ホルガローテン Hårgalåten

フィドル奏者に偽装した悪魔が奏でる音楽に魂を奪われた若者たち

『ホルガローテン Hårgalåten』は、フィドル(バイオリン)でよく演奏されるスウェーデン民謡・伝承曲。フォークダンス・社交ダンスの演目「ハンボ Hambo」にもよく使われる。

「ホルガ Hårga」は、スウェーデン・ヘルシングランド地方(Hälsingland)の小さな村の名前。ホルガ山のふもとにある。「ローテン låten」とは「歌」を意味する。

この『ホルガローテン Hårgalåten』がフィドルでよく演奏されるのには理由がある。この曲のストーリーは、スウェーデンのホルガ山で起きたというある伝説が元になっているのだが、その伝説では、ホルガの若者たちを惑わせ死へと導くフィドル奏者が登場するのだ(詳細は後述)。

【試聴】 ホルガローテン Hårgalåten

スウェーデンの伝説「ホルガダンセン」

舞台は18世紀半ば頃のスウェーデン・ヘルシングランド地方にある小さな村、ホルガ。ある土曜の夜、ホルガ村の若者たちが集まってダンスを楽しんでいた。

写真:ホルガ山 登山口/出典:MRSODERQVIST@The Dark Side of Oz

すると突然、ダンスの途中で音楽が止まり、フィドルを持った怪しい男が暗闇から現れた。その男は大きな黒い帽子をかぶり、目には燃え盛る炎をまとっていた。

男はフィドルを構えると、今まで誰も聴いたことがないような妖しげな旋律を奏で始めた。若者たちはすぐにメロディを気に入りダンスを再開したが、踊りだした後で、皆ある異変に気が付き始めた。踊り始めたのはいいものの、止めようと思ってもダンスを止められないのだ。

怪しいフィドル奏者が音楽を止めることはなかった。夜中続く妖しげな演奏に合わせて、若者たちは意思を奪われた人形のように踊り続けた。

ついに夜明けが近づいてきた。フィドル奏者が演奏を続けながら移動を始めると、若者たちも踊り続けながら一列になってその後をついていった。彼らはもはや男の操り人形と化していた。

教会から朝の鐘が鳴り響く頃には、フィドル奏者も若者たちもその場から姿が見えなくなっていた。物陰に隠れていた一人の女の子を除いて。

たった一人の女の子は、怪しげなフィドル奏者の正体にいち早く気が付いていた。よく見ると男の足はヤギのヒヅメになっており、それはヤギの体をもった(キリスト教における)悪魔のバフォメットだったのだ。

女の子は皆に「踊ってはいけない!」と警告したが、誰も彼女の声に耳を傾けなかった。気が付いた者もいたが、悪魔の音楽に合わせて踊り始めてしまってからでは為すすべもなかった。

悪魔に操られていった若者たちは、みな村の近くのホルガ山に連れられて行った。そこではみな死ぬまで踊らされ魂を抜かれ、あとには骨だけが残されていた。

ホルガ山のどこかには、まだその現場にダンスの輪の跡が残されているというまことしやかな言い伝えも残されている。

もしあなたに勇気があれば、満月の夜にホルガ山に登ってみるといい。きっとそこでは、悪魔が若者たちに演奏していた曲を耳にすることが出来るだろう。

 

スウェーデンの伝説「ホルガダンセン Hårgadansen」より

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