越中おわら節

富山県民謡(富山市八尾地域)

『越中おわら節』(えっちゅう おわらぶし)は、富山県富山市八尾(やつお)地域で歌われる民謡。江戸時代から伝わり、大正から昭和にかけて洗練された。

伴奏に胡弓(こきゅう)が用いられる全国でも珍しい部類の民謡。毎年9月に八尾で行われる盆踊り「おわら風の盆」では、この『越中おわら節』にのせて男女の踊り手たちが町内を練り歩き、毎年多くの観光客が訪れる。

写真:おわら風の盆(出典:N町より愛をこめて)

「おわら」の意味・由来は?

『越中おわら節』の「おわら」の意味・由来については諸説あり、「お笑い」から転じたとする説、豊作を願う「大藁(おおわら)」とする説、八尾近郊の小原村(桐谷地区)の娘による歌から広まったとする説などあるが、確たる通説はないようだ。

なお、よく似た曲名の民謡として、『鹿児島おはら節』、秋田小原節、『津軽小原節(おはら節)』などがある。

【YouTube】越中八尾 おわら風の盆 2014

歌詞の内容は?

『越中おわら節』の歌詞は、7、7、7、5の26文字から構成される伝統的な甚句(じんく)スタイルを基本とする。数千にも及ぶ様々な創作歌詞が存在するが、まずは押さえておきたい代表的な甚句として、八尾の春夏秋冬を読んだ4首「八尾四季」をご紹介したい。

「八尾四季」は1928年に画家・小杉放庵が依頼を受けて作詞したもので、後に舞踏家若柳吉三郎が新たな振り付けを行い、「新踊り」として現代まで踊り継がれている。

八尾四季(作詞:小杉放庵)

揺らぐ吊り橋
手に手を取りて
渡る井田川
オワラ 春の風

富山あたりか
あのともしびは
飛んでいきたや
オワラ 灯とり虫

八尾坂道
別れてくれば
露か時雨(しぐれ)か
オワラ ハラハラと

もしや来るかと
窓押し開けて
見れば立山
オワラ 雪ばかり

合いの手(囃子言葉)について

『越中おわら節』を歌う際には、決まった合いの手・囃子言葉(はやしことば)が用いられる。

まず歌い出しには、「唄われよ(歌われよ)、わしゃ囃す(はやす)」と伴奏者らによって囃子言葉が入る。歌い手の歌い出しのタイミングを整える役割も果たしているのだろう。

次に、歌詞(甚句)の上の句と下の句の間に「キタサノサ ドッコイサノサ(サッサ)」の囃子言葉が入る。「八尾四季」の歌詞で言えば、「揺らぐ吊り橋 手に手を取りて」の後に「キタサノサ ドッコイサノサ」と入る。

合唱曲として

『越中おわら節』は、富山県富山市生まれの作曲家・岩河三郎の編曲により、合唱曲『越中おわら』としても親しまれている。

合唱組曲「富山に伝わる三つの民謡」の一曲で、『越中おわら』のほか、『こきりこ』(こきりこ節)、『むぎや』(麦屋節)の合計3つの富山県民謡を題材とした合唱曲から成る。

【YouTube】「富山に伝わる三つの民謡」より『越中おわら』

合唱曲『越中おわら』の歌詞にある「八尾の風の盆」とは、富山県富山市の八尾(やつお)地域で毎年9月に開催される盆踊り「おわら風の盆」を指している。

合唱曲の歌詞にある「越中で立山 加賀では白山 駿河の富士山 三国一だよ」は、富山県民謡『越中おわら節』でもよく歌われる歌詞の一つで、これ以外にも同民謡には数千にも及ぶ様々な歌詞がつけられている。

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