仕込み客 なぜサクラ? 意味・由来・語源

客の振りをしてお店や商品の評価を裏で支える盛り上げ役

お店やイベント、舞台やライブ、コンサート、マッチングアプリなどで「サクラ」という場合、自然な客の振りをして、見た目の客入りを良くしたり、場を盛り上げたり、商品を率先して購入(する振りを)したりする「仕込み客」(偽客)のことを意味する。

一体なぜ、仕込み客のことを「サクラ」と呼ぶのだろうか?その理由や意味合い、語源・由来について、簡単にまとめてみた。

なお、春に花をつける桜の木がなぜ「さくら」と呼ばれるかについては、こちらの「さくら 意味・語源・由来 桜の木 春の花」で解説している。

語源・由来

まず、仕込み客の「サクラ」の語源・由来については、春に花を咲かせる桜の木であることはほぼ争いがないと思われる。

問題は、なぜ仕込み客を表すのに桜の木や花が用いられるのかという点。

この点について、Wikipediaでは次のように説明されている。

江戸時代に芝居小屋で歌舞伎を無料で見させてもらうかわりに、芝居の見せ場で役者に掛声を掛けたりしてその場を盛り上げること、またはそれを行う者のことを『サクラ』といった。桜の花見はそもそもタダ見であること、そしてその場限りの盛り上がりを『桜がパッと咲いてサッと散ること』にかけたものだという。

<引用:Wikipedia>

この解説がどの書籍の記述に基づいているのか、その客観的な資料について明記されていなかったので、その真偽について検証ができないが、同様の説明は他のブログやWebサイトでもよく見かけるので、おそらくはこれが一般的な解説なのだろう。

ただ、「桜の花見はそもそもタダ見」という点については、桜に限らず梅や桃の花でも同じなので、理由付けとしては今一つピンとこない。

「打ち上げ花火」だってタダで見られるし、「パッと咲いてサッと散る」という点も、一週間前後咲き続ける桜の花と比べて、「打ち上げ花火」の方が継続時間的にイメージが近い。

咲かない所に花を咲かせる

思うに、「無料で見られる」「サッと散る」という点は、仕込み客によるサクラ行為の本質の説明としては若干ピントがずれているように感じられる。

では、「サクラ行為の本質」とは一体なんだろうか?筆者の私見では、それは「本来なら咲かない所に花を咲かせる」という点ではないかと考えている。

だが江戸時代において、「本来なら咲かない所に花を咲かせる」行為と桜の花を結びつけるものなんてあっただろうか?

あったとすれば、それはあのおとぎ話しかない。そう、今日の日本でも有名な『花咲かじいさん』のお話だ。

花咲かじいさん説

花咲かじいさん』または『花咲か爺(はなさかじじい)』は、室町時代末期から江戸時代初期にかけて成立した日本の民話。

心優しいお爺さんが、夢のお告げに従い、桜の枯れ木に灰を撒くと、咲くはずのない枯れ木に花が咲いて満開になった。

「枯れ木に花を咲かせましょう」のセリフはあまりにも有名。そこへたまたま通りがかった大名が感動し、お爺さんに褒美を与える。

はなさかじいさん 絵本

咲くはずのない枯れ木に花を咲かせた「花咲かじいさん」は、仕込み客として場を盛り上げるサクラの役割に相通ずるものがある。

お爺さんが咲かせた花はまさに「桜」。私見では、「花咲かじいさん」的な役割をする仕込み客だからこそ、その隠語として「サクラ」が用いられたのではないかと想像している。みなさんはどうお考えだろうか?

現代のサクラ行為

現代の日本では、仕込み客としての「サクラ」行為は様々な場面やサービスに渡って存在している。話題になりやすいネット関連のサクラ行為についていくつか見てみたい。

出会い系サイト・マッチングアプリ

恋愛・結婚などの出会いを提供する出会い系サイト・マッチングアプリ・結婚相談所などにおいて、主に女性の利用者・登録者を実態よりも多く見せるために、女性のサクラが動員される場合がある。

ツイッターの「フォロワー」「いいね」吊り上げ

ツイッター(Twitter)で人気者のフリをしたり自称有名人としての体裁を整えるために、業者にお金を払ってフォロワーや「いいね」を購入して水増しするのも、広い意味でのサクラに該当すると思われる。自称インフルエンサーの常套手段。Instagram(インスタグラム)や TikTok(ティックトック)でも同様の事が起こり得る。

YouTube動画の再生回数・登録者吊り上げ

YouTube(ユーチューブ)の動画再生回数やチャンネル登録者を業者から購入して水増しするのも、広い意味でのサクラと言えるだろう。これも自称インフルエンサーのお家芸。

飲食店レビュー・口コミ・高評価

飲食店の美味しいお店・評判の良いレストランなどのグルメ情報サイトにおいて、自分の店の評価や口コミを良くするため、第三者を雇って高評価・良い口コミを投稿させるのも、一種のサクラに含まれると思われる。やらせ・ステマとも重なる。

ネットショップのサクラレビュー

Amazon(アマゾン)などのネットショップで、店とは無関係の自然な購入者・利用者の振りをして、店から依頼を受けて商品レビューやショップレビューに高評価や良い口コミをつけるサクラ行為も問題化している。

同じ人物が複数の商品にヤラセ評価をつけていることが多く、それを見破る「サクラチェッカー」なるWebサービスも存在する。

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