舟歌 チャイコフスキー
ピアノ曲集『四季』より 6月

チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)

チャイコフスキー『舟歌』は、全12曲からなるピアノ曲集『四季』第6曲(6月)として作曲された作品。チャイコフスキーのピアノ曲のなかでも特に親しまれており、単独での演奏機会も多く、ピアノ学習者にも人気が高い。

写真:夏のバイカル湖(世界遺産)

ロシアの季節ごとの情景・風物をモチーフとしたピアノ曲集『四季』の一曲として、アレクセイ・プレシチェーエフの詩を踏まえて書かれたこのチャイコフスキー『舟歌』からは、ロシアの河や湖での船遊びのほのぼのとした情景、揺れる小舟から見上げた夏の星空への陶酔感、夕暮れのしんみりとした物悲しい雰囲気などが感じられる。

一般的に、音楽のジャンルとしての「舟歌(バルカロール/バルカローレ)」では、「6/8」や「9/8」といった複合拍子がとられるが、チャイコフスキー『舟歌』では「4/4(4分の4拍子)」となっている(中間部では4分の3拍子)。穏やかに揺れる伴奏音型が波のメタファー(暗喩)として全体を包み込む。

ちなみに、かつてロシアで船頭が舟漕ぎ歌として口ずさんでいた労働歌としての「舟歌」として、有名なロシア民謡『ヴォルガの舟歌』も適宜参照されたい。

アレクセイ・プレシチェーエフの詩

チャイコフスキーのピアノ曲集『四季』は、全12曲すべてについて、ロシアの詩人・作家による季節ごとのロシアの情景をテーマとした詩が添えられており、曲もこれらの詩の内容と季節感を音楽的に描写するという制作意図のもとに作曲されている。

先にも述べたとおり、第6曲(6月)『舟歌』は、アレクセイ・プレシチェーエフ(Aleksey Pleshcheyev/1825–1893)の創作した季節の詩にあてて書かれている。参考までに、プレシチェーエフの原詩と英語訳、日本語訳を合わせて次のとおりご紹介しておきたい。

Выйдем на берег,
там волны Ноги нам будут лобзать,
Звезды с таинственной грустью
Будут над нами сиять

Let us go to the shore;
there the waves will kiss our feet.
With mysterious sadness
the stars will shine down on us.

浜辺で波を我々の足で愛撫させておくれ
輝く星は我々に 悲しくひそかなあいさつをおくる
アレクセイ・プレシチェーエフ(Aleksey Pleshcheyev/1825–1893)

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チャイコフスキー:四季 【楽譜】
楽譜: 67ページ
出版社: 全音楽譜出版社; 菊倍版 (2008/12/1)

【試聴】チャイコフスキー『舟歌』