火の用心 夜回り 掛け声

拍子木の音が騒音問題に?現代における火の用心の意味とは?

「火の用心 マッチ一本 火事の元」の掛け声で知られる火の用心の夜回りについて、その意味・由来・歴史・ルーツと、代表的な掛け声について簡単にまとめてみた。

夜回り 拍子木 火の用心

また、拍子木の音が騒音問題・近所迷惑になりつつある現状についても簡単に取り上げておく。

「火の用心」の由来・歴史

「火の用心」という言葉が使われた古い記録としては、徳川家康の家来である本多作佐衛門が家族へ送った短い手紙が広く知られている。手紙の本文は次のとおり。

一筆啓上 火の用心 おせん泣かすな 馬肥やせ

この手紙は、1575年の長篠の戦いにおいて、戦場の本多作佐衛門が浜松城にいる家族へあてたもの。「一筆啓上(いっぴつけいじょう)」とは、「お手紙を差し上げます」の意味。

おせん(お仙)とは本多作佐衛門の娘・仙千代(当時3歳)のこと。「馬肥やせ」とは、馬の面倒をしっかり見ておけといった意味合い。

その後、江戸時代初期にお触れが出され、夜番・夜警による「火の用心」の夜回りが始まったとされる。

代表的な掛け声

「火の用心」の夜回りの掛け声をいくつかまとめてみたい。掛け声がなく、拍子木を打つだけの地域もあるだろう。

火の用心 マッチ一本 火事の元

現代ではあまり使われなくなった「マッチ」という単語が時代を感じさせる。今ではマッチより寝タバコによる火事の方が多いかもしれない。

戸締り用心 火の用心

「戸締り用心、火の用心」のフレーズは、日本船舶振興会によるテレビCMソング(1980年代)の影響が大きい(詳細は後述する)。

火の用心さっしゃりましょう

「ねんねこ しゃっしゃりませ」が歌いだしの『中国地方の子守唄』と同じく、「さっしゃりましょう」は「~なされませ」「~されるようお願いします」といった尊敬語。現代でも関西以西でよく使われる。

秋刀魚(さんま)は焼いても 家焼くな

この掛け声は聞いたことはないが、ネットで見かけたのでご紹介。現代ではクレームがきそう。

焼肉焼いても 家焼くな

日本食研・晩餐館(ばんさんかん)焼肉のたれテレビCMより。「火の用心」の掛け声として実際に使われることはもちろんないだろう。

戸締り用心 火の用心♪

「戸締り用心 火の用心♪」の歌い出しで有名な『火の用心の歌』は、作詞:武本宏一、作曲:山本直純による懐かしのCMソング。

1970年台後半から1980年台半ばまで、アニメ「一休さん」の一社提供スポンサーとして、日本船舶振興会(現:日本財団)および日本防火協会による「火の用心」テレビCMが流れた。

【YouTube】戸締り用心 火の用心 完全版(月曜~日曜)

月曜日から日曜日まで、曜日ごとに7番まで歌詞がある。『火の用心の歌』月曜日の歌詞は次のとおり。

戸締まり用心 火の用心
戸締まり用心 火の用心

月に一度は大掃除
げんげん元気な月曜日

アニメ「一休さん」は月曜日放送だったため、この月曜日の歌詞が最も有名と思われる(当初は水曜日放送だった)。

火曜日以降は、後半部分が次のような歌詞に差し替えられる。

火曜日

火には用心 火の用心
肝心かなめの火曜日だ

水曜日

水は命のお母さん
すいすいすいすい水曜日

木曜日

木や草花は友達だ
もっともっと増やそう木曜日

金曜日

お金は世のため人のため
チョキチョキ貯金の金曜日

土曜日

どろんこ風の子元気な子
どんどん出てこい土曜日だ

日曜日

一日一度は良いことを
にこにこにっこり日曜日

この「火の用心」CMでは、ハワイ・マウイ島出身の元大相撲力士・髙見山(たかみやま)がバスドラムを叩きながら出演。

行列の先頭で、江戸時代に町火消が用いた旗印「纏(まとい)」を振っているのは、作曲者の山本直純。

当時の日本船舶振興会会長・笹川良一も出演し、曜日毎のスローガンに続いて「一日一善!」の掛け声で締めくくられた。

ちなみに、アニメ「一休さん」の一社提供スポンサーはその後「ハウス食品」となり、残念ながら、この「火の用心」CMを耳にする機会は以前より減ってしまった。CM自体は1994年頃まで他番組で流れていたようだ。

拍子木の音がうるさい?騒音問題に発展

現代における「火の用心」の夜回りでは、地元の消防団が夜の9時頃にカチン!カチン!と鳴らす拍子木の音が、近所迷惑・騒音問題としてトラブルに発展することがある。

夜回りの時間は、乳幼児が眠りにつく時間帯でもあるため、せっかく寝かしつけた子供が拍子木の音で目を覚ましてしまうといった実害が生じているという。

拍子木 火の用心 夜回り

確かに、「火の用心」を呼びかけること自体の重要性を否定する人は少ないだろう。夜回りには夜警・防犯上の意味合いもある。

ただ、問題はその方法で、夜に拍子木を打ち鳴らすことが、火事への注意喚起として現実的にどれほど効果があるのか(意味があるのか)、消防団の存在アピールや示威行動ではないのかなど、ネットでは様々な疑問が呈されている。

小さい子供が寝ついた夜9時頃に、家のすぐ前でカチン!カチン!と拍子木を打ち鳴らすという注意喚起の手段・方法が、「火の用心」という大義名分を掲げてもなお、現代における社会生活や常識にそぐわないものになりつつあるようだ。

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