秋の夜半 あきのよわ 歌詞の意味

ウェーバー『魔弾の射手』序曲が日本の明治唱歌に

『秋の夜半』(あきのよわ)は、歌人・国文学者の佐々木 信綱(佐佐木 信綱/1872-1963)作詞による明治唱歌。1910年(明治43年)に中学唱歌として発表された。

メロディの原曲は、ドイツの作曲家ウェーバー(Carl Maria von Weber)によるオペラ『魔弾の射手』(まだんのしゃしゅ)で流れる序曲

ちなみに、讃美歌『主よ み手もて』も同じメロディで歌われる。

歌詞の内容は、澄んだ秋の夜空に月が白く清らかに輝く中、雁の群が空を舞うのを眺めながら、一人物思いにふける人物の物憂げな心境が描写されている。

佐々木 信綱は歌人としての活動の他、全国の小中学校・高校の校歌の作詞も手掛けているほか、いくつかの童謡・唱歌の歌詞も創作しており、今日では唱歌『夏は来ぬ』が特に有名。

【YouTube】秋の夜半/島田児童合唱団カナリヤ

歌詞 『秋の夜半』

秋の夜半(よわ)の み空澄みて
月のひかり 清く白く
雁(かり)の群の 近く来るよ
一つ二つ 五つ七つ

家をはなれ 国を出でて
ひとり遠く 学ぶわが身
親を思う 思いしげし
雁の声に 月の影に

歌詞の意味・補足

「夜半(よわ)」とは、夜がすっかりふけて、人々が寝静まったころ。夜の一二時から二時ごろを意味する。

「み空」とは、和歌や俳句で用いられる空の美称。御空。

「思いしげし」の「しげし(繁し)」とは、「多い、たくさんある」または「絶え間がない、しきりである」の意味。

「月の影」とは、月の光、または月の姿のこと。

秋に飛来する渡り鳥・雁

『秋の夜半』の歌詞で繰り返し登場する渡り鳥・雁(がん、かり)は、秋頃に北海道宮島沼や宮城県伊豆沼などに飛来する冬鳥。

日本ではマガン、カリガネ、ヒシクイなどが生息し、翌春の三月頃にまた飛び去っていく。生息数は世界的に減少しており、日本ではマガンは国の天然記念物に指定されているほか、カリガネ・ヒシクイは環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されている。

秋に飛来することから、雁は俳句・詩歌などで秋の季語として使われる。江戸時代の俳諧師・小林一茶(こばやし いっさ/1763-1828)は、秋に外国から飛来した雁の群れを見て、次のような句を詠んでいる。

「けふからは 日本の雁ぞ 楽に寝よ」

関連ページ

夏は来ぬ 歌詞の意味
『秋の夜半』を作詞した佐々木 信綱による有名な夏の歌
ウェーバー『魔弾の射手』序曲
日本ではこのメロディに合わせて『秋の夜半』(あきのよわ)を歌う
讃美歌『主よ み手もて』
ウェーバー『魔弾の射手』序曲のメロディで歌われる日本の賛美歌。オリジナルの歌詞は、19世紀スコットランドの賛美歌『Thy way, not mine, O Lord』。
秋の童謡・唱歌・日本の歌
『もみじ』、『ちいさい秋みつけた』、『虫のこえ』など、日本の秋をテーマとした民謡・童謡、秋に歌われる唱歌など、秋に関連する日本のうたを特集。
日本の民謡・童謡・唱歌
子供から大人まで親しまれる有名な童謡・唱歌、日本の四季を彩る春夏秋冬・季節の歌、わらべうた、地元の民謡・ご当地ソングなど