おおブレネリ 歌詞の意味・謎

おおブレネリ あなたのおうちはどこ? 歌詞の謎に迫る

「おおブレネリ あなたのおうちはどこ♪」の歌い出しで親しまれる陽気なスイス生まれの童謡『おおブレネリ』。ヨーデルが盛んなスイスの民謡がルーツだという。

「ヤッホー ホトラララ」の特徴的なコーラスと明るいメロディ進行は、『おお牧場はみどり』や『森へ行きましょう』などの自然系ヨーロッパ民謡にも相通ずる陽気さと清々しさに満ち溢れている。

また、『遠き山に日は落ちて』や『燃えろよ 燃えろ』などと同様に、キャンプソング、リクリエーション・ソングとして屋外活動などで歌われる機会もあるようだ。

ブレネリって誰?

『おおブレネリ』の歌詞に登場する「ブレネリ」とは、後述するが、スイスでよくある女性名フレニ「Vreni」の愛称であるフレネリ「Vreneli」を指している。最後の「eli」が愛称を表す接尾辞と語形変化の部分で、全体で「フレニちゃん(フレネちゃん)」といった意味になるだろうか。

【YouTube】おおブレネリ NHKみんなのうた

この『おおブレネリ』については、歌詞のルーツや原曲、歴史的背景などについて、ネット上に様々な情報が飛び交っている。

『世界の民謡・童謡』を扱う当サイトとしても、現時点(2013年)時点で確認できた『おおブレネリ』に関する諸説について、ある程度順を追って情報を集約していきたいと思う。

作詞は元大阪YMCA主事の松田稔

『おおブレネリ』の作詞者(訳詩者)は、元大阪YMCA主事で日本リクリエーション協会の会長を務めていた松田稔氏。終戦後の1949(昭和24)年頃に作詞されたという。同氏による訳詞は次のとおり。

1.
おおブレネリ あなたのおうちはどこ
わたしのおうちは スイッツァランドよ
きれいな湖水(こすい)の ほとりなのよ

<コーラス>
ヤッホ ホトゥラララ
(5回繰り返し)
ヤッホ ホトゥラララ ヤッホホ

2.
おおブレネリ あなたの仕事はなに
わたしの仕事は 羊飼いよ
おおかみ出るので こわいのよ

<コーラス>

「スイッツァランド」とは「スイス」の意味。これらの歌詞が、日本でも最も一般的な『おおブレネリ』の歌詞であろう。

ちなみに、次のような2番の歌詞も存在するようだ(松田稔氏との関係性は不明)。

2.
おおブレネリ あなたの心はどこ
わたしの心は 山のかなた
なつかしふるさと スイッツァランドよ

替え歌「フォートランの歌」

余談だが、一部の『おおブレネリ』の替え歌では、「ヤッホー ホトゥラララ」の部分を、IBMが考案したプログラミング言語FORTRAN(フォートラン)を引き合いに出して、「ヤッホ フォートランランラン」と歌う「フォートランの歌」として広まっているようだ。

おおブレネリ あなたの言語はなに
私の言語はフォートランよ
数値計算が得意なのよ
ヤッホ フォートランランラン
ヤッホ フォートランランラン
(以下略)

3番と4番の歌詞があった?

さて、『おおブレネリ』についてある程度調べていくと、どうやら歌詞は1番・2番だけではなく、東大音感合唱研究会が「追訳詞」したとされる3番と4番があることが分かってくる。さっそくその追訳された歌詞を見てみよう。

3.
おおブレネリ 私の腕をごらん
明るいスイスを 作るため
オオカミ必ず 追い払う
<コーラス>

4.
おおブレネリ ごらんよ スイッツランドを
自由を求めて 立ち上がる
たくましいみんなの 足取りよ
<コーラス>

この追訳詞を見ると、朗らかで陽気な1番・2番の歌詞とは一転して、何かを暗示しているような若干シリアスな内容となっており、特に4番だけみると軍歌のような勇ましさすら感じられる。

元大阪YMCA主事の松田稔氏は、北米YMCAからの派遣主事R.L.ダーギン(Russel.L. Durgin)からレクリエーションの指導を受けており、ダーギン氏からもらった歌集に『おおブレネリ』のアメリカ版の歌詞が掲載されていたそうだ。
(吉田明弘著「Historian's View No.10」参照)

もしかしたらこのアメリカ版の歌詞が、東大音感「追訳詞」3番・4番のオリジナルなのだろうか?さっそく見てみよう。

アメリカ版『おおブレネリ』の歌詞

この英語の歌詞が、果たして松田稔氏が北米YMCAのR.L.ダーギン氏からもらった歌集に乗っていた『おおブレネリ』の英語版の歌詞と同一であるかは不明だが、とりあえずネット上で確認できた代表的な英語の歌詞は次のとおり。

1.
O Vreneli, my pretty one, pray tell me, where's your home?
"My home it is in Switzerland, It's made of wood and stone."
Yo ho ho, tra la la la...

