森のくまさん 歌詞の意味 原曲の和訳

アメリカのスカウトソングを原曲とする日本の童謡

「ある日 森の中 くまさんに出会った」が歌い出しの『森のくまさん』は、アメリカのボーイスカウトで1960年代頃に歌われていたスカウトソング『The Other Day, I Met a Bear』を原曲とする日本の童謡。

実は、原曲のスカウトソング自体も、1953年リリースの楽曲『Sippin' Soda(ソーダを飲みながら)』の替え歌。ルーツは1894年までさかのぼれる。

このページでは、まず原曲のスカウトソング『The Other Day, I Met a Bear』英語の歌詞の意味・和訳・YouTube動画を掲載する。

その後で、謎が多い日本語の『森のくまさん』(作詞:)について、歌詞の内容、意味・解釈・考察などを簡単にまとめてみたい。

【試聴】The Other Day, I Met a Bear

原曲の歌詞・日本語訳(意訳)

The other day,
I met a bear,
A great big bear,
A way up there.

ある日
クマと出くわした
かなりデカい熊に
道の途中で

He looked at me,
I looked at him,
He sized up me,
I sized up him.

クマは僕を見て
僕も熊を見た
クマは僕を見定めて
僕も熊を見定めた

He says to me,
"Why don't you run?"
"'Cause I can see,
you have no gun."

クマは言った
逃げなくて大丈夫?
銃も無いのに

I say to him,
"That's a good idea."
"Now let's get going,
get me out of here!"

僕はクマに言った
そりゃいい考えだ
それじゃ早速
逃げるとしよう

I began to run,
away from there,
But right behind me
was that bear.

僕は走って逃げ出した
でもすぐ後ろにはあのクマが

And on the path
ahead of me,
I saw a tree,
Oh glory be.

道の先には
木があった
ああ ありがたい

The lowest branch
was ten feet up,
I'd have to jump
and trust to luck.

低い枝でも3メートル
運にまかせて大ジャンプ

And so I jumped
into the air,
But that branch
away up there.

体は宙を舞ったけど
あの枝まではとどかない

Now don't you fret,
and don't you frown,
I caught that branch
on the way back down.

心配しないで
機嫌を悪くしないで
倒れかけながらも
なんとか枝をつかめたんだ

That's all there is,
there ain't no more,
Unless I meet
that bear once more

僕の話はこれでおしまい
これ以上は何もないよ
またどこかであのクマに
出くわさない限りね

<注:様々な歌詞・替え歌が存在する。歌詞は一例。>

日本語の訳詞は?

『森のくまさん』日本語の歌詞は、原曲の英語の歌詞と比べてどのような違いがあるのだろうか?

原曲との比較のために、馬場 祥弘の作詞による歌詞を次のとおり引用して、その内容を確認してみたい。

ある日 森のなか
クマさんに 出会った
花咲く 森の道
クマさんに 出会った

クマさんの いうことにゃ
お嬢(じょう)さん おにげなさい
スタコラ サッササノサ
スタコラ サッササノサ

ところが クマさんが
あとから ついてくる
トコトコ トコトコと
トコトコ トコトコと

お嬢さん お待ちなさい
ちょっと 落とし物
白い 貝がらの
ちいさな イヤリング

あら クマさん ありがとう
お礼に 歌いましょう
ラララ ラララララ
ラララ ラララララ

ある日クマに遭遇するという点は一致しているが、登場人物やストーリー展開がまったく異なっている。

クマから逃げることを勧められるという点は同じだが、日本語版では、なぜかその後で落とし物を拾ってもらって、クマとお嬢さんが仲良く一緒に歌うという謎のハッピーエンド(エンディング)を迎える。

逃げろと言ったのは小鳥だった?

