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迎えに来たグレイハウンド号

 マネスティ氏がジョンのために向かわせたグレイ・ハウンド号(Greyhound)は、黒人を乗せるための船ではなく、金、象牙、蜜蝋などを運ぶ一般の商船でした。折角迎えが来てくれたのですが、すでにジョンを取り巻く状況はかなり改善しており、新しいボスであるウィリアムス氏の下でのビジネスも順調であったため、ジョンはグレイハウンド号に乗ろうかどうか迷っていました。彼を迷わせていたのは、故郷のイギリスで暮らす彼女の事でした。

 一方グレイハウンド号の船長は、ジョンを連れて帰ればマネスティ氏やジョンの父親から報奨金を貰えたため、「イギリスに帰れば年400ポンドの年金がもらえる」とウソまでついてジョンを説得しようとしました。「乗客扱いにするから働かなくて済む」とさえ言ったそうです。ジョンはこのウソを見抜いていたようですが、19歳で海軍に徴集されてから22歳になる今日までずっと会えていなかった彼女に会えるうれしさには変えられず、船長のウソに騙されたふりをしてグレイハウンド号に乗船しイギリスへ帰ることにしたのでした。

グレイハウンド号での長旅~「キリストに倣いて」

 ジョンを乗せたグレイハウンド号は積んでいた商品の取引を終え、1748年1月にイギリスへ向けて出発しました。帰りの道のりは700マイル以上の航路を何ヶ月も船の上で過ごさなければならない程の長旅でした。その間、彼は船に積んであったスタンホープ(Stanhope)著「The Christian's Pattern」を手にしています。

 この書籍はトマス・ア・ケンピス(Thomas a Kempis)著「キリストに倣いて(The Imitation of Christ)」をスタンホープが書き直したもので、「霊的生活の有益なる勧め」、「内的生活の勧め」、「内的慰安について」、「聖体に関する敬虔な勧告」の4部から構成され、世俗の軽視・苦行・克己・献身の勧めをその内容としています。(英訳はこちらで確認可能)。

 この頃のジョンはまったく神の存在を信じてはいませんでした。それどころか、神を信じる周りの者たちをあざ笑い、からかい、神への冒涜を繰り返していたのです。幼い頃には母親からある程度はキリストの教えを受けていたはずですが、長い間海の上で荒んだ生活を続けている内に、見えないものを信じる豊かな心はいつしか失われていたのでした。

 最初はほんの暇つぶしに何気なく読み始めたジョンでしたが、その内容に次第に興味をひかれ始めます。「神なんているわけがない。いないに決まっている。でももしこの本に書いてあることが本当だとしたら?」彼の中にわきあがってくる心の声に彼は慌てて耳を塞ぎ、また仲間との他愛のない笑い話に戻っていくのでした。しかしこの時の彼の疑問は、数ヵ月後の出来事を通してある種の確信へと変わっていくことになるのです。

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