フランス革命とフランス国歌

18世紀後半フランスの歴史

ルイ16世「暴動か?」
「C'est une révolte?」

側近「いいえ陛下、これは暴動ではありません、革命です!」
「Non sire, ce n'est pas une révolte, c'est une révolution! 」

フランス革命と国歌誕生の歴史

1789年7月14日、ヴェルサイユ宮殿でバスティーユ襲撃の知らせを受けたルイ16世(右挿絵)は、側近とこんなやり取りを交わしたという。フランス革命の勃発である。

当時のフランスは、ブルボン朝による絶対君主制の支配(アンシャン・レジーム)が続いていた。特権階級である聖職者と貴族は免税や年金などが認められ、第三身分の平民は圧政に苦しんでいた。

社会契約説で知られるルソーやヴォルテールなどの啓蒙思想家らの影響や、基本的人権と革命権に関する前文を掲げた1776年7月4日のアメリカ独立宣言などの歴史的変革を目の当たりにしたフランスでは、アンシャン・レジームに対する批判はついに革命を引き起こすまでに高まっていたのだ。

民衆を導く自由の女神(1830年、ウジェーヌ・ドラクロワ)

革命の騒乱はフランス全土に飛び火し、国民議会は8月4日に封建的特権の廃止を宣言。ついに同月27日、自由と平等、人民主権、言論の自由、所有権など17条からなるフランス人権宣言が採択された(ラファイエットが起草)。

ちなみにこの翌年(1790年)には、革命軍の総司令官ラファイエットが提案した青(藍)、白、赤の三色旗(トリコロール/Tricolore)が採用され、1794年に現在のフランス国旗となっている。色の意味としては、青は自由、白は平等、赤は博愛(友愛)を表すとの説もあるが、正式には白がフランス王家の色、青と赤はパリ市の紋章の色で、パリと王家との和解を象徴しているという。

なおラファイエット(右挿絵)は、1776年のアメリカ独立戦争において、フランスに支援を求めたベンジャミン・フランクリンに応え、19歳で義勇兵として渡米し米仏連合軍に参加。

イギリス軍を包囲・殲滅し、アメリカ独立戦争を事実上終結させた決定的な戦闘「ヨークタウンの戦い(Battle of Yorktown)」において大きな活躍を見せた。帰国後は「新大陸の英雄」と称えられ、一躍名声を得た。

ラファイエットはアメリカ独立革命とフランス革命の両革命における活躍により「両大陸の英雄」と讃えら、2002年にはアメリカ合衆国における名誉市民に選ばれている。

脱走を企てたルイ16世 ~ヴァレンヌ事件~

フランス人権宣言から2年後の1791年、過激化する一方の革命の波を恐れたルイ16世は、マリー・アントワネット王妃の実家であるオーストリアへ逃亡しようと企てた。6月20日、ブルジョワに扮したルイ16世一家はパリを脱出するが、フランス国境手前のヴァレンヌで革命市民に捕縛されてしまう。いわゆるヴァレンヌ事件の発生である。

上挿絵: ブルジョワに扮したルイ16世とその家族が逮捕される場面

脱出失敗の報を受け、妹マリー・アントワネットや甥たちの身を案じたハプスブルク家のレオポルト2世(右下挿絵)は激しく動揺し、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世と軍事同盟を締結。「ルイ16世の自由と地位を保証しなければ必要な武力を行使する」とのピルニッツ宣言をフランス革命軍に対して発した。

実はこのピルニッツ宣言は威嚇の意味合いが大きく、実際に開戦する意志も余裕もなかった。しかし革命軍にはこれが「最後通牒」であると誤解されて火に油を注ぐ結果となってしまう。

さらに、既にフランスから脱出していた亡命貴族が喜び勇んでこれに便乗し、「ルイ16世に危害を加えたら、外国列強の軍隊がパリを粉砕させる」と脅迫を加えたため、いよいよ革命派は激怒。

フランス国内では、国王への失望、愛国心の高揚、そして革命体制維持の必要性から、外国勢力との開戦も止む無しとする主戦派グループが台頭していったのである。

ついに革命戦争勃発 ~ラ・マルセイエーズ誕生~

1792年4月、ついて革命政府はオーストリアに対して宣戦布告し、フランス革命戦争が勃発した。プロイセン軍がフランス国境内に侵入すると、革命政府は祖国の危機を全土に訴え、それに応じてフランス各地で組織された義勇兵達がパリに集結した。

そして兵士の士気を鼓舞するために行進曲が作曲され、マルセイユから集結した義勇兵達によって歌い広められた。

同曲は、後に今日のタイトル『ラ・マルセイエーズ La Marseillaise』の名で定着。1795年7月14日に正式にフランス国歌として採用されるに至っている。

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フランス国歌『ラ・マルセイエーズ La Marseillaise』
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