
1779年に出版された「オリバー讃美歌集(Olney Hymns)」の中で登場して以来、今日のメロディーに定着するまで、アメージンググレースの歌詞はその当時人気のあったメロディーに合わせて様々な形で歌われました。例えばイギリスで最初に当てられたメロディーは「Hephzibah」といわれ、19世紀初頭のアメリカ東海岸では「Loving Lambs」という曲がこの歌詞に用いられていたそうです。
讃美歌系の歌詞に様々なメロディが付けられることはよくあるケースで、例えばアヴェマリアなどはその典型としてよく知られています。ただ、アヴェマリアの場合は、曲をつけた方々が非常に著名な作曲家ということもあって、比較的数多くのメロディーが今日まで残されており、それぞれが素晴らしい曲であることは皆さんもご存知の通りです。
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これらの曲は、今日知られるアメージンググレースのメロディーのルーツではなく、ただ同じ歌詞に当てはめられたというだけのつながりなのですが、それでは、現代までに定着しているメロディーは、いつジョンニュートンの歌詞に出会ったのでしょうか?
まず、シンシナティで1829年に出版された歌集「コロンビア・ハーモニー(Columbian Harmony (Cincinnati/1829)」の中で、二つの異なる歌詞に対して、今日のアメージンググレースのルーツと思われるメロディが用いられています。
一つ目は「Gallaher」というタイトルで、ウェスレー教会(Wesleyan Church)の賛美歌として歌われていたそうです。この「ウェスレー」とは、英国の神学者・聖職者でメソジスト教派の創始者ジョン・ウェスレー(John
Wesley/1703-1791)を指します。ちなみに、長崎県諫早市には学校法人鎮西学院「長崎ウエスレヤン大学(Nagasaki
Wesleyan University)」があります。
二つ目は「St Mary's」というタイトルで、アイザック・ワッツ(Isaac Watts/1674-1748)の歌詞につけられていました。アイザック・ワッツはイギリス南部の港町サウスハンプトン(Southampton)生まれのイギリス人で、750曲以上の賛美歌を創作した多産な作詞家として知られ、「英国賛美歌の父」とも呼ばれています。その中の数多くの賛美歌が今日まで歌われ続けており、中でも、クリスマスソング「Joy To The World(もろびとこぞりて)」が彼の作品として日本でも有名です。
1830年、バージニア・ハーモニー(Virginia Harmony)という賛美歌集の中のひとつに、「Harmony Grove」という曲がアイザック・ワッツの「There is a Land of Pure Delight」と銘打たれた歌詞に付けられているのが確認できるようです。
更に同じメロディーが、翌年の1831年にレキシントン・キャビネット(The Lexington Cabinet)という歌集に登場し、更に翌年の1832年には、歌集「The Christian's Harp」そして「Genuine Church Music」の中で、クーパー作の賛美歌「There is a Fountain Filled with Blood」の歌詞に用いられているのが確認されています。
これらはそれぞれ微妙に違うメロディーのようですが、その類似性からいずれも今日のアメージンググレースのメロディーの源流であると分析されているようです。ただ、歌詞の方はアメージンググレースとは関係のないものばかりで、メロディーだけが生涯の伴侶を求めてさまよっているような状態でした。それでは、いつこのメロディーがジョン・ニュートンの歌詞と出会うことになるのでしょうか?それは意外に近い将来のことであったようです。
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