一説には、逃げろと言ったのはクマではなく小鳥だったという証言も存在する。1975年に全音楽譜出版社から発行された『森のくまさん』の楽譜では、2番の歌詞で、クマではなく「小鳥さん」が逃げろと忠告しているという。

証言者は、東京都の山田美智子さん(幼稚園教諭)。昭和60年10月に発行されたチャイルド本社「季刊 どうよう」第三号には、会員からの提言として次のような証言が掲載されている。

Webサイト「池田小百合なっとく童謡・唱歌」より次のとおり引用する。

十五年以前に覚えたものは“小鳥の言うことにゃ”だった。鬼ごっこではあるまいし、熊が自分で逃げろといっておいて追いかけるのは不自然。詩の内容からいって小鳥であるべきと思うのに、どの曲集も熊となっているのは本当に残念です

昭和60年(1985年)に発行された雑誌で「15年前」ということは、1970年当時の楽譜では、クマではなく小鳥が「お逃げなさい」と歌う歌詞になっていたことになる。

この証言者は、クマではなく小鳥になっている当時の楽譜を入手できたという。チャイルド本社「季刊 どうよう」に掲載された続報は次のとおり(Webサイト「池田小百合なっとく童謡・唱歌」より引用)。

前回の提言者山田美智子さんから、お手紙とともに"小鳥"になっている楽譜(全音楽譜出版社・昭和50年刊)が届けられました。この楽譜集は改訂を重ねて現在も出版されていますが、現在のものは"熊"に変わっています。出版元では「テレビや教科書と歌詩が違うとクレームがついて改訂した」といっています

これらの証言が事実だとすれば、自らを作詞者だと主張する馬場 祥弘(ばば よしひろ)氏の立場は危ういものになる。

『森のくまさん』の日本語歌詞は、本当に馬場氏が作詞したものなのだろうか?

作曲者と主張していた馬場氏

実は馬場氏は当初、アメリカの楽曲であるこの曲を自分が作詞だけでなく作曲者でもあると主張していた。

馬場氏は、当時作者不詳だった海外由来の楽曲に対して、自分の著作物として片っ端からJASRAC(日本著作権協会)に登録していたという。

この点については、1970年代にNHK「みんなのうた」で『森のくまさん』編曲を担当した玉木宏樹氏が、馬場氏について貴重な証言を残している。

玉木宏樹「贋作・盗作 音楽夜話」(2010年/北辰堂出版)より次のとおり引用する。

実は前々からJASRAC関係では札つきの要注意人物で、作者不詳の曲に変に詳しく、かたっぱしからそれらを書きつづった大学ノートを見せては、人に「この曲の作者は自分だ」と触れまわっていたという、その世界では有名な人物で、毎回JASRACに登録しようとしては、門前払いにあっていたというのです。

馬場氏による主張が認められ、当初は『森のくまさん』が馬場氏の作詞・作曲によるオリジナルな楽曲であるとしてJASRACに登録されていた。

NHKディレクターらは激怒

これに対し、『森のくまさん』を民間伝承曲と知っていた当時のNHK「みんなのうた」ディレクターらは激怒。

懸命に証拠を集め、原曲がアメリカの楽曲であることを証明し、作曲者としての馬場氏の登録を抹消させることに成功した。

当時のディレクターと玉木宏樹氏の会話を、玉木宏樹「贋作・盗作 音楽夜話」(2010年/北辰堂出版)から次のとおり引用する。

玉木ちゃん、ついに見つけたよ。あの曲の原譜、あれはやっぱりアメリカ民謡だったんだよ。すぐ見せるから今後の対策を協議しよう

しかし歌詞については、いったん登録されてしまった権利をはく奪するのに十分な証拠を集められず、現在も馬場氏が作詞者として当時のままJASRACに登録が残っている状態となっているという。

何やらいわくつきの楽曲となった『森のくまさん』。「小鳥」が登場していた全音楽譜出版社の古い楽譜が証拠として提出されれば、今後作詞者についての権利関係が一変する可能性もありそうだ。

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