ニシ・ドミヌス Nisi Dominus
主が家を建てられるのでなければ

アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi/1678-1741)

ヴィヴァルディ『ニシ・ドミヌス Nisi Dominus』(RV608)は、旧約聖書「詩篇(詩編)」第127篇に基づく宗教音楽(声楽曲)。

曲名は「主でなければ」を意味するが、該当する詩篇の内容から邦題は「主が家を建てられるのでなければ」とされる。

第4曲「Cum dederit」が特に有名で、2015年公開の映画「007 スペクター Spectre」のサントラとして用いられた。

ちなみに、第6曲「Beatus vir」前奏部分のメロディは、日本の歌曲『椰子の実』によく似ている(後述)。

挿絵:バシリカのあるサン・マルコ広場(作:カナレット/1730年)

【YouTube】 ヴィヴァルディ『Nisi Dominus』第4曲 "Cum dederit"

曲の構成

1. Nisi Dominus (Allegro)
主が家を建てられるのでなければ

2. Vanum est vobis (Largo)
あなたがたが早く起きるのも

3. Surgite (Presto)
苦しみのパンを食うものよ

4. Cum dederit (Andante)
主は愛するものに眠りを与えたもう

5. Sicut sagittae (Allegro)
力のある者たちの子らは

6. Beatus vir (Andante)
幸いなるかな

7. Gloria Patri (Larghetto)
栄光が父と子と精霊に

8. Sicut erat in principio (Allegro)
初めにそうであったように

9. Amen (Allegro)
アーメン

旧約聖書 詩篇 第127篇

127:1
主が家を建てられるのでなければ、建てる者の勤労はむなしい。主が町を守られるのでなければ、守る者のさめているのはむなしい。

127:2
あなたがたが早く起き、おそく休み、辛苦のかてを食べることは、むなしいことである。主はその愛する者に、眠っている時にも、なくてならぬものを与えられるからである。

127:3
見よ、子供たちは神から賜わった嗣業であり、胎の実は報いの賜物である。

127:4
壮年の時の子供は勇士の手にある矢のようだ。

127:5
矢の満ちた矢筒を持つ人はさいわいである。彼は門で敵と物言うとき恥じることはない。

日本の歌曲『椰子の実』元ネタ?

余談だが、ヴィヴァルディ『ニシ・ドミヌス Nisi Dominus』第6曲「Beatus vir」前奏部分のメロディは、日本の有名な歌曲『椰子の実(やしのみ)』冒頭部分によく似ている。

『椰子の実』作曲者の大中寅二は、東京都港区赤坂の霊南坂教会で半世紀にわたりオルガン奏者を務めていたキリスト教徒。ヴィヴァルディによる宗教音楽『ニシ・ドミヌス』に触れる機会もあったと思われる。

【YouTube】ヴィヴァルディ『Nisi Dominus』第6曲

ちなみに、このような日本の歌曲とクラシック音楽の偶然の一致については、こちらの特集「元ネタ・原曲・似てる曲 そっくりメロディ研究室」で有名なケースを一通りまとめているので是非お立ち寄りいただきたい。 

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