禁じられた遊び(愛のロマンス)歌詞と曲のルーツ

NHK「みんなのうた」や音楽教科書でカバーされた日本語の歌詞とは?

クラシックギターの名曲『愛のロマンス』は、1952年のフランス映画「禁じられた遊び(Les Jeux Interdits)」テーマ曲として、スペインのギター奏者ナルシソ・イエペス(Narciso Yepes)による演奏で世界的に有名になった。

ナルシソ・イエペス ギター名曲集

ジャケット写真:ナルシソ・イエペス ギター名曲集

日本では、薩摩忠により日本語の歌詞がつけられ、『禁じられた遊び』の曲名で、NHK「みんなのうた」で1964年2月初回放送された。

小中学校の音楽教科書では、『ふたりの子ども』の曲名で、『愛のロマンス』のメロディに野上彰が作詞した日本語の歌が掲載された。

このページでは、NHK「みんなのうた」で放送された日本語の歌『禁じられた遊び』と、音楽教科書に掲載された『ふたりの子ども』の日本語歌詞について、簡単に内容を確認してみたい。

さらに、『愛のロマンス』のメロディの由来・ルーツについても簡単にまとめてみた。

【YouTube】愛のロマンス(禁じられた遊び)

NHK「みんなのうた」歌詞

1964年2月にNHK「みんなのうた」で放送された『禁じられた遊び』では、いったいどのような日本語歌詞がつけられたのだろうか?

作詞:薩摩忠による『禁じられた遊び』歌詞を次のとおり引用して、その内容を簡単に確認してみたい。

川のそばに きょうも立てば
青い空が ほほえんでいる
青い空は すぎた日々を
みんな 知ってる

川のそばを とおる風は
水の声を 運んでくる
水の声は かえらぬ日を
耳に ささやく

あれは過ぎた 幼い日よ
ふたりだけで 遊んだ日よ
水車だけが まわりながら
それを 見ていた

水は 雲のように流れ
時は かげのようにうつり
思い出だけが いまも深く
胸に とどまる

「川」と「水」というキーワードが繰り返し用いられているが、これはフランス映画「禁じられた遊び」の内容がある程度反映されたもの。

映画の内容を意識した歌詞ではあるが、映画を見ていない人にも意味を持つように、抽象的な表現でまとめられている。

ちなみに、作詞者の薩摩忠(さつま ただし/1931-2000)は、童謡『まっかな秋』の作詞でも有名。

音楽教科書『ふたりの子ども』歌詞

小中学校の音楽教科書に掲載された『ふたりの子ども』は、どのような日本語の歌詞になっているのだろうか?

作詞:野上彰による『ふたりの子ども』の歌詞を次のとおり引用し、その歌詞の内容を簡単に確認してみよう。

白い山羊を連れた子ども
赤いショール巻いた子ども
ふたりきりで森の花を
摘みに行きます

忘れな草集めようと
川のそばに下りてゆくと
水の中に雲が白く
浮いていました

月がもやの中に昇る
子供たちは肩を並べ
楽しそうな影が二つ
消えていきます

こちらの日本語歌詞も、映画「禁じられた遊び」を意識した内容となっているように感じられる。

「影が二つ 消えていきます」という最後の歌詞が、複数の解釈が可能なあいまいな表現なので、ちょっと怖く感じる人もいるかもしれない。

高校教科書に載った歌詞

昭和47年月発行の音楽教科書「高校生の音楽2」(音楽之友社)の中に、飯塚広の作詞による『愛のロマンス』という歌が掲載されていたという。

その歌詞を次のとおり引用し、内容を簡単に確認してみたい。

空はあおく だまっている
雲は遠く 流れていく
行方しれぬ 波のままに
さすらう 少女(おとめ)

水車小屋の 暗いかげで
二人だけの 十字架立て
よろこびに ふるえている
おさなき こころ

やさしかった 名をば呼びて
追えどむなし 霧の面影
引きさかれし 愛の歌を
たれか 歌わん

この歌詞でも映画「禁じられた遊び」の内容が反映されているが、2番と3番の歌詞が映画のネタバレ的な要素を若干含んでいる。

『愛のロマンス』ルーツを巡る諸説

『愛のロマンス』のルーツについては、ネットを検索すると「スペイン民謡」との解説がなされているのをよく見かける。

一方で、あまりよく知られていない、とある人物が19世紀にアルゼンチンで発表したギター練習曲が原曲とする解説も少なくないようだ。

はっきりと確定した答えはまだ出ていないようだが、筆者の私見ではおそらく後者の説、すなわち近代に作曲されたギター練習曲がルーツである可能性が高いように思われる。この練習曲もある民謡からの影響が見られるが、それはスペイン民謡かどうかは正直疑問。

