峠の我が家 歌詞の意味・和訳

19世紀アメリカ歌曲/空は澄み渡り 鹿やアンテロープがたわむれる

『峠の我が家』(Home on the Range/ホーム・オン・ザ・レンジ)は、19世紀に発表されたアメリカのカウボーイソング。

「Range(レンジ)」とは、主にアメリカで見られる牧場(放牧場)のこと。

1947年にはカンサス州の州歌に指定されたほか、フランクリン・ルーズベルト大統領の愛唱歌としても有名。

日本では、NHK「みんなのうた」で1966年8月に『峠の我が家』のタイトルで初回放送された。

歌詞は、ブリュースター・ヒグリー(Dr. Brewster Higley)が1870年頃に発表した詩集「My Western Home」に基づいている。

メロディは、ヒグリーの友人ダニエル・E・ケリー(Daniel Kelley)による原曲を、テキサス州の作曲家デビッド・ギオン(David Guion/1892-1981)がアレンジした。

【YouTube】峠の我が家 Home on the Range

歌詞の意味・日本語訳(意訳)

Oh, give me a home,
where the buffalo roam
Where the deer and
the antelope play

Where seldom is heard
a discouraging word
And the skies are not
cloudy all day.

我が家の周りでは
バッファローがうろつき
鹿やアンテロープがたわむれる
落胆の言葉は聞かれず
空は一日中雲一つなく晴れ渡る

Chorus
Home, home on the range
Where the deer and
the antelope play

Where seldom is heard
a discouraging word
And the skies are not
cloudy all day.

<コーラス>
平原の我が家よ
鹿やアンテロープがたわむれる
落胆の言葉は聞かれず
空は一日中雲一つなく晴れ渡る

How often at night,
when the heavens are bright
With the light
from the glittering stars

I've stood there amazed,
and asked, as I gazed,
If their glory exceeds
that of ours.

夜空は星明りに明るく輝く
驚嘆のあまり立ちつくし
じっと夜空を見つめる
星々の輝きは
人類の栄光にも勝るのか

The air is so pure,
and the zephyrs so free
And the breezes
so balmy and light

I would not exchange
my home on the range
For all the cities so bright.

澄んだ空気 そよ吹く風
爽やかに 軽やかに吹き抜ける
どんな輝かしい街にも変え難い
峠の我が家よ

アンテロープとは?

歌詞に登場する「アンテロープ(antelope)」とは、ウシ科の大部分の種を含むグループの名称。レイヨウ。

かつてアメリカ合衆国では狩猟目的で、ウシ科ブラックバック属(アンテロープ属)のブラックバック (Antilope cervicapra)が輸入され、テキサス州やカンザス州で繁殖し定着した。

ブラックバック アンテロープ

写真:ブラックバック(出典:Wikipedia)

ブラックバックは主にインドやネパールに生息する。インディアン・アンテロープ(Indian antelope)とも呼ばれる。オスにのみ、栓抜き状に捻れた長い角がある。

岩谷時子による訳詞

『Home on the Range(峠の我が家)』には、様々な日本語の歌詞(訳詞)がつけられている。代表的な訳詞をいくつかご紹介してみたい。

一つは、歌手・越路吹雪のマネージャーを務め作詞家としても成功した岩谷時子による訳詞を次のとおり引用してみよう。

あの山を いつか越えて
帰ろうよ わが家へ
この胸に 今日も浮かぶ
ふるさとの 家路よ

ああ わが家よ
日の光かがやく
草の道 歌いながら
ふるさとへ帰ろう

あの山を 誰と越えて
帰ろうか わが家へ
流れゆく 雲のかなた
ふるさとは 遠いよ

ああ わが家よ
日の光かがやく
丘の道 歌いながら
ふるさとへ帰ろう

この訳詞では、日本人でも親しみやすいように、アメリカの自然な風景を歌った歌詞が抽象化されて、山の向こうの我が家・ふるさとへ帰ろうという一般的な望郷の念を歌った「ふるさとソング」となっている。

