銀座カンカン娘 映画主題歌

カンカンの意味・語源・由来は?フレンチ・カンカン?かんかんのう?

「あの娘可愛いや カンカン娘」が歌い出しの『銀座カンカン娘』は、1949年4月に発売された高峰秀子のシングル。作詞:佐伯孝夫、作曲:服部良一。

同年8月に公開された同名の映画主題歌として作曲された楽曲で、映画の主演は高峰秀子の他、『東京ブギウギ』の笠置シヅ子、『鈴懸の径』の灰田勝彦ら当時の人気歌手が顔をそろえ、歌声にあふれた歌謡映画的作品となっている。終戦復興期の資料映像としての価値も高い。

写真:新東宝映画傑作選 銀座カンカン娘 [DVD]/左が笠置シヅ子、右が高峰秀子

さて、『銀座カンカン娘』についてネット検索をする場合、「カンカンって何?意味は?」といったような、「カンカン」についての語源・由来に関する検索が少なくないのではないだろうか?

この「カンカン」の意味・語源・由来については、ウィキペディア上で興味深い解説がなされていたのでご紹介したい。

合わせて、フレンチ・カンカンや俗謡『かんかんのう』など、「カンカン」と類似する他の用語との関連性についても簡単に考察してみたい。

映画のあらすじ・ストーリー

落語家の新笑一家のもとへ、恩人の娘「お秋」と、その親友の「お春」が居候(いそうろう)することに。

ある日、お秋とお春の二人は、映画のエキストラに偶然抜擢された。そこで得たお金と人脈をもとに、二人は銀座のバーで歌手の道を歩んでいく。

主要キャスト

お秋:高峰秀子
お春:笠置シヅ子
新笑:古今亭志ん生 (5代目)
新笑の甥・武助:灰田勝彦

【YouTube】 高峰秀子「銀座カンカン娘」

カンカンに怒ってる?さすがにそれは…

ウィキペディアによる『銀座カンカン娘』の解説によれば、「カンカン」の意味・語源・由来について、次のように説明されている。

「カンカン」とは山本嘉次郎の造語であり、当時の売春婦の別称「パンパンガール」に対して「カンカンに怒っている」という意味が込められている。

<引用:ウィキペディア - 銀座カンカン娘>

山本嘉次郎(やまもと かじろう/1902-1974)とは、映画「銀座カンカン娘」の脚本家で、映画監督や俳優としても活躍した人物。

カンカンは山本嘉次郎の造語であると断言されているが、本当だろうか?この解説の出典として、CD集「懐古・昭和歌謡」における曲目解説書(解説:森島みちお)が明示されていたが、山本氏本人のコメントがない限り、にわかには信じがたい解説だ。

「森島みちお」についてネットで調べてみたが、月刊演歌ジャーナルの編者でギター奏者との情報が得られたが、詳しいことは分からなかった。

何に対して怒ってる?

百歩譲って「カンカンに怒っている」説で話を進めるとして、何に対して怒っているのかよく見てみると、「パンパンガール」に対して「カンカンに怒っている」と説明されている。

「パンパン」とは、戦後日本の混乱期において、主に在日米兵を相手にした街頭の私娼(街娼)を意味している。

数年前まで敵国であり、当時は日本を占領していた米兵相手という点が、国賊として非難の対象となることがあったようだ。山本嘉次郎が怒っているとしたら、この点だろうか?

そこまでは分かるのだが…

映画脚本家の山本嘉次郎が「パンパン」に対して「カンカンに怒っている」。ここまでは特段おかしな点はない。それが事実だったかどうかは分からないが、終戦当時に山本氏がそういった感情を持っていても不思議はない。

だが、それが「パンパン」とは全く関係のない映画のタイトルや主題歌に当てはめられるのはさすがに論理の飛躍があるように思われる。共通点を見出すとすれば時代背景ぐらいなもので、映画主演の高峰秀子や笠置シヅ子の役も「パンパン」とは直接の関係性にはない。

ただ、「パンパン」という言葉時代は当時広く流布していたものであり、その語感・リズム感・語呂を転用して「カンカン」という造語を作り出した可能性はあるが、それは発音上の類似性に着目した造語であり、当時の世情に対する山本嘉次郎の感情とは無関係と考えるのが自然なように思われる。

「かんかん虫」との関係は?

実は、山本嘉次郎と「カンカン」のつながりは、『銀座カンカン娘』公開の18年前に既に存在していた。

1931年5月8日に公開された田坂具隆監督による映画「かんかん虫は唄ふ」において、山本嘉次郎は脚色を担当していたのだ。

吉川英治「かんかん虫は唄ふ」

写真:原作の小説 吉川英治「かんかん虫は唄ふ」(1932年)

「かんかん虫」とは、 艦船・タンク・ボイラー・煙突などのさび落としをする工員の俗称のこと。虫のようにへばりついてハンマーで叩く様子に由来している。有島武郎の小説タイトルとしても知られる。

この「かんかん虫」という語感が山本嘉次郎の記憶に印象付けられ、後の『銀座カンカン娘』という造語のネタ元となっていたとしたら非常に興味深い。

フレンチ・カンカン

「かんかん」の語源・由来として頭に浮かぶのが、フランスのダンス「フレンチ・カンカン(French cancan)」。

女性ダンサーが横一列に並んで踊るショーダンスで、ハイキックでスカートを捲り上げる大胆な振り付けが特徴。

フレンチ・カンカン ロートレック作

写真:フランスの画家ロートレックの作品(出典:Wikipedia)

ジャック・オッフェンバック作曲による『地獄のギャロップ(天国と地獄)』は、フレンチ・カンカンの定番曲として有名。

映画「銀座カンカン娘」では、高峰秀子と笠置シヅ子が演じる主人公の二人は、夜の銀座のバーで歌を披露するショービジネスで身を立てていくが、フレンチ・カンカンも同じく女性が舞台でダンスを披露する夜のショービジネスであり、こうした類似性が「カンカン娘」という造語を生み出したのかもしれない。

江戸の俗謡「かんかんのう」

映画「銀座カンカン娘」では、メインキャストに古今亭志ん生 (5代目)が演じる落語家の新笑が登場する。

落語と「カンカン」といえば、古典落語の演目「らくだ」に登場する江戸・明治の俗謡「かんかんのう」が思い出される。古今亭志ん生 (5代目)は「らくだ」を得意としていた。

「かんかんのう」は、清国から伝来した清楽(しんがく)『九連環』を元歌とする俗謡で、中国語の歌詞を日本語の発音で読んだナンセンスソングとなっている。

『九連環』の中国語の歌詞では、「かんかんのう」は「看看奴」となる。「看」は「見る」の意味、「奴」は清時代の中国語で若い娘が自分を指す一人称として使われていた言葉。

つまり「看看奴」とは、若い娘が自分の方をちょっと見てと呼びかける意味合いになる。これがすなわち「カンカン娘」、というのは冗談・こじつけだが、もしこれが本当に「カンカン娘」の語源だったら非常に面白い。

まとめ・結論

このほかにも、カンカン帽やカンカン照り、岸和田だんじり祭のカンカン場など、カンカンがつく言葉はいろいろあるが、キリがないのでこの辺でまとめとしたい。

「カンカン」の意味・語源・由来については、「カンカンに怒っている」などのような極端な例はさておき、上述の「かんかん虫」やフレンチ・カンカン、「かんかんのう」などのように、類似する様々な言葉が持つ語感や意味合い、シチュエーションなどが複合的に融合して絡み合って、映画を主演した二人の女性の役柄と合致することで、その時代にふさわしい響きとして新たに生まれた造語であると考えられる。

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