げんげんばらばら 郡上おどり 歌詞の意味

げんげんばらばら何事じゃ 助けておくれよ長兵衛さん

『げんげんばらばら』は、岐阜県郡上市八幡町(郡上八幡)で毎年夏に開催される「郡上おどり」における踊り・郡上節の一つ。

歌詞は古い手毬唄(てまりうた)・わらべうたがルーツ。キジ(雉子)がケンケンと鳴き、羽根をバタバタとさせる様子が「ケンケンバタバタなぜ鳴くね」と歌われていた。「ケンケンバタバタ」が訛って「げんげんばらばら」となったようだ。

写真:郡上踊り「げんげんばらばら」(郡上おどり保存会/出典:YouTube)

【YouTube】郡上おどり『げんげんばらばら』

【YouTube】郡上のわらべうた(げんげんばらばら)

歌詞の一例

げんげんばらばら何事じゃ 親もないが子もないが
一人貰うた男の児 鷹に取られて今日七日
七日と思えば四十九日 四十九日の墓参り
叔母所(おばんところ)へ ちょっと寄りて
羽織と袴を貸しとくれ あるものないとて貸せなんだ
おっぱら立ちや腹立ちや 腹立ち川へ水汲みに
上ではとんびがつつくやら 下ではからすがつつくやら
助けておくれよ長兵衛さん 助けてあげるが何くれる
千でも万でもあげまする ハイヤマカサッサイ ヤットコセ

鷹に子供をさらわれる民話

『げんげんばらばら』の歌詞には、「一人貰うた男の児 鷹に取られて今日七日」というくだりがあるが、これは鷹や鷲に子供をさらわれる筋書きのの古い民話・昔ばなしを踏まえたものと考えられる。

この手の民話は日本各地に存在するので、興味のある方は、「鷹にさらわれた児」、「鷲にさらわれた子供」などのワードで検索してみると良いだろう。

子守歌に登場する鷹

上述の民話と関連して、「早く寝ないと鷹にさらわれちゃうよ」と怖がらせる子守歌が日本各地に存在する。一例をあげると次のとおり。

『げんげんばらばら』の語源と関連するキジ(雉)が歌詞に登場しているのが非常に興味深い。

福島県白河市の子守歌(一部)

ほらよいほらよい ほらよいやァ
泣くな泣かすな 雉の子
泣くとお鷹に さらわれる

兵庫県美方郡の子守歌(一部)

泣くないや泣くないや ケンケン山のきじの子が
泣いて鷹になァ 泣いて鷹にとられるど
アーねんねんせえや ころりんせえや

柳田国男が収集した長野県の童謡

柳田国男が編集した「炉辺叢書(ろへんそうしょ)」の一冊「小県郡民謡集」には、『げんげんばらばら』に近い表現が用いられた次のような子守歌(童謡)が掲載されている。

寝いれ うっつけ 雉の子よ
泣くとお鷹にとられるぞ
お鷹にとられた其の時に
けんけんばたばた せぬがよい
<NPO長野県図書館等協働機構/信州地域史料アーカイブより引用>

この子守歌では、『げんげんばらばら』ではなく「けんけんばたばた」となっており、キジが鳴いて羽根をバタバタとさせる様子として描写されている。

「小県郡民謡集」の「小県(ちいさがた)」とは、NHK大河ドラマ「真田丸」でも度々登場した上田城(長野県上田市)周辺の地域を指している。

長野県は郡上八幡のある岐阜県の隣であり、地理的にも近い地域であることから、「けんけんばたばた」を含んだ童謡が岐阜県の郡上八幡にも広まっていた可能性は高いだろう。

鳥取県の手まり歌

鳥取県立博物館のWebサイトによれば、『げんげんばらばら』の歌詞によく似た次のような手まり歌が紹介されていた。

向こうの向こうのススキ原
親がないかや 子がないか
親もござるに 子もござる
その子に離れて十五日 十五日参りをしょと思って
姉さん父さん ちょっと寄って
姉さん姉さん かたびら一枚貸してえな
あるのにないとて貸せなんだ
大腹だちや 大腹だちや
西の紺屋に一反と 東の紺屋へ一反と
染めてくだされ紺屋さん
染めてあげます何色で 紺と石蝋に染め分けに
染め分けに ちょいと百ついた

鳥取県か兵庫県の手まり歌のようだが、『げんげんばらばら』の歌詞との共通点が数多くみられる。同じページにさらによく似た歌が掲載されていた。

向こうお山の白ツツジ
親がないかや 子がないか
親もござんす 子もござる
殿御に離れて今日七日
七日と思えば十五日(じゅうごんち)
十五日参りをしょと思て
おばのところに かたびら一枚借りにったら
あるのにないとて 貸さなんだ
やれやれ腹たつ 腹がたつ
西の紺屋に一反と 東の紺屋に一反と
染めてください紺屋さん
染めてあげます 何色に
ウコンに紫 浅黄色 浅黄色

『げんげんばらばら』では「四十九日の墓参り」のところが「十五日参り」となっているところが興味深い。

高知県の子守歌

最後に、『げんげんばらばら』に似た曲として、高知県の子守歌『つくつく法師』をご紹介したい。後半の歌詞は『花嫁人形』や『雨降りお月さん』の影響が見られる。

つくつく法師 高知県の子守歌

つくつく法師は なぜ泣くの
親がないか 子がないか
親もごんす 子もごんす
もひとり欲しや 娘の子
たかじょにとられて きょう七日
七日と思えば 十五日
十五の玉を 手にすえて
おじさんところへ 来てみれば
よう来たよう来た お茶まいれ
お茶でものまして 養うて
長者の嫁御に やるときにゃ
金襴緞子の 帯しめて
お馬ゆられて 行きました
お馬ゆられて 行きました

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