彦星 ひこぼし わし座のアルタイル

七夕の夜空に輝く牽牛星・彦星の関連エピソードまとめ

七夕伝説における彦星(ひこぼし)について、職業・仕事や意味・語源、ギリシャ神話におけるわし座のα星アルタイルなど、関連するエピソードを簡単にまとめてみた。

彦星 ひこぼし わし座のアルタイル

織姫星(おりひめぼし)についてはこちらのページ「おりひめ星(織姫・織女)こと座のベガ」でまとめている。

七夕の歌については、こちらの「たなばたさま 歌詞の意味 童謡・唱歌」を参照されたい。

夏の大三角と彦星

彦星(牽牛星)は、わし座のα星アルタイル(Altair)。全天で12番目に明るい恒星で、天の川の対岸には織姫星のベガ(こと座)が輝く。

夏の大三角

アルタイル(彦星)、ベガ(織姫星)と、はくちょう座のデネブの三つの星を結んだ三角形は、「夏の大三角」または「夏の大三角形」と呼ばれる。

写真:夏の大三角(出典:県立ぐんま天文台Webサイト)

わし座のアルタイル

わし座の部分を拡大すると下の図のとおり。アルタイルは鷲の背中に位置しており、両脇にも目立つ伴星を二つ持つ。

わし座 星座

わし座の隣には、ギリシア神話における美少年ガニュメーデース(ガニュメデス)をモチーフとするみずがめ座がある。

わし座の鷲は、ガニュメデスを天に連れ去るときにゼウスが遣わした鷲であるとも、またはゼウスが変身した姿であるとも説明される。わし座に隣接しているや座は、ゼウスの雷の矢を表している。

写真:わし座(出典:ヤフーきっず)

彦星(牽牛)の職業・仕事は?

七夕伝説における彦星(牽牛)の職業は、天界の牛の世話をする「牛飼い」の仕事。どんな牛かは定かではないが、中国由来の伝説であることを考えれば、おそらくは体が黄褐色の黄牛(下写真)に近いイメージの牛だろう。

中国の黄牛

2010年にカルピス株式会社が実施した七夕伝説に関するアンケート調査によれば、彦星(牽牛)の職業・仕事について、約3分の2(64.7%)の人が、正しく「牛飼い」と回答している。

では、残りの3分の1の人はどう回答したのだろうか?

カルピスのアンケート結果によれば、農民(9.8%)、神主(7.2%)、漁師(7.2%)、知らない(8.5%)など様々な回答が寄せられたようだ。

「農民」という回答については、畑を耕すのに牛を使う場合があるので、農業と牛というつながりで農民をイメージするのは分からないでもない。

「漁師」という回答は、天の川で魚が取れそうというイメージから来たものだろう。

犬飼星 いぬかいぼし

アルタイル(彦星)と両脇の合計3つの星は、一直線に並ぶ三ツ星(ミツボシ)として特に親しまれ、中国ではこれを「河鼓(かこ)三星」と呼ぶ。アルタイルが大将軍で、両脇が左将軍、右将軍だそうだ。

古代の日本では、この三ツ星の姿から、彦星(ひこぼし)を「犬飼星(いぬかいぼし)」と呼んでいた。漢字は「以奴加比保之」。ちなみに彦星の漢字は「比古保之」。

犬飼星 いぬかいぼし

牛飼いなのか犬飼いなのかはっきりしてほしいところだが、犬飼いと見立てたのは日本だけのようだ。

この和名は七夕説話伝来以前のもののようで、七夕が一般化した現代では、「犬飼星」の名称はあまり用いられる機会は多くないと思われる。

彦星の意味・語源は?

彦星(ひこぼし)の「彦(ひこ)」は男性の美称であり、彦星は「男性の星」を意味する。万葉集には「比故保思」と漢字が当てられている。

「ひ」+「こ」で「彦(ひこ)」であり、「ひ」の部分が美称で、「こ」が男(おとこ)を意味している。

「彦(ひこ)」の対義語は「姫(ひめ)」であり、これも「ひ」の部分が美称で、「め」が女・乙女(おとめ)を意味している。

古代日本ではヒメ・ヒコは一対で扱われており、ヤマト王権が成立する前後の統治形態は「ヒメヒコ制」と呼ばれている。

また、奈良県生駒郡斑鳩町の龍田神社(たつたじんじゃ)では、かつて龍田比古神・龍田比女神の2柱が祭神として祀られていた。

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