おおブレネリ(フレネリ)可愛い娘 君の家はどこ?
「私の家はスイスにあるの。木と石で出来ているのよ」

2.
O Vreneli, my pretty one, pray tell me, where's your heart?
"O that," she said, "I gave away, But still I feel it smart."

おおブレネリ 可愛い娘 君の心(感情)はどこ?
「ああそれは」彼女は言った
「あげちゃったわ。でもまたうずくの」

3.
O Vreneli, my pretty one, pray tell me, where's your head?
"My head I also gave away, It's with my heart," she said.

おおブレネリ 可愛い娘 君の頭(知性)はどこ?
「それもあげちゃったわ。心(感情)と一緒にね。」

松田稔氏が訳したのは1番のみ?

この英語の歌詞を見る限り、アメリカ版『おおブレネリ』は(一般的に)3番までしか歌詞が存在しないように見える。しかも日本語版と内容が似ているのは1番のみ。2番以降はマザーグースのようなナンセンスさが感じられる。正直ちょっと怖い内容の歌詞だ。

この点、上述の参考文献(吉田明弘著「Historian's View No.10」)でも、松田稔氏がダーギン氏からもらった歌集には歌詞が3番まで載っていたとされており、松田稔氏は最初に「1番のみ」を訳したと記述されている。

おそらく日本語版『おおブレネリ』における2番の歌詞は、アメリカ版の歌詞を参照することなく、YMCAのレクリエーションソングとして相応しい日本オリジナルの歌詞がつけられたのではないかと推測しうる。

3番と4番も日本オリジナル?

さらに、東大音感合唱研究会が「追訳詞」したとされる3番と4番の歌詞については、2番の日本オリジナルのストーリを若干延長する形で翻案された、東大音感オリジナルの歌詞なのではないかと推測される。

2番も東大音感作とする解説もあるようだが詳細は不明。この辺の事情については、当の東大音感合唱研究会に照会でもかければ、ある程度の手掛かりはつかめるかもしれないが、本稿ではここまでとしておく。

スイスの軍人が作詞したオリジナルとは?

発祥地のスイスにおける『おおブレネリ』オリジナルの歌詞については、こちらのページに掲載されていたものを引用したい。

http://www.ff.iij4u.or.jp/~nyan/song/page130.htm

タイトル:『O Meiteli, liebs Meiteli』

O meiteli, liebs Meiteli, wo hesch au du dis Hei ?
"Es liid im liebe Schwyzerland und ist vo Holz unt Stei,
Wenn's waetteret, wenn's broenneret, so schlods bi eus nid i,
Es mueesst au gar e boese Sturm, es Grebelwaetter si !"
Di-ri-ril-lel-lal-lal-la ...

O Meiteli, liebs Meiteli, wo hesch au dis Haerz ?
"Es ist mir huett abhande cho, i gspuere no de Schmaerz.
Si hend pfifelet, hand truemmelet und's Schwyzerfaehndli gshwaenkt,
do ha-n-is der erste Freud im Traengtrommpeter gschaenkt."
Di-ri-ril-lel-lal-lal-la ...

O Meiteli, liebs Meiteli, wo hesch au di Verstand ?
"Dae ha-n-i au zum Haerzli gae, 's gohd bedes mieteinand.
Und chond er nid und will er nid, so isschs am Aend jo gliich.
Und gib i ke Soldatefrau, huerote tue-n-i gliich."
Di-ri-ril-lel-lal-lal-la ...

アメリカ版と同じく歌詞は3番まで。その内容もアメリカ版と大筋で一致する類似性の高いストーリーが描写されている。

このスイス・オリジナル版『おおブレネリ』は、軍人で詩人でもあったツィベリ(Zyboeri)が、当時存在していた何らかの曲のメロディに作詞をして1910年に出版したものだという。

これがアメリカに伝わる際、「meiteli」がスイスの女性名フレニ「Vreni」の愛称フレネリ「Vreneli」に改められたのではないかとされている。

東大音感が追訳詞したとされる3番・4番の歌詞の内容は、このスイス・オリジナル版にはまったく現れていないようだった。やはり日本語版の3番・4番の歌詞は、日本完全オリジナルの歌詞である可能性が高そうだ。

余談:ブレネ湖について

『おおブレネリ O Vreneli』の「ブレネ」に関連して、スイスのブレネ湖に言及する解説がネット上で若干見られたので、果たしでどんなつながりがあるのか少し調べてみた。

その湖とは、フランスに近いスイス西部のヌーシャテル州ル・ロックル (Le Locle)群にあるブレネ湖。スペルは「Lac des Brenets」。横幅1kmほどの細長い小さな湖のようだ。

カタカナで表記すれば、「ブレネリ」も「ブレネ湖」も同じ「ブレネ」だが、現地のスペルはご覧のとおり異なっている。他にもブレネ湖があれば別だが、おそらくこのブレネ湖(Lac des Brenets)と『おおブレネリ O Vreneli』の関連性はそれほど高くはないと思われる。

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