大学祝典序曲 ブラームス

大学から授与された名誉博士号への返礼として作曲された演奏会用序曲

『大学祝典序曲 Academic Festival Overture』は、ドイツの作曲家ブラームスが48歳を迎えた1881年に初演された演奏会用序曲。大学から授与された名誉博士号に返礼するため作曲された。

写真:ポーランドのヴロツワフ大学(旧:ブレスラウ大学)

『ドイツ・レクイエム』や『交響曲第1番』で成功を収め、ヨーロッパで名声を高めたブラームスは1876年、彼が43歳の時にイギリスの名門ケンブリッジ大学から名誉博士号授与の申し出を受けた。しかし船旅嫌いで英語も話せなかったブラームスは、この申し出を断ってしまう。

1879年には、今度はポーランドのヴロツワフ大学(旧:ブレスラウ大学)から名誉博士号を授与されたブラームス。

当初は感謝状のみで謝意を表していたが、彼を推薦した指揮者のベルンハルト・ショルツから説得され、返礼の意味を込めて『大学祝典序曲』を作曲し同大学に献呈した。

【YouTube】ブラームス 『大学祝典序曲』

4つのドイツ学生歌を引用

『大学祝典序曲』には以下の4曲の学生歌が引用され、それらが自作の主題と有機的に構成されてメドレー的な序曲となっている。

ブラームスの作品としては大掛かりな楽器編成で、バスドラムやトライアングル、シンバルなどの打楽器類も多用され、トルコ軍楽(メフテル)の雰囲気も若干感じ取られる。

Wir hatten gebauet ein stattliches Haus
『僕らは立派な学び舎を建てた』

Landesvater『祖国の父』

Was kommt dort von der Höhe?
『そこの丘から何が来た』

Gaudeamus igitur
『ガウデアムス(いざ楽しまん)』

序曲の最後の部分・コーダ(終結部)で現れる4分の3拍子の学生歌『Gaudeamus igitur ガウデアムス』は、ヨーロッパ諸国で古くから歌われている伝統的な歌曲。

スッペ作曲のオペレッタ「愉快な仲間(Die flotten Burschen』序曲で引用されているほか、国際大学スポーツ連盟(FISU)主催の総合競技大会ユニバーシアード(Universiade)の開会式や閉会式、表彰式などで同曲が用いられる。

大学受験ラジオ講座テーマ曲

ファゴットが奏でる親しみやすいフレーズの学生歌『Was kommt dort von der Höhe?』は、日本ではかつて大学受験ラジオ講座のテーマ曲として使われていた。

テレビ番組のBGMとしても使われることがある。ドイツでは「新入生の歌」として歌われ、スッペも変奏曲の題材として取り上げている。

旺文社の単独提供

「大学受験ラジオ講座」は、文化放送開局と同時(1952年3月31日)にスタートした大学受験教育ラジオ番組。

スポンサーは旺文社の単独提供で、番組テキストや受験雑誌「蛍雪時代」などの紙媒体に加え、英会話ラジオ番組「百万人の英語」なども放送が開始され、旺文社による教育ビジネスは当時独占的なシェアを享受していた。

しかし、Z会の通信添削やベネッセ(福武書店)「進研ゼミ高校講座」、学研、河合塾、代ゼミなど、競合他社の台頭により受験業界の競争が激化。

旺文社の経営状況悪化や時代のニーズの変化により、40年以上続いた文化放送「大学受験ラジオ講座」は1995年にその歴史の幕を閉じた。

無料楽譜・スコアは?

ブラームス『大学祝典序曲』の無料楽譜・スコアについては、ペトルッチ楽譜ライブラリー(IMSLP)のこちらのページでダウンロード・印刷が可能。フルスコアやパート譜など多数アップロードされているので適宜参照されたい。

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