グリーンスリーブス Greensleeves

イングランド民謡/もう一度ここに来て 私を愛してください

『グリーンスリーブス Greensleeves』は、エリザベス朝時代(16世紀後半頃)によく歌われてた古いイングランド民謡。シェイクスピアの劇中でも言及されている。

「スリーブ sleeves」とは衣服の袖(そで)のこと。つまり曲名は「緑の袖」の意味になるが、ここではある女性の名前として用いられているようだ。

イギリス映画『つぐない』より女優キーラ・ナイトレイ

写真:イギリス映画『つぐない』より女優キーラ・ナイトレイのグリーン・ドレス

中世・ルネッサンス期において、「緑」には「不倫」の意味があり、16世紀のイングランド王ヘンリー8世による女性遍歴を揶揄(やゆ)した曲であるとの解釈もなされている(参考:王妃の闘い―ヘンリー八世と六人の妻たち)。

ちなみに、ヘンリー8世との関係が指摘されるイングランド民謡としては、王様と王妃が登場する『6ペンスの唄を歌おう(Sing a Song of Sixpence)』が知られている。

【YouTube】Greensleeves - Celtic Ladies

【YouTube】Greensleeves - feat. Tim Foust

歌詞の意味・和訳(意訳)

Alas, my love, you do me wrong
To cast me off discourteously
For I have loved you well and long
Delighting in your company.

ああ愛する人よ、残酷な人
あなたはつれなく私を捨てた
私は心からあなたを慕い
そばにいるだけで幸せでした

Greensleeves was all my joy
Greensleeves was my delight
Greensleeves was my heart of gold
And who but my lady greensleeves.

グリーンスリーブスは私の喜び
グリーンスリーブスは私の楽しみ
グリーンスリーブスは私の魂そのもの
私のグリーンスリーブス、貴方以外に誰がいようか

Your vows you've broken, like my heart
Oh, why did you so enrapture me?
Now I remain in a world apart
But my heart remains in captivity.

貴方は誓いを破った、私の心のように
ああ、なぜ貴方は私をこれほど狂喜させるのか?
離れた場所に居る今でさえも
私の心は彼女の虜だ

I have been ready at your hand
To grant whatever you would crave
I have both wagered life and land
Your love and good-will for to have.

貴方が望むものすべてを差し出そう
貴方の愛が得られるなら
この命も土地のすべても差し出そう

If you intend thus to disdain
It does the more enrapture me
And even so, I still remain
A lover in captivity.

貴方が私を軽蔑しても
私の心は変わらず貴方の虜のまま

My men were clothed all in green
And they did ever wait on thee
All this was gallant to be seen
And yet thou wouldst not love me.

私の家来はすべて緑に身を包み
彼らはこれまで貴方に仕えてきた
それらはすべて紳士的で親切だったが
それでも貴方は私を愛してはくれない

Thou couldst desire no earthly thing
but still thou hadst it readily.
Thy music still to play and sing
And yet thou wouldst not love me.

貴方は世俗的な物を望むことはできない
しかし貴方は今もなおそれを進んで得ようとしている
貴方の美しい調べは今もただよい続ける
でも貴方は私を愛してはくれない

Well, I will pray to God on high
that thou my constancy mayst see
And that yet once before I die
Thou wilt vouchsafe to love me.

私は天高い神に祈ろう
彼女が私の忠誠に気付き
死ぬ前に一度でいいから
彼女が私を愛してくれることを

Ah, Greensleeves, now farewell, adieu
To God I pray to prosper thee
For I am still thy lover true
Come once again and love me.

ああ、グリーンスリーブスよ、さようなら
貴方の繁栄を神に祈ります
私は貴方の真の恋人
もう一度ここに来て、私を愛してください

オーケストラ『グリーンスリーブス幻想曲』

イギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズは、イングランド民謡『グリーンスリーヴス』に基づく小管弦楽のための小品『グリーンスリーブス幻想曲』を作曲。

当初はヴォーン・ウィリアムズによる1928年のオペラ『恋するサー・ジョン(Sir John in Love)』の第3幕の間奏曲として用いられた。

【YouTube】グリーンスリーブス幻想曲

その後、この間奏曲をラルフ・グリーヴズ(Ralph Greaves)が編曲し、独立させた作品が『グリーンスリーヴスによる幻想曲』である。1934年9月にロンドンで初演され、ヴォーン・ウィリアムズ自身の指揮で行われた。

クリスマスソングにも

クリスマスキャロル『What Child Is This(御使いうたいて)』は、イングランド民謡『グリーンスリーブス』のメロディで歌われている。

【YouTube】Andrea Bocelli - What Child Is This

歌詞は、1865年頃にイギリスの詩人ウィリアム・チャタトンディックス(William Chatterton Dix/1837-1898)が発表した詩集『The Manger Throne』に基づく。

映画「西部開拓史」挿入歌

1962年のアメリカ映画「西部開拓史 How the West Was Won」では、挿入歌『牧場の我が家』(Home in the Meadow)主旋律に『グリーンスリーブス』が引用されている。

同映画は、西部劇映画のオールスターが数多くキャスティングされた西部劇映画の集大成的作品であり、第36回アカデミー賞において作曲賞など8部門にノミネート、脚本賞など3部門を受賞した名作。

ビートルズ『愛こそはすべて』

ビートルズが1967年にリリースした『愛こそはすべて』(All You Need Is Love/オール・ユー・ニード・イズ・ラブ)では、エンディングで『グリーンスリーブス』が演奏される。

同曲ではこの他、イントロでフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』が引用されているほか、エンディングではJ.S.バッハ『2声のインヴェンション8番』BWV779、グレン・ミラー楽団『イン・ザ・ムード』、ビートルズ『イエスタデイ』など多数の楽曲が盛り込まれている。

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