ブリティッシュ・グレナディアーズ
The British Grenadiers

イギリス陸軍を象徴する伝統的な軍歌・行進曲

『ブリティッシュ・グレナディアーズ The British Grenadiers』は、17世紀頃から歌われているイギリス軍歌・行進曲。作詞・作曲者不明。『英国擲弾兵』とも表記される。

「グレナディア」とは、投擲(とうてき)爆弾「グレネード」を扱う擲弾兵(てきだんへい)の意味だが、ここでは兵種ではなく連隊名・称号として用いられている。

グレナディア・ガーズ(Grenadier Guards)

写真:グレナディア・ガーズ(Grenadier Guards)と対面するアメリカのトランプ大統領とプリンス・オブ・ウェールズ(出典:Wikipedia)

イギリス軍を象徴する伝統的な行進曲であり、日本でも、イギリス陸軍の戦車が登場するアニメや、珍兵器パンジャンドラムを扱った動画など、イギリス軍のテーマソング的なBGMとして頻繁に用いられている。

【YouTube】The British Grenadiers fife and drum

【YouTube】歌唱付き ブリティッシュ・グレナディアーズ

歌詞の意味・和訳

1.
Some talk of Alexander,
And some of Hercules
Of Hector and Lysander,
And such great names as these.

ある者は語る アレクサンダー
ヘラクレス、 ヘクトル、リュサンドロス
このような偉人たちの名前を

But of all the world's great heroes,
There's none that can compare
With a tow, row, row, row, row, row,
To the British Grenadier.

だが世界の偉大な英雄といえど
英国擲弾兵に比する者なし

2.
Those heroes of antiquity
Ne'er saw a cannon ball
Or knew the force of powder
To slay their foes withal.

古代の英雄は砲弾を知らず
敵を粉砕する火薬の力も知らない

But our brave boys do know it,
And banish all their fears,
Sing tow, row, row, row, row, row,
For the British Grenadier.

だが我らの勇敢なる兵士は知っている
恐れもすべて払いのける
英国擲弾兵に歌声を捧げよ

3.
Whene'er we are commanded
To storm the palisades
Our leaders march with fusees,
And we with hand grenades.

陣地を急襲せよと命が下れば
隊長は信管を手に
我らは手りゅう弾を手に進みゆく

We throw them from the glacis,
About the enemies' ears.
Sing tow, row, row, row, row, row,
The British Grenadiers.

斜堤から投擲する
敵の耳近くへ
歌え 英国擲弾兵

4.
And when the siege is over,
We to the town repair
The townsmen cry, "Hurra, boys,
Here comes a Grenadier!

包囲が終わり 街を修復する
街の住人は叫ぶ フレー!お前たち
英国擲弾兵がやって来たぞ!

Here come the Grenadiers, my boys,
Who know no doubts or fears!
Then sing tow, row, row, row, row, row,
The British Grenadiers.

英国擲弾兵がやって来た
迷いも恐れも知らぬ奴らだ
さあ歌え 英国擲弾兵

5.
Then let us fill a bumper,
And drink a health to those
Who carry caps and pouches,
And wear the louped clothes.

盃を満たし 健康に乾杯しよう
軍帽軍服に身を包んだ者たちに

May they and their commanders
Live happy all their years
With a tow, row, row, row, row, row,
For the British Grenadiers.

兵士・司令官らに幸せあれ
英国擲弾兵のために

偉人について

歌詞の冒頭に登場する4名の偉人・英雄について若干補足。

アレクサンダーは、アレクサンドロス大王として知られる古代ギリシャのアレクサンドロス3世(イスカンダル)。

ヘラクレスは、ギリシア神話における半神半人・最大最強の英雄。

ヘクトルは、トロイア勢最強の戦士として知られるギリシア神話の英雄。

リュサンドロスは、古代ギリシアの都市国家スパルタの将軍・提督。海戦でアテナイ艦隊を撃破した。

グレナディア・ガーズ(Grenadier Guards)とは?

グレナディア・ガーズ(Grenadier Guards)は17世紀中ごろに創設されたイングランドの近衛歩兵連隊。

近衛歩兵第一連隊は海兵隊としても活躍しており、ナポレオン戦争やクリミア戦争、第二次世界大戦、そしてイラク戦争に至るまで、イギリスが参戦した戦争の殆どに従軍している。

バッキンガム宮殿前を行進するグレナディア・ガーズ

写真:バッキンガム宮殿前を行進するグレナディア・ガーズ(出典:Wikipedia)

「グレナディア Grenadier」が擲弾兵(てきだんへい)を意味することから、グレナディア・ガーズは「近衛擲弾兵連隊」、「擲弾兵近衛連隊」等と訳されることも多いが、イギリスにおけるこの例では「グレナディア」は兵種そのものではなく「称号」としての意味合いが大きい。

実際、「グレナディア」の称号は、1815年6月の「ワーテルローの戦い Battle of Waterloo」の戦功を称えるために授けられたもので、それ以前は「ファースト・ガーズ First Guards」や「First Regiment of Foot Guards(第一近衛歩兵連隊)」などと呼ばれていた。

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