まずは順番に年代・時間をさかのぼって、『禁じられた遊び』のルーツまで順を追って解説を試みたい。

1941年 映画「血と砂」サントラ

フランス映画「禁じられた遊び」からさかのぼること10年、1941年のアメリカで、恋愛映画「血と砂 Blood and Sand」が公開された。

スペイン一の闘牛士がマダムの誘惑に溺れていくというオペラ「カルメン」をこじらせたようなこの作品で、マドリード出身のギター奏者であるビセンテ・ゴメス(Vicente Gómez/1911-2001)の演奏により、『愛のロマンス Romance』がサントラとして使用された。

このビセンテ・ゴメスは『愛のロマンス』の作者として当時はクレジットされていたようだが、今日では作曲者ではないことが明らかになっているようだ。

1931年 フォルテア編曲版

ナルシソ・イエペスやビセンテ・ゴメスが演奏した『愛のロマンス Romance』に最も近いアレンジとして楽譜が確認されているのが、スペインの音楽家ダニエル・フォルテア(Daniel Fortea/1882-1953)による1931年の編曲版。

アルペジオの形が今日よく知られているものと同じであり、フォルテア版以前はアルペジオの部分が異なっている。フォルテアは楽譜に「作者不詳のロマンス」と記したため、曲のルーツへの情報が断絶されてしまっているのが残念。

1880年代 アントニオ・ルビーラ(Antonio Rubira)版

作曲者として今日最も有力なのが、スペイン・ムルシア県ロルカ町出身のギター奏者アントニオ・ルビーラ(ルビラ/Antonio Rubira/1825-1890)。

1881年から1884年の間、アルゼンチンのブエノスアイレスに渡ってクラシックギターを教えており、現地で出版したギター練習曲「Estudio para Guitarra」が、今日の『愛のロマンス Romance』、すなわち『禁じられた遊び』の原曲とされているようだ。

南米では恐らく、映画『禁じられた遊び』サントラとしてではなく、ルビーラのギター練習曲としての知名度の方が高い可能性が考えられるが、実際のところはどうなのだろうか?

ルビーラの練習曲のルーツは?

今日ではアントニオ・ルビーラによるギター練習曲がルーツとされているが、もちろんこのルビーラのギター練習曲にもルーツがある可能性がある(キリがないが)。

もしこのルビーラの曲のルーツが、世界各国のいずれかの国や地域の民謡だったとしたら、そしてそれがもしスペイン民謡だったとしたら、ギター曲『禁じられた遊び(愛のロマンス)』のルーツは「スペイン民謡」とすることには一理あることになる。

では、実際にルビーラによるギター練習曲に似た世界の民謡は存在するのだろうか?実は、そのルーツとして名乗りを上げるべきウクライナ民謡が存在する。

ルーツはウクライナ民謡?

そのウクライナ民謡とは、『Nich Yaka Misyachna』と題される曲で、意味は「Beautiful Moonlight」すなわち「美しい月光」。ヨーロッパやロシアで比較的よく知られている曲だ。YouTubeでもいくつか動画がアップされていた(2013年9月現在)ので、まずは動画を視聴してみていただきたい。

【YouTube】ウクライナ民謡 『Nich Yaka Misyachna』

ウクライナ民謡『Nich Yaka Misyachna』を聴いてみると、今日におけるギター曲『禁じられた遊び(愛のロマンス)』そのもののメロディではないことはすぐに分かるが、ルーツとして名前を上げるには十分な類似性を備えた曲であるように思われる。ロシア民謡的な雰囲気がいい感じの曲だ。

もしこのウクライナ民謡とルビーラの曲が何らかの関係にあるとしたら、ギター曲『禁じられた遊び(愛のロマンス)』はウクライナ民謡?なんて突飛な解説も登場しそうな勢いだが、まあそれはそれで面白そうだ。

ちなみに、タイトル「美しい月光」というと、ベートーヴェン ピアノソナタ第14番「月光」、いわゆる月光ソナタが思い出されるが、このベートーヴェンの月光ソナタでもアルペジオが駆使されており、このウクライナ民謡との関連性がありそうだが、実際のところはどうなのだろうか。

最後に

ルビーラのギター練習曲のルーツが判明しないため、ギター曲『禁じられた遊び(愛のロマンス)』のルーツについてもはっきりしたことは分からなかった。

ルビーラが世界の民謡・既存のメロディから全く切り離されたオリジナリティの高いギター曲を一から新たに創作したのであれば、それ以上ルーツを探る必要もないことになるが、おそらく何らかの既存のメロディからインスピレーションを受けていることは想像に難くない。

それがどんなメロディなのか、スペイン民謡なのか、ウクライナ民謡なのか、当時の流行歌なのか、今となってはあまりに資料が少なく確認する方法がない。

いずれにせよ、ルーツなんて分からなくても、ギター曲『禁じられた遊び(愛のロマンス)』を楽しむのにはまったく支障がない。やはり音楽は素直に感じるままに楽しむのが一番だ。

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