どっこいしょ 意味・語源・由来

相撲や歌舞伎での掛け声?それとも修験道の六根清浄?

「どっこいしょ」の意味・語源・由来についてネットで調べていくと、大きく分けて二つの有力説が存在することが分かる。

一つは、相撲や歌舞伎での掛け声「どっこい」に由来する説、もう一つは、修験道(山岳仏教)の山伏・行者らが唱える「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」を語源と考える説だ。

どっこいしょ 意味・語源・由来

ネットやテレビ番組では、意外性やインパクトの高さを考慮して、後者の「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」を「どっこいしょ」の語源として紹介する機会が多いように見受けられる(前者では絵的に面白いネタにしにくいから?)。

果たして、「どっこいしょ」はどちらに由来する言葉なのだろうか?それぞれの説について簡単にまとめてみた。

なお、筆者の私見では、前者の「相撲・歌舞伎での掛け声」説が自然に感じられる。理由は後述する。

相撲・歌舞伎の「どっこい」説

相撲・歌舞伎の掛け声「どっこい」については、こちらのページ「どっこい 意味・語源・由来」でまとめているので、ここでは「どっこいしょ」と関連する点について簡単に触れていく。

靖国神社 奉納大相撲 相撲甚句

写真:靖国神社 奉納大相撲 相撲甚句(出典:Wikipedia)

岩波新書「ことばの由来」によれば、「どっこいしょ」の語源は「どっこい」+「しょ」であると次のように解説されている。

ドッコイを強めて、ドッコイショとショを付けるようになったのは多分、明治以後のことで、相手がいない一人だけのときでも力を入れるときには相手を意識して、「どっこいしょ」というようになった。

「ショ」はヨイショ、コラショの「ショ」と同じく掛け声である。民謡などの囃しことばでも、ドッコイショとショを添えていう。

<引用:岩波新書「ことばの由来」

民謡の囃子ことばについて補足すると、例えば関西の夏祭り・盆踊りの歌として有名な『江州音頭 ごうしゅうおんど』では、「♪よいと よいやまか どっこいさのせ♪」のように、「どっこい」の直後にサ行の音が続いており、「どっこいしょ」との由来的な近さが感じられる。

また、同じく関西の『河内音頭 かわちおんど』では、「♪イヤコラセー ドッコイセー♪」の囃子ことばが印象的に使われており、「どっこい」+サ行の文字の相性の良さをうかがわせる。

仮にこのような「どっこいさ」や「どっこいせ」が後に「どっこいしょ」に変化したとしても、それは発音上ごく自然な流れであると思われる。

六根清浄(ろっこんしょうじょう)説

山へ籠もって厳しい修行を行う修験道(しゅげんどう)では、修行者の山伏(やまぶし)らが「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」の掛け念仏を唱える。

写真:修験道の山伏(出典:Wikipedia)

六根とは、人間の五感と意識を意味し、それらの執着を断ち切って心を清らかな状態にすることを「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」という。

この「六根清浄」は修行者の行者らによって登山の際の掛け声として連呼される。険しい山道を力を振り絞って登る際の掛け声であることが、「どっこいしょ」の語源と考えられる一つの大きな理由になっているようだ。

意外性やインパクトでは「六根清浄」説だが…

ネット上の記事やテレビ番組などで「どっこいしょ」の語源を取り上げる場合、修験道の「六根清浄」説の方が絵的に面白く、「どっこい+しょ」説よりも意外性やインパクトが大きい。

そのため、「六根清浄」説の方がウケが良く、どうしても取り上げられる機会が多くなってしまうのは無理もない。「どっこい+しょ」説は意外性もなく地味だ。

だが、「どっこい」という文字が前方一致していること、「どっこい」という言葉は夏祭りや盆踊りなどで広く一般庶民に普及している言葉であること、などを考えれば、「どっこいしょ」の語源は「どっこい+しょ」説の方が自然な推測のように思われる。皆さんはどうお考えだろうか?

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