故郷の空 歌詞の意味 明治唱歌

夕空晴れて 秋風吹き 月影落ちて 鈴虫鳴く

『故郷の空』(こきょうのそら)は、1888年(明治21年)刊行の唱歌集「明治唱歌 第一集」に掲載された日本の唱歌。昭和初期・戦時中によく歌われた。

当時の明治政府は、欧米列強の西洋文化を取り入れるべく、学校の音楽教材としてヨーロッパ民謡のメロディを取り入れた翻訳唱歌を次々と発表しており、この『故郷の空』もスコットランド民謡『ライ麦畑で出会ったら(ライ麦畑を通って)』のメロディが編曲されて用いられている。

秋の空と風景

スコットランド民謡のメロディが用いられているが、歌詞の内容は原曲と全く関係がない(歌詞は翻訳されていない)。

『故郷の空』の歌詞では、故郷を離れて暮らす人物が、の情景の中で故郷の父母・兄弟を想い出すという望郷の思い・郷愁が描写されている。

『故郷の空』の作詞者は、『鉄道唱歌』、『青葉の笛』などの作詞で知られる大和田建樹(おおわだ たけき/1857-1910)。

ちなみに、『故郷の空』と同じくスコットランド民謡を原曲とする日本の唱歌としては、『オールド・ラング・ザイン』を原曲とする『蛍の光』が特に有名。

【YouTube】 故郷の空 明治唱歌

歌詞

夕空はれて あきかぜふき
つきかげ落ちて 鈴虫なく
おもえば遠し 故郷のそら
ああ わが父母 いかにおわす

すみゆく水に 秋萩たれ
玉なす露は すすきにみつ
おもえば似たり 故郷の野辺
ああ わが兄弟(はらから) たれと遊ぶ

<注:漢字・ひらがな表記は原文に合わせた>

歌詞の意味

「つきかげ(月影)」とは、月の光のこと。「つきかげ落ちて」は、辺り一面が月の光に照らされている様子を表している。

「いかにおわす」の「おわす」は、「ある」「居る」の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。「いかにおわす」とは、故郷の父母は今どのようにお過ごしでいらっしゃるだろうか、という望郷の思いが込められている。

「萩(ハギ)」は秋の七草のひとつ。古くから日本人に親しまれ、『万葉集』で最もよく詠まれる花でもある。

「玉なす露(つゆ)」とは、萩(ハギ)の葉の上にたまった夜露・朝露の丸い雫(しずく)のこと。

「はらから」とは、兄弟姉妹を表す古語。「はら」は、同じ母親のお腹を意味し、「から」は、氏族共同体の族員を指す「うから」「やから」の「から」で、血縁関係を意味する。

「たれと」の「たれ」は、現代における「誰」と同じ。童謡『あの子はたあれ』の「たあれ」も同様。

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