山を越えていく描写はあるが、「峠(とうげ)」という表現は使われていない。

中山知子による訳詞

次に、NHK「みんなのうた」で放送された中山知子による『Home on the Range』の訳詞を次のとおり引用する。

1.
ふきわたる みどりの風
さわやかな 峠には
ふりそそぐ 日のひかりと
はてしない 青空

おお わが家よ
牧場こそ わが家
山なみの かなたの村
ふるさとの 牧場よ

2.
草をはむ 子じかのむれ
林では 鳥の歌
咲く花の かげうかべる
清らかな 小川よ

おお わが家よ
牧場こそ わが家
夢さそう 木蔭の道
ふるさとの 牧場よ

3.
さすらいは われらのもの
牛たちを 追いながら
草の波 はるか遠く
こえてゆく たのしさ

おお わが家よ
牧場こそ わが家
風かおり 日はかがやく
ふるさとの 牧場よ

この訳詞では、「子じか」や「牛たち」など原曲の歌詞を意識した描写が見られ、その舞台は「牧場」であることが明確にされている。曲名は『牧場の我が家』でもいいかもしれない。

久野 静夫による訳詞

続いて、久野 静夫による『Home on the Range』の訳詞を次のとおり引用する。

1.
空青く 山は緑
谷間には花咲き
幼い日 ひとり遊ぶ
懐かしのあの家

ああ我が家 峠の我が家
楽しい日 悲しい時
思い出のあの家

2.
紅の 空を高く
鳥は鳴き飛びゆく
山の端に 月はかかり
夜の香は漂う

ああ我が家 峠の我が家
楽しい日 悲しい時
思い出のあの家

この訳詞では、日本語のタイトルになっている『峠の我が家』というフレーズがサビのコーラスに用いられている。

故郷の思い出として、「楽しい日」だけでなく「悲しい時」にもふれているのが趣深い。2番の歌詞で夕方から夜の描写が入るのもなかなか良い。

龍田 和夫による訳詞

続いて、龍田 和夫による『Home on the Range』の訳詞を次のとおり引用して、原曲との違いを見てみたい。龍田氏は、主に合唱曲やオペラ作品を手がけている(本名:清水 脩)。

1.
空は青く 緑の野辺(のべ)
なつかしの わが窓
悲しみも 憂(うれ)いもなき
ほほえみの わが家

おお ふるさと
耳になれし ことば
むれ遊ぶ ひつじのむれ
晴れわたる この空

2.
花のかおり 流れにそい
はなしろき みず鳥(どり)
夢のごと 静かにまた
さわやけく ましろに

おお ふるさと
耳になれし ことば
むれ遊ぶ ひつじのむれ
晴れわたる この空

3.
空はすみて さやかに吹く
そよ風の かぐわし
なつかしき 峠の家
またとなき ふるさと

おお ふるさと
耳になれし ことば
むれ遊ぶ ひつじのむれ
晴れわたる この空

この龍田 和夫版では、故郷の場所が「峠の家」であることが三番の歌詞で明示されている。

バッファローやアンテロープといったアメリカ的な動物名は使われず、代わりに「ひつじのむれ」という表現が用いられている。

津川主一による訳詞

最後に、フォスター歌曲の訳詞で知られる津川主一(つがわ しゅいち)による『Home on the Range』の訳詞を次のとおり引用して、その内容を確認してみたい。

訳詞のタイトルは『牧場のわが家』。

1.
水牛は群れさすらい カモシカはたわむれ
野に山に光満ちて 空も晴れ渡れり

なつかしや 牧場のわが家
野に山に光満ちて 空も晴れ渡れり

2.
流れゆく小川の水 銀の砂を運び
白鳥は夢のごとく 川の面に浮かぶ

なつかしや 牧場のわが家
野に山に光満ちて 空も晴れ渡れり

「水牛」や「カモシカ」が登場し、空が晴れ渡る様子など、原曲の歌詞をしっかりと反映した訳詞となっている。

「峠の我が家」ではなく「牧場のわが家」である点も原曲に忠実だ。

二番の歌詞は原曲から離れる内容だが、表現が詩的で美しい、

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