安里屋ユンタ 歌詞の意味

君は野中のイバラの花か サーユイユイ♪

「君は野中のイバラの花か」が歌い出しの『安里屋ユンタ』(あさどやユンタ)は、八重山諸島・竹富島(たけとみじま)に伝わる沖縄民謡を元にした昭和の沖縄ソング。

原曲・元歌とは全く関係がない独自の歌詞が標準語(ヤマトグチ)で作詞され、1934年にレコード化された。元歌・原曲と区別するために『新安里屋ユンタ』とも呼ばれる。

安里屋(あさどや/あさとや)とは、中村屋や紀伊国屋のような屋号を意味している。

ユンタとは、八重山諸島で歌われる仕事唄・労働歌のこと。語源は「結い歌(ゆいうた)」または「読み歌」に由来するとされ、労働の際に男女掛け合いで歌われる。

八重山諸島・竹富島の伝統的な家並み

写真は竹富島の伝統的な家並み。赤瓦の屋根、石垣、珊瑚のカケラを敷き詰めた白色の道が特徴的。

このページでは、『新安里屋ユンタ』と元歌の『安里屋ユンタ』の両方について、歌詞の意味を簡単に解説してみたい。

まずは、有名な『新安里屋ユンタ』の方から取り上げる。

【YouTube】Rimi Natsukawa - Asadoya Yunta

新安里屋ユンタ

最初に、『新安里屋ユンタ』の歌詞を次のとおり順番に引用しながら、その意味を簡単に解説してみたい(カッコ内が歌詞の引用部分)。

作詞者は、戦前の沖縄県で活躍した教育者・政治家の星 克(ほし かつ/1905-1977)。

サー 君は野中の いばらの花か
サーユイユイ
暮れて帰れば ヤレホンニ 引き止める
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

「サーユイユイ」とは、歌の調子を整えるための意味のない囃子言葉。『東京音頭』でいう「踊り踊るなら チョイト東京音頭 ヨイヨイ♪」の「ヨイヨイ」が思い出される。「ヤレホンニ」も同様。

「チンダラ カヌシャマヨ」とは、八重山方言の古語で「本当に愛しい人(女性)」の意味。「チンダラ」は「ツンダラ」「ツィンダラ」などとも表記される。

「マタハーリヌ」については、「また会いましょう」の意味とする説もあるようだが、定説はない。

「暮れて帰れば 引き止める」とは、日が暮れる頃に帰ろうとする自分(男性)を引き止めてくれる、といった意味。

サー 嬉し恥ずかし 浮名(うきな)を立てて
サーユイユイ
主(ぬし)は白百合(しらゆり) ヤレホンニ ままならぬ
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

「浮名(うきな)」とは、恋愛や情事のうわさのこと。

「ままならぬ」とは、思い通りにならない、といった意味。

サー 田草(たぐさ)取るなら 十六夜(いざよい)月夜
サーユイユイ
二人で気兼ねも ヤレホンニ 水いらず
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

田草とは、田んぼに生える雑草のこと。田に生える雑草を取り除くことを「田草取り」という。晩夏の季語。

田植え後七日から十日後に取る草を「一番草」、以後、稲の花が咲く頃まで、約十日ごとに二回から四回程、草取りを行う。

十六夜(いざよい/じゅうろくや)は、陰暦16日の夜、またはその夜の月を意味する。

昔(陰暦)の磨は月の満ち欠けが基準となっており、年中行事は15日(満月の十五夜となる日)に行われることが多かったので、その翌日は行事が済んだ直後で人出が少なくなることから、二人だけで過ごすのに都合が良いということ。

サー 染めてあげましょ 紺地(こんじ)の小袖(こそで)
サーユイユイ
掛けておくれよ 情(なさけ)の襷(たすき)
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

紺地(こんじ)とは、紺色の織り地。または染め地のこと。沖縄民謡では、男女の恋愛に関するウタで、愛情の深さの度合いを表現するのに紺色の染め地が歌詞で使われることがある。

また、紺地の着物は琉球時代、結婚した夫人の正装であり、「紺地に染める」とは結婚を暗示している。

男性のプロポーズ(求婚)に応じた女性は、八重山のミンサー織りの手ぬぐいを男性に贈ったという。つまり、襷(たすき)を「掛けておくれよ」とは、プロポーズに応えて欲しいという男性の願いが表現されていることになる。

ちなみに、「掛けておくれよ」については、「情けを掛ける」と「襷(たすき)を掛ける」の掛詞(かけことば)となっている。

原曲・元歌の歌詞は?

『新安里屋ユンタ』の原曲・元歌である『安里屋ユンタ』の歌詞では、琉球王国時代の竹富島に実在した絶世の美女・安里屋クヤマ(1722-1799)と、クヤマに一目惚れした役人とのやりとりが面白おかしく描写されている。

下の写真は、竹富島にある安里屋クヤマ生誕の地。庶民が役人に逆らい求婚を撥ね付けたクヤマの気丈さは、八重山の反骨精神の象徴として語り継がれている。

なお、元歌『安里屋ユンタ』に弦楽器の三線(さんしん)で節をつけた楽曲は『安里屋節』(あさどやぶし)とも呼ばれる。

それでは、元歌『安里屋ユンタ』の歌詞を次のとおり引用し、その意味・現代語訳を例示してみたい。

サー 安里屋(あさどや)ぬ くやまによ
サーユイユイ
あん美(ちゅ)らさ うん生(ま)りばしよ
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

サー 目差主(みざししゅ)ぬ 請(く)ゆだらよ
サーユイユイ
あたろ親(や)ぬ 望(ぬず)むたよ
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

サー 目差主や 我(ば)なんばよ
サーユイユイ
あたろ親(や)や 此(く)りゃおいすよ
マタハーリヌ
チンダラ カヌシャマヨ

現代語訳(意訳)

安里屋のクヤマは 美人に生まれた

目差主(役人)に見染められ

村長にも気に入られた

役人は嫌だ 村長に奉公したい

4番以降の歌詞について

元歌『安里屋ユンタ』は労働歌・作業唄であり、長い作業の間歌い続けられるように、歌詞は23番まで存在する。

4番以降の歌詞のあらすじは次のとおり。この歌の主人公は、安里屋のクヤマではなく目差主(役人)であることが分かる。

歌詞のあらすじ

安里屋のクヤマに振られた目差主(役人)は、新たな美女を探し求めて他の村々を巡り、イシケマという美女に出会った。

彼女の両親を説得すると、目差主は大喜びでイシケマを役場へ連れ帰り、奥座敷で祝杯をあげた。

イシケマは礼儀作法に優れた上品な女性で、目差主はようやく幸せをつかむことができた。

【YouTube】元歌『安里屋ユンタ』

関連ページ

沖縄民謡・沖縄ソング
「ハイサイおじさん」、「涙そうそう」、「谷茶前節」など、沖縄に関連する民謡・歌謡曲まとめ
都道府県別の民謡・ご当地ソング
「会津磐梯山」、「草津節」、「ソーラン節」、「ちゃっきり節」など、日本全国各地の地元に根付いた地方の民謡、地名の入った歌まとめ
十六夜 いざよい 意味・由来
田草取るなら 十六夜(いざよい)月夜 二人で気兼ねも水いらず
東京音頭
ハァー 踊り踊るなら チョイト東京音頭 ヨイヨイ♪