YSP浜松 Webサイト)。

こがね虫は金持ちだ? そっくりメロディ

ブラームス『4つの厳粛な歌』第1曲のメロディについては、日本の唱歌『こがね虫』によく似ているとの指摘がなされることがある。

『こがね虫』と似ているクラシック音楽としては、アルベニス「スペイン組曲」の中にも似た楽曲があるが、このブラームス『4つの厳粛な歌』の方が直感的に分かりやすい類似性を持っているように思われる。

面白特集ページ「そっくりメロディ研究室」では、このようなメロディの偶然の一致をあれこれまとめているので、ご興味のある方は是非ともお立ち寄りいただきたい。

【YouTube】ブラームス『4つの厳粛な歌』より第1曲

第1曲 歌詞(ドイツ語)

Denn es gehet dem Menschen wie dem Vieh;
wie dies stirbt,so stirbt er auch;
und haben alle einerlei Odem;
und der Mensch hat nichts mehr denn das Vieh:
denn es ist alles eitel.

人の子らに臨むところは獣にも臨むからである。すなわち一様に彼らに臨み、これの死ぬように、彼も死ぬのである。彼らはみな同様の息をもっている。人は獣にまさるところがない。すべてのものは空だからである。

<注:日本語部分は聖書の口語訳(伝道の書 3章19-22節)>

Es fährt alles an einem Ort;
es ist alles von Staub gemacht,
und wird wieder zu Staub.
Wer weiß,ob der Geist des Menschen
aufwärts fahre,
und der Odem des Viehes unterwärts unter
die Erde fahre?

みな一つ所に行く。皆ちりから出て、皆ちりに帰る。だれが知るか、人の子らの霊は上にのぼり、獣の霊は地にくだるかを。

Darum sahe ich,daß nichts bessers ist,
denn daß der Mensch fröhlich sei in seiner Arbeit,
denn das ist sein Teil.
Denn wer will ihn dahin bringen,
daß er sehe,was nach ihm geschehen wird?

それで、わたしは見た、人はその働きによって楽しむにこした事はない。これが彼の分だからである。だれが彼をつれていって、その後の、どうなるかを見させることができようか。

楽曲構成

第1曲:

人の子らに臨むところは獣にも臨むからである
Denn es gehet dem Menschen

伝道の書(コヘレトの言葉)3章19-22節

第2曲:

わたしはまた、日の下に行われるすべてのしえたげを見た
Ich wandte mich, und sahe an

伝道の書(コヘレトの言葉)4章1-3節

第3曲:

ああ死よ、おまえを思い出すのはなんとつらいことか
O Tod, wie bitter bist du

集会の書(シラ書)41章1-2節

第4曲:

たといわたしが、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても
Wenn ich mit Menschen

コリント人への第一の手紙 13章1-3, 12-13節

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