葦笛(あしぶえ)の踊り
バレエ組曲「くるみ割り人形」より

チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)

『葦笛(あしぶえ)の踊り(Danse des Mirlitons)』は、ロシアの作曲家チャイコフスキーによるバレエ音楽『くるみ割り人形(The Nutcraker)』の中の曲。

童話「くるみ割り人形と はつかねずみの王様」を原作とするバレエ作品「くるみ割り人形」の劇中歌。

写真:ENTARTETE MUSIK by Gavin Plumley

クリスマスの夜、くるみ割り人形は王子に姿を変え、少女クララをお菓子の国に招待した。お城ではお菓子の精たちがクララを歓迎するため、中国の踊り、アラビアの踊り、ロシアの踊りなど、国際色豊かで華やかな踊りを次々と披露していった。

『葦笛(あしぶえ)の踊り』は、『フランスの踊り』、『女羊飼いの踊り』とも呼ばれる。なぜ「フランス」が関係してくるかピンとこない方もいるだろう。「葦」と「フランス」の関係は、意外に様々な場面で確認することができる。

【YouTube】葦笛(あしぶえ)の踊り

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葦(あし・リード)とフランスとの関係は?

『葦(あし)』とは、温帯から熱帯にかけての湿地帯に分布する背の高いイネ科の草の一種。「アシ」が「悪し」に通じるのを忌んで、関西では「ヨシ」とも呼ばれる。

葦は、南フランス(南仏)に広く分布している。茎の中は竹のように中空で、笛として加工するのに都合が良い。フランスでは、葦で作った笛(葦笛)を「ミルリトン(Le mirliton)」と呼んでいる。

木管楽器のリードは南仏産が上質?

クラリネットやオーボエ、サクソフォーン(サックス)などに用いられるリードは、まさに「葦(リード/英:Reed)」を指している。リードのブランドとしては、フランスのヴァール地方で採れた葦(リード)が最上とされるそうだ(異論もあるらしいが)。

同じ楽器を用いても、リードによって音や演奏スタイルが変わるという。そのため、リードの選定は演奏者に任されている。音の明瞭さや音量の出しやすさに関係し、良いリードは鳴らし込むと音が軽くなり、悪いリードは最初こそ良い音がしてもすぐダメになるそうだ。

フランス南部のリゾート地カンヌと葦との関係は?

葦(あし)は、ラテン語で「canna(カンナ)」,ギリシア語で「kanna(カンナ)」と呼ばれる。

南フランスには、昔から葦(あし)が一面に生い茂る沼地が多く、ある町では「葦(カンナ)」と呼ばれる地名がつけられたという。その町とは、今日の「カンヌ国際映画祭」で有名なフランス南東部のリゾート地「カンヌ(Cannes)」である。

カンヌは、中世から19世紀頭までは、農業や水産業を中心とする村落だった。1834年、イギリスのブルハム卿が、イタリアへの途上にこの地方に滞在した。すると、国内外の貴族がこぞってこの地域に別荘を建てはじめ、次第に高級リゾート地へと発展していったという。

フランスの哲学者パスカル「人間は考える葦である」

フランスの哲学者パスカル(Blaise Pascal/1623-1662)は、晩年に書き残した断片集『パンセ(pensée/Pensées)』の中で、「人間は考える葦である」という有名な言葉を残している。

人間は、自然の中では葦(あし)のように矮小な生き物にすぎないが、考えることによって宇宙を超える、というパスカルの哲学者としての宣言を表している。

フランスの童話『オークと葦(Le chêne et le roseau)』

イソップ童話『北風と太陽』で有名なフランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ(Jean de la Fontaine/1621-1695)は、葦(あし)を扱った作品『オークと葦(Le chêne et le roseau)』を残している。

堅い樫の木(オーク)は弱くて細い葦(あし)をバカにしていたが、強風の前にオークが根こそぎ倒れてしまったのに対し、葦(あし)は倒れないように自分から折れ、根を守ったというストーリーだ。

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