北島三郎『まつり』 歌詞と解説

山の神 海の神 今年も本当にありがとう これが令和の祭りだよ!

北島三郎『まつり』は、1984年(昭和59年)にリリースされた日本の歌謡曲。作詞:なかにし礼、作曲:原譲二(北島三郎のペンネーム)。

NHK紅白歌合戦で5回もトリを務めた代表曲・定番曲であり、競馬のキタサンブラックが菊花賞や天皇賞などで優勝した際には、競馬場で北島本人による歌唱が披露された。

さて、一般的に「祭り」という言葉を聞くと、盆踊りなどの夏祭りや、農作物の収穫時期に行われる秋祭りなどが思い浮かぶが、北島三郎『まつり』の歌詞では一体どんな祭りが描写されているのだろうか?実際の歌詞を引用しながら、その意味や内容を簡単ン位解説してみたい。

【YouTube】 まつり 北島三郎

【YouTube】 北島三郎 まつり 紅白2006

歌詞

男は祭りを そうさ
かついで 生きてきた
山の神 海の神
今年も本当に ありがとう
白い褌(ふんどし) ひきしめた
裸若衆に 雪が舞う
祭りだ 祭りだ 祭りだ 豊年祭り
土の匂いの しみこんだ
倅その手が 宝物

男は祭りで そうさ
男を みがくんだ
山の神 海の神
いのちを本当に ありがとう
船に五色の 旗をたて
海の男が 風を切る
祭りだ 祭りだ 祭りだ 大漁祭り
見ろよ真っ赤な 陽が昇る
倅 一番船をこげ

燃えろよ 涙と汗こそ 男のロマン
俺もどんとまた 生きてやる
これが日本の 祭りだよ

一番の歌詞

北島三郎『まつり』(作詞:なかにし礼)一番の歌詞を次のとおり引用する。

男は祭りを そうさ
かついで 生きてきた
山の神 海の神
今年も本当に ありがとう

一番の歌詞を見ると、ここで描写されている「まつり」とは「豊年祭り」であることが分かる。

一般的に「豊年祭り」とは、農作物の収穫に感謝し豊作を祝う秋の祭りを指す。この歌詞の季節は、少なくとも秋の収穫時期以降になるだろう。「雪が舞う」という描写から、初雪が降る10月から11月頃が該当しそうだ。

「山の神 海の神」と複数列挙されているが、一番の歌詞で焦点が当てられているのは「山の神」であり、「海の神」については二番の歌詞に関連づけられている。

山の神=田の神

畑や田を耕す農民たちにとって山の神は、春になると山から降りてきて稲作の豊穣をもたらす「田の神」であった。

秋の収穫期には、豊かな恵みを与えてくれた田の神に感謝する祭りが行われ、田の神は再び山に戻っていく。これは、田の神・山の神の「春秋去来の伝承」と呼ばれる。

山の神は一般に女神であると考えられており、山の神に関する祭に女性が参加すると神が嫉妬して祟りが起きるとさえ信じられていた。

北島三郎『まつり』の歌詞で「男」が強調されているのも、こうした信仰が影響しているのかもしれない。

うちのカミさん=山の神

余談だが、自分の妻・奥さんのことを「カミさん」と呼ぶ表現があるが、それは「山の神」が語源になっているそうだ(諸説あり)。

上述のとおり山の神は女神と考えられており、中世以降の日本では妻・奥さんのことを、若干の皮肉・冗談の意を込めて「山の神」と呼ぶことがあった。

これが現代になって、より親しみがこもった「カミさん」というくだけた愛称に変化していったとされている。

北島三郎ベスト

写真:これが聴きたい! 北島三郎ベスト

二番の歌詞

北島三郎『まつり』二番の歌詞を次のとおり引用する。

男は祭りで そうさ
男を みがくんだ
山の神 海の神
いのちを本当に ありがとう

船に五色の 旗をたて
海の男が 風を切る
祭りだ 祭りだ 祭りだ 大漁祭り
見ろよ真っ赤な 陽が昇る
倅 一番船をこげ

二番の歌詞における祭りは「大漁祭り」であり、海の男たちが豊漁を海の神に感謝する祭りが描写されている。

一番の歌詞のように季節がはっきりと分かる描写はないが、海での祭りや神事は一般的に夏から秋にかけて行われることが多い。

この歌では、具体的な特定の祭りがモデルになっているわけではなく、漁業に取り組む海の男たちの心意気や勇ましさが抽象的に表現されているように感じられる。

これは一番の歌詞についても同様で、日本人の祭りに対する思い入れや情熱・精神、八百万の神に対する畏敬の念・感謝の思いなどが、大まかな表現の歌詞に溶け込んだ描写となっている。

締めの歌詞

北島三郎『まつり』締めの歌詞を次のとおり引用する。

燃えろよ 涙と汗こそ 男のロマン
俺もどんとまた 生きてやる
これが日本の 祭りだよ

<引用:北島三郎『まつり』(作詞:なかにし礼)締めの歌詞>

最後の「これが日本の祭りだよ」の部分については、「日本」の部分を差し替えて替え歌のようにして歌われることがよくある。

例えば、平成最後の第69回NHK紅白歌合戦では「これが平成の祭りだよ」と歌われ、菊花賞でキタサンブラックがG1初制覇を果たした際には、「これが競馬の祭りだよ」と替え歌で京都競馬場を沸かせた。

令和の時代に入り、年齢的にも北島三郎がテレビ上で『まつり』を歌唱するシーンはもう見られないかも知れないが、もし機会があるのであれば、「これが令和の祭りだよ~♪」と替え歌で高らかに『まつり』歌い上げる北島三郎の姿を拝見したいものだ。

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