鈴懸の径 すずかけのみち 歌詞の意味

作曲者の母校・立教大学にあるスズカケノキの並木道を歌った流行歌

『鈴懸の径』(すずかけのみち)は、作詞:佐伯孝夫、作曲:灰田有紀彦(灰田晴彦)により1942年(昭和17年)9月に発表された楽曲。

1954年頃に鈴木章治がジャズ・カバーしてヒットした。クラリネット演奏で有名。

「鈴懸」(すずかけ)とは、街路樹に用いられる樹木「プラタナス(Platanus)」のこと。和名:スズカケノキ。日本の街路樹では「モミジバスズカケノキ」が多く見られる。

灰田勝彦の母校・立教大学のキャンパス内には、歌詞の題材にもなったスズカケノキの並木道がある。

立教大学キャンパス内の「鈴懸の径」

写真:立教大学キャンパス内の「鈴懸の径」(出典:立教大学Webサイト)

モミジバスズカケノキ

写真:モミジバスズカケノキと果実(出典:Wikipedia)

ちなみに、元々は『マロニエの径』として作詞されたが、暗い内容だったため、戦意を損なうとして軍部から認められなかったという。

そのため、大学の学生歌として歌詞が全面的に書き換えられた結果、今日知られる『鈴懸の径』が誕生した。「マロニエ」は、落葉樹セイヨウトチノキの別名。スズカケノキと同じく街路樹としてよく用いられる。

【YouTube】 鈴懸の径 倍賞千恵子

【YouTube】鈴懸の径 ジャズ クラリネット

歌詞の意味

作詞:佐伯孝夫による『鈴懸の径』歌詞を次のとおり引用し、その意味について簡単に補足してみたい。

友と語らん
鈴懸(すずかけ)の径(みち)
通いなれたる
学校(まなびや)の街
やさしの小鈴
葉かげに鳴れば
夢はかえるよ
鈴懸の径

語らん

「語らん」は、語ろう、語りましょう、といった意味。動詞「語る」に、意思を表す助動詞「む/ん」の終止形がついた形。

小鈴

小鈴とは、スズカケノキに成る球形の小さな果実のこと。この果実が「スズカケ」の語源になっているのだが、鈴に似ているからスズカケとなったわけではないようだ。詳細は後述する。

鳴れば

「鳴れば」については、「実が成る」の「なる」との掛詞(かけことば)の要素が感じられる。

夢はかえるよ

「夢はかえるよ」とは、あの頃の思い出がよみがえる、学生の頃に戻ったような気持ちになる、といったような意味合い

スズカケの語源・由来は?

余談だが、スズカケノキの「スズカケ」の語源・由来について、簡単にまとめておきたい。

「スズカケ」は、山中で修行をする修験道(しゅげんどう)の山伏(やまぶし)が着る麻の法衣「鈴懸/篠懸/鈴掛」が語源・由来となっている。下の写真は鈴懸と袴。

鈴懸と袴 修験道の法衣

写真:鈴懸と袴(出典:ヤフオク!)

ただ、この衣装だけでは「スズカケノキ」という名前と結びつかない。

山伏の法衣である「鈴懸」と「スズカケノキ」を結び付けるには、山伏の装束(しょうぞく)全体を確認する必要がある。それには、写真を見ていただくのが一番早い。

写真は、京都・祇園祭の無事を祈願する修験者ら(出典:京都・祇園祭 八幡山保存会 Webサイト)。

丸い「梵天(ぼんてん)」が二つずつ付いた「結袈裟(ゆいげさ)」を身に着けているのが分かる。

この丸い梵天が、スズカケノキに成る丸い果実と似ていることから、スズカケノキはその名前がついたと想像できるが、上述のように、「鈴懸」は法衣(上衣)の名称であり、結袈裟の梵天の名称ではない。

スズカケノキの語源・由来については、ウィキペディアで次のように解説されている。

「スズカケノキ」は植物学者の松村任三による命名で、「日本の植物学の父」といわる牧野富太郎によると、山伏の法衣の名で篠懸(すずかけ)というのがあるのを、誤ってそこにつけてある球状の飾りの呼び名としてつけてしまったものであるという。

この解説によれば、「スズカケノキ」の命名者は、結袈裟の梵天と上衣の「鈴懸」を混同した状態で、植物の名前に用いてしまったということになる。

ちなみに、山伏の法衣である「鈴懸(篠懸)」は、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典によれば、山伏が深い山に入った際に、イネ科の多年草「篠竹(すずたけ/すずだけ)」の露(つゆ)を防ぐためのものとされる。

佐伯孝夫が作詞した楽曲

銀座カンカン娘
カンカンの意味・語源・由来は?フレンチ・カンカン?かんかんのう?
いつでも夢を
星よりひそかに 雨よりやさしく あの娘はいつも歌ってる
ミネソタの卵売り
コッコッコッコッ コケッコー♪ なぜタマゴ売りなのか?
若い力(燃えよ若人 胸を張れ)
花も輝け 希望に満ちて 競え青春 強きもの
夜来香(イエライシャン)
李香蘭が歌いテレサ・テンがカバーした夜来香 夜に強く香る花

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