ちょち ちょち あわわ 歌詞の意味

かいぐり かいぐり とっとのめ♪ 江戸時代から歌われていた?

『ちょち ちょち あわわ』は、ママと赤ちゃんが一緒に体を動かしながら歌う手遊び歌。『かいぐり』とも題される。

その歴史は古く、少なくとも歌詞の前半部分は江戸時代から歌われていたようだ(詳細は後述)。わらべうた『おちょず』とも関連がある。

笑顔の赤ちゃん

わらべうた『あがりめ さがりめ』や『なべなべ そこぬけ』と同じようなメロディで歌われる。

【YouTube】 ちょち ちょち あわわ

【YouTube】 「かいぐり」(ちょちちょちあわわ)

歌詞と意味・語源

歌詞の一例は次のとおり。最後の部分は若干バリエーションが見られる。

ちょちちょち あわわ
かいぐり かいぐり
とっとのめ
おつむてんてん
ひじぽんぽん
(ひじとんとん/はらぽんぽん)

「ちょち」とは、手を叩く意味の「手打ち」が幼児語的に変化したもの。江戸時代には「手打手打(ちょうち ちょうち)あわわ」と題されていた。

「あわわ」は、笑い声を意味する現代の「あはは」の類(たぐい)か、赤ちゃんの「あばば」という喃語(なんご)。おそらくは後者か。

「かいぐり」とは、糸や綱を両手で交互に手繰り寄せる意味の「かいぐる(掻い繰る)」のこと。実際の遊びでは、『いとまきのうた』のように両手を胸元でクルクル回すことが多い。

「とっと」とは、魚・鶏・鳥などをいう幼児語。特に魚は「とと/おとと」ともいう。現代では「♪にゃんこの目」と替え歌で歌われることもあるようだ。

おつむてんてん」は、両手で軽く頭を叩くしぐさで赤ちゃんをあやす際に使われる幼児語。ただし、江戸時代は「つむりてんてん」であり、現代になって「つむり→おつむり→おつむ」と変化した。

「ひじぽんぽん」は後に追加された?

『ちょち ちょち あわわ』の歌詞については、「少なくとも歌詞の前半部分は江戸時代から歌われていたようだ」と説明したが、その前半部分とは、具体的には次の歌詞を指している。

ちょちちょち あわわ
かいぐり かいぐり
とっとのめ

この部分の歌詞は、わらべうた『あがりめ さがりめ』とも終わり方が似ており、江戸時代の手遊び歌としては、ここで終わっていた方が自然なように感じられる。

あがりめ さがりめ
ぐるっとまわって
猫の目(ニャンコの目)

<引用:わらべうた『あがりめ さがりめ』>

「おつむてんてん」は現代的な言葉であり、江戸時代には「つむりてんてん」と呼ばれていた。「あたまてんてん」という表現もあったようだ。

現代における『ちょち ちょち あわわ』の最後の一行「ひじぽんぽん」の部分は、筆者の知る限りでは古い文献で確認できていないので、おそらく明治以降に追加された後世の創作であると思われる。

手打ち→ちょうち

「ちょち」の語源・由来が「手打ち」であることは上述したが、その音の変化について若干補足してみたい。

「手打ち(てうち)」の「てう」は、母音では「えう」となるが、この母音の「えう」は「おう/おー」という音に変化しやすい。

例えば、「てふてふ」→「ちょうちょう(蝶々)」、「~しませう」→「~しましょう」の変化がこれにあたる。今日を意味する「けふ」→「きょう」の変化も同様。

清少納言『枕草子』(まくらのそうし)の「そうし」も、かつては「さうし」と表記されていたが、この「さうし」→「そうし」の変化も「手打ち→ちょうち」と同類である。

江戸時代の文献について

最後に、『ちょち ちょち あわわ』が江戸時代から歌われていたことを示す文献について、簡単に解説してみたい。

日本国語大辞典精選版の解説によれば、1710年(宝永7年)に出版された江戸中期の歌謡集『松の落葉』第3巻において、『ちょち ちょち あわわ』に関する次のような歌謡が掲載されている。

ちゃうち ちゃうち あわわ
かぶり かぶり しほの目

ここでの「ちゃうち」は「ちょうち」と同じ。つまり「手打ち」を意味している。

「かぶり かぶり」とは、学研全訳古語辞典によれば、「幼児などが頭を左右に振っていやいやをすること」と解説されている。古語の「かぶり」には「冠(かんむり/かうぶり)」の意味もある。

「しほの目」とは、日本国語大辞典精選版によれば、江戸時代の子供のあやし方の一つで、「しおの目しおの目」と幼児に呼びかけて、あいきょうのある目つきをさせる決まり文句だそうだ。

なお、「しおの目」には「赤ん坊が初めて目を開けたときの目」といった意味合いもある。

現代の『ちょち ちょち あわわ』とは歌詞が異なっているが、赤ちゃんをあやそうとする歌の方向性は同じであり、その原型がすでに江戸時代には広く歌われていたということが伺われる。

明治時代の文献について

樋口 一葉(ひぐち いちよう/1872-1896)が1895年(明治28年)に発表した短編小説『にごりえ』には、『ちょち ちょち あわわ』に関連する次のような記述が見られる。

さりとも胎内十月の同じ事して、母の乳房にすがりし頃は手打/\あわゝの可愛げに、紙幣さつと菓子との二つ取りにはおこしをお呉れと手を出したる物なれば…

<引用:樋口 一葉『にごりえ』より>

この「手打/\あわゝ」が「手打手打あわわ」、つまり「ちょうち ちょうち あわわ」を表しており、明治時代にも赤ちゃんの手遊び歌・あやし歌として歌い継がれていることが分かる。

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