魔女の宅急便 舞台のモデルは?

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スタジオジブリ公式サイトの解説によれば、宮崎駿監督による長編アニメ映画「魔女の宅急便」の舞台のモデルとして「参考にした」場所の一つに、スウェーデンのストックホルムとヴィスビー(ヴィスビュー)の町の名前が挙げられている。

魔女の宅急便 サントラ音楽集

ジャケット写真:魔女の宅急便 サントラ音楽集

クングスガータンのアーチ

まずストックホルムについては、実際にどの場所なのか明示されてはいないが、特徴的で分かりやすいシーンとしては、主人公のキキが魔女の修行のため初めてコリコの街にやって来た時に、道路の上にかけられた石造りのアーチの下をホウキに乗ってくぐっていく場面が思い出される。

この場面のモデルとしては、ストックホルムの中心街にある大通り「クングスガータン(Kungsgatan)」の道路に架かる陸橋(上写真)が、その場所だと想像できる。クングスガータンは英語的に表記すれば「キングス・ストリート」、つまり「王様通り」といった意味合いとなるメインストリートの一つ。

ちなみに、クングスガータンがストックホルムでマクドナルドが一号店をオープンさせた場所として知られ、同店はスウェーデンのデザイン事務所クラーソン・コイヴィスト・ルーネ(Claesson Koivisto Rune)が店舗デザインを手がけたオシャレな外観・内装が施されている。

時計台はストックホルム市庁舎?

映画「魔女の宅急便」のストーリー展開において重要な役割を果たす大きな時計台のモデルの一つとしては、おそらくストックホルム市庁舎(Stockholm City Hall)の名前が挙げられるのではないか。

実際の市庁舎には映画のような時計盤はなく、建物の中を道路も通っていないが、赤茶色のレンガ造りでどっしりとした外観が全体として良く似ており、映画で登場する時計台のデザインに大きな影響を与えていることは想像に難くない。

ちなみにストックホルム市庁舎は、ノーベル賞の晩餐会が行われる場所として知られ、建物内部では受賞パーティーが行われる黄金の間が特に有名。話によれば、早稲田大学の大隈講堂のデザインは、この市庁舎の影響を強く受けているそうだ。

旧市街ガムラスタンと「魔女の宅急便」

ストックホルム旧市街ガムラスタン(Gamla stan)の街並みも、映画「魔女の宅急便」の舞台設定に大きな影響を与えている場所の一つと思われる。

特に、時計台の前の建物に囲まれた広場については、あくまでも想像だが、ガムラスタンの中心部にあるストールトルゲット(Stortorget)広場がモデルの一つとして発想の出発点となっているのではないだろうか?

ストールトルゲット(Stortorget)広場では、雑貨店やオープンカフェなどが店を連ね、上の写真の右手にはスウェーデン・アカデミー(1階はノーベル博物館)が、その裏にはストックホルム大聖堂が所狭しと立ち並び、旅行客の定番観光スポットとなっている。

映画「魔女の宅急便」では、これも想像の域を出ないが、ちょうどストックホルム大聖堂がある場所に、ストックホルム市庁舎に似た時計台がうまく配置されているような印象を受ける。

映画では、飛行船がアクシンデントで時計台にぶつかる場面が描かれるが、その飛行船の事故を聞きつけたコリコの街の人々が集まってくるカットで、上の写真の構図とよく似た街並みが登場する。

写真に写っている時計台のような塔は、ストールトルゲット(Stortorget)広場のストックホルム大聖堂。映画「魔女の宅急便」のシーンでは、時計台に激突した飛行船が描かれている。

世界遺産ヴィスビューの街並み

スウェーデンにおける映画「魔女の宅急便」舞台のモデルとしてもう一つ挙げられているヴィスビュー(ヴィスビー/Visby)は、ストックホルムの南西、バルト海に浮かぶゴットランド島(ゴトランド、/Gotland)島に建設された街並み。

ヴィスビュー(Visby)は10世紀に建設された歴史ある街であり、周りを囲む3.4kmの石の壁「Ringmuren 輪壁」は、ほぼ当時の姿を完全にとどめているという。ハンザ同盟都市の歴史的な町並みとして、1995年にユネスコの世界遺産へ登録された。

街並みの屋根は赤いレンガ色をしており、映画「魔女の宅急便」でも上空を飛ぶキキが描かれるシーンで、その屋根の色を確認することができる。

なお、映画の舞台のモデルはスウェーデンに限らず、クロアチア、ポルトガル、アイルランド、パリ、ナポリなど、様々な国の風景を参考にしているという。赤い屋根の街並みに関して言えば、ヴィスビューよりもより映画に近い景色が他の国にあるのかもしれない。

実際の映画のシーンとまったく同じ景色に遭遇することはないとは思われるが、海外旅行などで北欧を訪れる際は、是非ともストックホルムの旧市街などに立ち寄られ、映画のワンシーンを思い出しながら観光を楽しんでみるのも面白いかもしれない。

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